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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その16)

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(1)狼との触れ合い

前半説明回。
 第七層の狼の様子を見に来た考助は、珍しくそこでナナと会った。
 最近のナナは、上位層の拠点を見回ることに重点を置いており、第七層で見ることがほとんどなくなっていた。
 ただし、珍しいといっても全く来ていないわけではなく、考助の見回りとかぶることが少なくなっているというだけのことだ。
「あれ? ナナ、珍しいね」
 考助がそう呼びかけると、他の狼に囲まれていたナナは、嬉しそうに尻尾を振って考助のところに近付いてきた。
 鼻先を寄せてきて親愛の情を示すナナに、考助も首筋を撫でて応える。
「ナナがこっちに来ているということは、何かあった?」
 一応そう確認した考助だったが、ナナはブンブンと首を左右に振った。
「そっか」
 それをみて特に何か大きなことがあったわけではなく、単に見回りに来ていただけと知った考助は、小さく笑みを浮かべるのであった。

 現在の第七層は、アマミヤの塔の管理をし始めた頃よりも大きな変貌を遂げていた。
 といっても、何か特殊なアイテムを設置したわけではない。
 第七層に考助が常設したものは、狼が雨露をしのぐための拠点を作ったくらいである。
 ただし、その数が他の階層とは違っている。
 考助が狼の拠点を作るうえで目安としているのが、ひとつの拠点につき大体百匹ほどの狼と決めている。
 これは考助だけではなく、ナナも狼の群れを作るうえでの上限をそれくらいの数にしているようだった。
 そして、現在第七層にある狼の拠点は、全部で十にのぼる。
 単純計算でいまの第七層には、千匹を超える狼の眷属がいることになる。
 この十年以上は、第七層には眷属召喚用の召喚陣は設置していないので、自然に増えた数になる。
 千匹の狼のうち約半数が灰色狼で、残りは上位種となる。
 ここまでの数になる以前から上位種がそれなりの数になっていたため、第七層における狼の立場は、まさしく強者といっていい状態になっていた。
 しかも天敵といえる存在もいないため、考助が召喚陣を設置しなくても自然に増えて行く結果となっていったのである。

 普通であれば、ひとつの階層に千匹もの眷属がいると餌の管理が大変になるのだが、そこはメイドゴーレムたちの出番だ。
 ゴーレムは、塔のルーチンワークをこなすうえでなくてはならない存在になっている。
 第七層に限らず、それぞれの階層にいる眷属たちに過不足なく日々の餌を与え続けられているのは、彼女(彼?)たちがいるからこそだ。
 その餌やりに関連して当初心配されていたのが、自然発生するモンスターの変化だ。
 召喚陣から出現したモンスターを倒し続ければ、その階層で自然発生するモンスターが強くなると推測していたが、それはほぼ間違いないということまで突き止めていた。
 ただ、その変化は急激に上がるものではなく、月日がたつほどに緩やかに変化していくことがわかっていた。
 第七層では、日々餌用の大量の召喚が行われているが、上位種が発生しているわけではなく、いまは中級のなかでも下のほうのモンスターが出てくる程度になっている。
 灰色狼たちだけではそれらのモンスターを討伐するのは厳しいが、上位種がいるために大きな事故が起こることもなく順調に増えていっているというわけだ。

 ナナと一緒に、拠点をひとつひとつ見回っていた考助は、とある場所で足を止めた。
 その拠点に何かがあったというわけではなく、休憩を取るためとせっかくなので狼とゆっくり触れ合いたいと考えた。
 流石に十もの拠点があると全てに時間をかけて滞在するわけにはいかない。
 そのため、毎回ひとつを選んでこうして時間をかけて狼と触れ合っているのである。

