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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 第五層の街

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(14)フィルター

 世代間によって認識の差が出ていることは、考助も今回話をした上でようやく認識することとなった。
 ただし、リクの言った趣味云々はともかくとして、自身の話がさほど広まらないようにしていたのは、狙ってやったところもあるのでそれ自体に驚きはない。
 敢えて上げるとすれば、意外に効果がでるのが速かったというところだろう。
 神としての影響力をできるだけ出さないようにするというのは、考助が現人神になったころから実行していることだ。
 考助自身に直接手を出そうとすればどうなるのかは、最初の頃に世界中が思い知らされているので、今ではほとんど手を出してくる組織も国家もない。
 あったとしても、ラゼクアマミヤに対して「現人神を独占するな」とか「自分たちにも話をさせろ」と言ってくる程度だ。
 今のところは、全てラゼクアマミヤでシャットアウトしているので、考助のところまで来ることはない。
 結果として、現人神としての話は広まることになっているが、それ以前の功績については、セントラル大陸のその当時の世代くらいにしか知られていないのであった。

 考助は、そんな考察をアマミヤの塔のダンジョン階層を歩きながらシュレインに話していた。
「ふむ。まあ、敢えて狙っていたのかどうかはともかくとして、結果がそうなっているのは確かじゃの」
「だよね」
「今更じゃが、わざわざそうした理由を聞いても?」
 本当に今更ではあるが、そもそもシュレインたちも考助が表舞台に立たないようにしていたのはわかっていたので、敢えて理由を聞く必要がなかったのだ。
 いまシュレインが聞いているのは、話の流れとただの興味本位からである。
 別に答えが得られなくとも構わないと考えていた。

 そのシュレインに、考助は肩をすくめながらあっさりと答えた。
「いくら現人神だからといって、神が直接力を行使するのはどうかと思ったから・・・・・・というのは建前で、単に人の上に立つのが面倒だったから」
 シュレインにジト目で見られてあっさりと言い換えた考助の台詞に、シュレインが「そうじゃろうな」と頷いた。
 勿論、考助が建前の部分も考えていたのは間違っていないだろう。
 ただし、それ以上に後者の方が考助にとっては重要だったということは、シュレインにも分かる。
 これは、二十年以上ずっと一緒に管理層で過ごしてきた女性陣全員が同じことを言うだろう。
 それが考助の物の考え方であり、その程度のことで今更どうこういうメンバーではないのである。

 と、そんなことをのんびりと話していた二人を『烈火の狼』の面々は、微妙な表情で見ていた。
 それに気付いたリクが、頭を抱えながら先を歩くふたりに向かって話しかける。
「父上、シュレイン母様。それくらいにしてくれ。そろそろ仲間たちが、現実逃避をはじめてしまう」
 そう言ってきたリクに、考助が肩をすくめながら答えた。
「何をいまさら。彼らだって、特訓のために何度か管理層に来ているだろう?」
 数えるほどでしかないが、シュレインから教えを乞うために『烈火の狼』のメンバーは、管理層に来ていた。
 当然そのときにも考助と会っていて、それなりに付き合いはあるのだ。
 考助の性格がどういうものなのか、特に隠してはいなかったので、分かり切っているはずだというのが考助の考えだった。

 だが、そんな考助に対してリクが首を左右に振った。
「いや、父上。それは甘い。神としてのフィルターがかかった状態で見ているのだから、全てプラス方向に考えられていたはずだ」
 さらに付け加えれば、考助と会ったあとにそのときの話題が出てフィルターがかかった状態の話をしていても、リクが敢えて訂正しなかったので、余計に誤解(?)が進んでいたのだ。
 それが、今回のサラサからの話ですべてが吹っ飛んでしまった。
 その上で今の考助とシュレインの会話だったので、カーリたちの脳内は混乱の極みにあるといったところなのだ。
「・・・・・・それって、僕のせいだけじゃなくて、リクのせいでもあるよね? というか、僕はほとんど悪くないんじゃない?」
 考助は、少なくとも管理層にいるときは、猫をかぶったような性格で対応をしたことは一度もない。
 現人神フィルターがかかったまま誤解が進んでいたのは、それを訂正しなかったリクのせいだと言ってもいいだろう。
「いや、そう、なのか?」
 首をかしげている考助に、リクも同じように首を傾げた。

 お互いに首を傾げ合っているふたりを見て、シュレインが呆れたような表情になった。
「どっちもどっちじゃろ? そんなことよりも、リクは今のうちにフォローしたほうがいいのではないかの?」
「あ、やべ」
 シュレインの助言に、リクが慌てて仲間たちの元へと近付いて行く。
 それを見ながら考助がポツリと呟いた。
「・・・・・・下手をすれば、自分も仲間入りということには気づいていないんだろうなあ」
「まあ、それは、そのときになってみないと分からないじゃろ。それに、コウスケだって、そうだったではないか」
 シュレインにそう言われた考助は、一度だけきょとんとした表情を浮かべて、すぐに小さく笑みを浮かべた。
「確かに、そうだったね」
 そう言った考助の表情は、昔のことを懐かしむような何とも言えないものだった。

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 考助たちがいる場所は、アマミヤの塔の第七十二層だ。
 SSSランクの戦いを見てみたいというカーリたちの希望に押されて、来ることになったのである。
 一応、SSSランクになったときと今の戦い方は全く違っているということも話したのだが、それでも構わないという勢いに考助が負けてしまった。
 ただし、カーリたちの希望をリクが中継して話をしていたので、カーリたちが直接交渉したわけではない。
 考助としても別にカーリたちには隠すことは何もないので、強く拒絶するつもりもなかったということもある。
 結果として、サラサを除いた全員で第七十二層に来ることになったのである。

 第七十二層に出てくる代表格のモンスターとして、ファムルドボアがいる。
 火の魔法を使ってくるこのボアは、ただ突進してくるだけでもかなりの速さと攻撃力を持った厄介な相手だった。
 Aランクの冒険者でも油断すれば、一撃でやられてしまうこともある。
 それゆえに、出会ったときには、慎重に対処することが求められる。
 ・・・・・・はずである。

 カーリたち『烈火の狼』は、目の前で起こった現象に、揃って目を丸くしていた。
「・・・・・・なんだあれ?」
「相手はファムルドボア、よね? 格下のボアとかじゃないわよね?」
「だから言ったじゃないか。あまり参考にはならないって」
 仲間たちの言葉に、リクがため息交じりにそう答えた。
 彼らが見たのは、考助に向かって突進してきたファムルドボアをたったの一振りで首を切り落としてしまったミツキの攻撃だった。
 いや、実際に一振りだったのかどうかは、確認することができなかった。
 それほどまでにミツキの一撃は、速く鋭かったのである。

 驚く一同に、戦闘から戻ってきた考助は首を傾げた。
「あれ? 前にガゼランと一緒に冒険に出たことあったよね? そこまで驚くこと?」
「いや、あのときは、ほとんどナナが処理してなかったか?」
 リクの言葉に過去の記憶を探るような顔になった考助だったが、やがて納得したように頷いた。
「・・・・・・確かに、言われてみればそうかも」
 さらにいえば、あのときよりも確実に実力が上がっているために、ミツキがやったことがとんでもないことだと実感できるだけの力をつけたということもある。
 塔を攻略した実力者の力を目の当たりにして、カーリたちはその道のりの長さをようやく理解することができたのであった。
現人神フィルターは絶大な効果を発揮した!

・・・・・・フィルターというよりも、魅了の力というべきでしょうか?w
何事も「現人神だから」ということで片付いてしまう恐るべき力です。
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