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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その16)

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(2)百合之神社(変) →

 ユリに相談があるため百合之神社を訪ねた考助とシルヴィアは、そこでセシルとアリサに会った。
「ああ、ふたりともいたのか。ちょうどよかった。話したいことがあったんだ」
 会うなりそんなことを言ってきた考助に、ふたりは一度顔を見合わせて首を傾げた。
 そもそも冒険者としての仕事をしていれば、この神社にふたりがいることはない。
 最初から用事があるのであれば、クラウンを通すなりしてふたりを探すか、神社に常駐しているエリに言伝をしているはずだ。
 にもかかわらず、最初から用事があると言われて不思議に思ったのだ。
 ただし考助は、ふたりの疑問が分かってすぐに話し出した。
「いや、本当はちゃんとユリと話したあとで話そうと思っていたんだけれど、ふたりがいるんだったらちょうどいいから今一緒に話してしまおうと思ってね」
 その説明を聞いたふたりは、納得して頷いた。
 話の内容まではわからないが、考助に用事があるというのであれば拒否するという選択肢はふたりにはないのである。

 
 ユリは、考助の呼びかけにはどこでも出てくることができるようになっているが、神社の中央にある部屋にでるのが基本となっている。
 別に何か制約やきまりがあるわけではないが、そうしておかないと突然現れて驚かせることもあるため、今までの慣習でなんとなくそう決まっていた。
 中央の部屋に行けば、いつユリが出てきても驚かなくて済むように心構えができるので、管理をしているエリにとっては必要な決まりごとでもあった。
 その結果、考助がユリと話をするときは、大体その部屋で行うことになっている。
 今回もその慣例(?)に従って、考助はその部屋にユリを呼び出した。
 部屋には、考助と一緒に来たシルヴィアのほかに、途中で会ったセシルとアリサ、それから呼んできてもらったエリが揃っていた。
「それで、考助様。お話とは何でしょうか?」
 まず初めに、呼び出されたユリが考助に問いかけた。
 それに頷いた考助は、以前から考えていたことを話し出した。
「うん。第八層に神社を増やそうと思っているんだけれど、どうだろう?」
「神社を、ですか・・・・・・?」
 考助の言葉に首をかしげたのはエリだった。
 現在、神社の管理をしているのはエリになる。
 神社が増えれば、直接の負担が増えるのは当然エリということになる。

 エリの言葉に頷いた考助は、さらに話を続けた。
「前々からユリにも言われていたんだけれどね。今あるこの建物だけだとユリの力も収まり切れなくなってきたみたいなんだよ」
 考助がそういうと、エリの視線がユリへと向いた。
 エリの視線を受けてひとつ頷いたユリは、考助の言葉を引き継いで話し出した。
「考助様のおっしゃることは本当のことです。いっそのこと私の力を使って、この神社自体を大きくすることも考えて考助様に相談しておりました。・・・・・・数を増やすことは今聞きましたが」
「うん。まずは、そのことをユリに相談したかったんだ。この神社を大きくするだけじゃなくて、数を増やすことで対応できる?」
 考助のその疑問に、ユリはすぐに頷いた。
「勿論可能です。・・・・・・ある程度場所の指定をさせていただければ、この建物を大きくするよりも大きな力を得られる可能性があります」
「なるほど。それはいいことを聞いた。それじゃあ、そういう方向で進めようか」
 ユリの言葉に頷いた考助は、ここでセシルとアリサに視線を向けた。
「それで、これからがふたりに相談というか、お願いなんだよね」
「何でしょうか?」
 そう聞いてきたアリサに、考助は視線を向けて話し出す。
「うん。建物自体を増やすことになるからね。せっかくだから増えた分の建物はふたりにも管理してもらおうかと思っているんだ。
 考助はそう言いながらシルヴィアへと視線を向けた。
 そして、ここから先の説明は、シルヴィアが行うことになった。