 考助が足を止めると、すぐ傍にいた狼が駆け寄ってくる。
 それらの狼たちを撫でていると、さらにナナが一声鳴くと他の狼もよってきた。
 考助はそれらの狼の首筋を次々に撫でて行く。
 ランクの高い種族から考助の傍に近寄ってくるのは、狼の中での順位付けがあるためだ。
 群れを形成している狼にとっては、とても大切なことだと理解している考助は、特に口を挟むことなく自分に近寄ってくる狼から順番に触れあっていくのであった。

 考助と狼の様子を遠巻きに見ていたミツキが、自分の傍に近寄ってきたナナの首筋を撫でた。
「相変わらずというかなんというか、考助様もまめね」
 今回は考助とミツキのふたりだけで来ていたので、その言葉を聞いている者はナナだけだった。
 そしてその呟きを拾ったナナは、ミツキの手をぺろりと舐めた。
「あら、大丈夫よ。止めたりはしないから。それに、考助様にとっては、これも大切な時間ですからね」
 最近は第五層の街に別荘を作って出入りしている考助だったが、それ以前は管理層にいるだけの生活だった。
 塔の階層が外になるのかどうかは微妙だが、管理層に引きこもっているだけの生活よりは、こうして眷属たちに触れあう時間を作ったほうがはるかに良い。
 それがわかっているミツキは、考助のこうした眷属たちたちとの触れ合いを止めようとは思っていない。
 それは、コウヒも同じだ。
 眷属の狼にとっても考助の触れ合いは、重要な行事(?)になっている。
 そのことを知っているナナは、今度はお礼を言うように、ミツキの手をぺろりと舐めるのであった。

 広い階層に散らばっている十の拠点を回るのは、半日がかりの仕事となる。
 ひとつの拠点で狼と十分に触れ合って気力を充填した考助は、残りの拠点にもきっちりと顔を出して、この日の訪問を終えるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 第七層の訪問を終えた考助と一緒に、ナナも管理層についてきた。
 ナナが一緒に管理層に戻って来ることはほとんどないため、考助は珍しいなと思っていたのだが、くつろぎスペースにあるソファに座った考助の膝にナナがペタリと頭をのせてきた。
 その仕草を見て、ナナも甘えたくなったらしいと理解した考助は、そのままの状態で身体の各所を撫でてあげた。
 それを待ち望んでいたのか、ナナの尻尾が緩やかに揺れている。
 考助たちよりも先にくつろぎスペースにいたフローリアが、ひとりと一匹の様子を見て小さく笑みを浮かべた。
 フローリアは、考助が第七層に見にいったことを知っているため、ナナが何を考えて考助にひっついたのかを理解したのだ。
「今回は、ずいぶんと甘えモードになっているな」
 その言葉にナナがびくりと首を上げたが、フローリアが気にするなとばかりにポンと背中をたたいた。
 それで安心したのか、ナナは再び頭を考助の膝に乗せる。
「うーん。特に何かがあったわけではないけれどね。・・・・・・ああ、そういえば、階層にいるときにはナナには触ってなかったね」
 思い出すように言った考助に向かって、フローリアは目を丸くした。
「それは、また珍しいのではないか?」
 基本的にナナは、考助と会うときには所かまわず駆け寄ってきて触れてくる。
 今回は、それが無かった。

 確かに言われてみれば珍しいと考えた考助だったが、しばらく考えて苦笑しながら首を左右に振った。
「まあ、確かに珍しいことだけれど、別にいいんじゃないかな? 今こうして十分触れてあげているし」
 考助がそういうと、しっかりとその言葉が耳に入っているのか、そうだと言わんばかりにナナの尻尾が大きく揺れた。
 それを見ていたフローリアは、再び笑みを浮かべながら頷いた。
「それは確かにそうだな」
 そう答えながらフローリアは、考助と一緒にナナの背中を撫で続けるのであった。
第七層の現状を説明するついでの日常回でした。
ナナが第七層で考助に触れてこなかったのは、特に大きな意味はありません。
考助たちが予想したように、後でたっぷりと甘えようと考えていただけですw
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