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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その16)

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(6)神域(考察)

 考助が、というよりも妖精たちが作り出した世界に足を踏み入れたシュレインは、感心したように頷いていた。
「・・・・・・少なくとも来て見て触った感じは、本物の自然そのものじゃの」
「まあ、妖精たちの力を借りているんだから、あり得なくはない・・・・・・かな?」
 考助がまたやらかしたと聞いて様子を見に来たコレットが、シュレインの言葉にエルフらしい視点で答えた。
 エルフたちの中で一般的に知られている常識では、妖精が自然そのものを司っていることになっている。
 そこから考えれば、考助が従えている妖精たちがこの自然を作り出したといわれても不思議ではない。
 ・・・・・・ないのだが、やはり常識から考えて自然そのものを作り出すというのは、あり得ないことなのだ。
「コウスケ様の言う通り、確かに狭い範囲でしかないですが、それにしてもありえません」
 やせた土地に癒しを与えることも巫女の仕事のひとつとしてある。
 その仕事を請け負ったことのあるシルヴィアが、こめかみに右手の人差し指を当てた。
 もともとある自然の力を整えるだけでもかなりの力を必要とするのに、全く何もない空間にこれだけの自然を作り出すのにどれほどの力を必要とするのか、考えるだけでめまいがしたのである。
「大丈夫か?」
 そんなシルヴィアを気遣ったのは、たまたま隣に立っていたフローリアだ。
 感心したように頷いているフローリアが、他の三人に比べて比較的冷静でいられるのは、こうした魔法的なことに疎いということがある。
 勿論、一般の者に比べれば、遥かに知識を持っているのだが、実践という意味では三人と比べてはるかに劣る。
 そして、フローリアが冷静でいられるもう一つの理由が、彼女の後ろでぽつりとつぶやきをこぼした。
「・・・・・・なんか、みんなの反応がひどい気がするんだけれど?」
「気のせいではないな。ああ、いまコウスケが口を挟むと余計にややこしくなるから、少し黙っていようか」
「・・・・・・・・・・・・ハイ」
 シュレインたちを気遣ったフローリアの言葉に、考助はそう答えることしかできなかった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦ 

 考助が自らの神域に自然を作り出したという話は、すぐにシュレインから他の女性陣に広まった。
 その話を聞いて、すぐに見学ツアー(?)がという名の強制見学会が企画されていまに至るというわけだ。
 話を聞いた段階では「コウスケ(さん)のやることだから」と笑っていた女性陣だったが、目の前に広がる自然そのものを目の当たりにして、さすがに笑っていられなくなったというわけだ。
 とはいえ、そこは長年考助に寄り添ってきた女性陣。
 神域を見回って十分に時間が経ったころには、いつものように笑って済ませるようになっていたのである。

 考助のいるところに全員が集まったところで、コレットが首を傾げながら聞いていた。
「ところで、ここを創った妖精たちは大丈夫だった?」
「うん? 大丈夫って?」
「いくら妖精だからといっても、これだけの自然を創りだしたら無事にはすまないと思うのだけれど?」
 コレットの言葉に、考助は若干驚いた表情してから、妖精たちの様子を思い出すように上を見た。
「うーん・・・・・・。見た感じでは、特にいつもと違うといったことはなかったと思うけれど?」
「そう・・・・・・」
 そう相槌を打ってさらに何かを言おうとしたコレットだったが、考助があることを思い出してポンと手を打った。
「あっ、そう言えば、終わったあとに神力を欲しがっていたね。結構な量を持っていかれたと思うよ?」
「神力を・・・・・・? そう」
 考助の答えに、コレットは納得して頷いた。
 これだけの物を創りだして何事もなく終わるわけはないと考えていたのだが、案の定というべきか、神力を要求されたということでコレットの予想は当たっていた。

 そもそも考助の神域は、本当に何も存在していないただの空間だ。
 その場所に自然を創りだすには、当然のように莫大な力が必要になる。
 創りだした時点ではそれぞれの妖精自身が持っている力を使ったとしても、そのあとで妖精としての存在を維持するために力の補充が必要になる。
 もともと考助が呼び出している妖精たちは、考助の神力をもとに作りだされた存在である。
 それを考えれば、なくなった力を補充するために、考助の神力を要求するのはごく当たり前の流れなのだ。
 もっとも、考助が神力をそれぞれの妖精に分け与えなくても、自然回復することはできただろう。
 ただし、その場合は非常に長い年月が必要になる。
 妖精たちにとって手っ取り早く回復できる方法が、考助からの直接神力を受け取ることなのだ。

 コレットからその解説を聞いた考助は、感心して頷いていた。
「なるほどね。道理で結構持っていかれたと思った」
 考助が妖精たちに力を持っていかれたときは、単に四人(匹?)いるからかなと思っていたのだが、そう言った理由があるのであれば納得できる。
 あの作業が、妖精たちにとってもかなりの力が必要だったということがよくわかった。
「・・・・・・普通は、かなりの力が必要というレベルではないはずなのですけれど・・・・・・」
 考助の感想に、シルヴィアがポソリと呟いたが、幸か不幸かそれは誰の耳にも届かなかった。
 図らずも考助自身の持つ神力の力が、どれほどのものかある程度知ることになったシルヴィアだったが、この場でそれを言わないだけの分別(?)はあった。

 コレットとの話を聞きながら辺りを見回していたフローリアが、気になっていたことを聞いた。
「ところで、この空間、というか世界? は、これ以上広げることはできないのか?」
 考助は、その問いかけに少しだけ考えこむように首を傾げた。
 そして、力の広がり具合などを感じ取りながらひとつの結論を出した。
「いや、多分出来ると思うよ。ただ、広げたとしても空間が広がるだけで、自然物が同じように広がるわけじゃないけれど」
 考助の作った空間に自然を配置したのはあくまでも妖精たちなので、いくら空間を広げたとしても自然環境まで一緒に広がるわけではない。
 もし考助に自然そのものを作る能力があるのであれば、いま言ったような状態にはならずに全体が広がるのだが、そうはならない。
「そうか。何とも面倒だな」
「確かにね。まあ、でもここを広げることもあまりないから、いいんじゃないかな?」
 考助としても自然を創れるようになるような力を持つ気はない。
 必要になったとしても、妖精たちがいるからいいやといった考えしか持っていなかった。

 考助の考えを聞いて、様々な表情を見せる女性陣だったが、今度はピーチが質問をしてきた。
「ところで、この場所は何に使う予定なんですか~?」
「ああ、それはね。せっかく創ったのに、つぶすのも勿体ないから、きちんと有効利用するよ」
 シュレインたちが時間をかけて調べている間に、考助は考助でどうすべきかを考えていたのだ。
「ほう? 何となく予想はできるが、一応聞いてもいいかの?」
 興味を持ったように聞いてきたシュレインに、考助は頷きながら答える。
「広さ的にもちょうどよさそうだから、ここでクロたちを飼おうと思っているよ」
「まあ、そうじゃろうな」
 予想通りの考助の答えに、シュレインも同意するように頷いた。
 いまの管理層の部屋だと、十分に暴れるスペースはあるがそれだけだ。
 どうせ同じような広さであれば、この神域で過ごしてもらったほうがいいのである。
 流石にこの考助の意見には反対する者は一人もおらず、クロたちは今後この神域で生活することになったのであった。
考助の力と妖精たちの力の関係でした。
ついでにクロたちはこちらに引っ越しとなりますw
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