 考助から第八層の神社の建て替え(?)について相談されたシルヴィアは、せっかくの機会なので神社の数を増やすことを提案した。
 それは、いまある百合之神社を、考助を祀った内宮とし、更にその外側に三つの神社を外宮として置くというものだった。
 外側に置かれた三つの神社にそれぞれ三大神を祀ることにより、その区域を神域として見立てるのである。
 こうした考え方は、この世界ではよくされていることで、そもそもセントラル大陸にあるミクセンは、その考え方に基づいて三神殿が置かれている。
 現人神が現れる前のセントラル大陸では、三大神信仰が主流だったため他の神を主神として祀られることはなかったが、他の大陸にはそうした地域もある。
 古くからその地域で崇められていた神を中央の神殿で祀り、あとから来た三大神の神殿で囲むというやり方だ。
 シルヴィアは、その方法を第八層に適用しようと考助に提案したのである。
 何やら大げさなことになりそうだと思った考助だったが、それについて反対することはしなかった。
 それよりもユリが何というか分からないので、それ次第ということで、こうしてシルヴィアと一緒に訪ねてきたというわけである。

 シルヴィアから話を聞いたセシルとアリサは、同時に頷いた。
「それで、新しく増やした神社の管理を私たちに任せたいというわけですか」
「うん。ふたりはクラウンの仕事で忙しいだろうけれど、いまは狐たちが管理できるからね。責任者的な立場で時々来てくれれば何とかなるかなと思って」
 さすがに増えた神社全てをエリに押し付けるわけにも行かないので、最近はそれなりに姿を見せているふたりに任せようかと考えたのである。
 勿論、それだとふたりの休みが無くなってしまうので、ガゼランあたりに交渉してふたりに対する指名依頼も減らしてもらうつもりである。
「・・・・・・ただ、いくら減らしてもらうと言っても、ふたりが色々と忙しくなってしまうと思うから、相談しようと思っていたんだよ」
 ちなみに、新しく建てる神社のうち残りのひとつは、サラサかリリカ、あるいはその両方に任せようと考えている。
 今まで考助の加護を与えた人物に管理してもらうのが良いだろうと、シルヴィアと話していたのである。

 考助の話を聞いたセシルとアリサは、顔を見合わせた。
 セシルが「どうする?」といった顔をして、アリサがそれに答えるように頷きを返した。
 それを確認したセシルが、考助に話し出した。
「それでしたら、私たちからもコウスケ様にお話があります」
「え? ふたりが?」
 突然なんだろうと首を傾げた考助に、今度はアリサが話した。
「以前からセシルと話し合って、クラウンの仕事を減らそうと考えていたのです。勿論、コウスケ様が困るのであれば、続けるつもりはありましたが・・・・・・」
「え? そうなんだ。別にふたりがクラウンの仕事を辞めても、特に僕は困らないから、それは好きにしてもいいと思うよ」
 セシルとアリサがクラウンの仕事を請け負うようになったのは、精霊術に磨きをかけるために冒険者になったことが発端である。
 ふたりがもう必要ないと考えているのであれば、考助としても別に無理に続けてもらうつもりはない。

 考助の考えを聞いたセシルとアリサは、同時に頷いた。
「そうですか。それでしたら、その旨をガゼランさんに話そうと思います」
「以前から打診はしていましたが、今回の件と合わせて言えば、断ることはしないでしょう」
 ふたりが受けている指名依頼は、いまのクラウンにとっては他に依頼することができるようなものばかりである。
 それよりもセシルとアリサにとっては、考助から言われた仕事をこなすことの方が大事なのだ。
 その考えを見抜いた考助だったが、それについては何も言わず苦笑するだけにとどめてただ頷くのであった。
一話で終わりませんでした。
次に続きます。
次話は「百合之神宮」です。
今回の話でピンと来た方はいると思いますが、伊勢神宮を参考にしています。
といっても、内宮と外宮だけで、他は一切関係ありませんがw
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