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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 第五層の街

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(13)考助の功績(後編)

 考助がSSSランクを持っているという情報は、『烈火の狼』の面々に実感を伴って考助の立場というものを理解させるものだった。
 これまでは、現人神というどこかおとぎ話のような存在でしか認識していなかったのだが、ランクという冒険者にとっては分かり易い基準を出されたことで一気に現実のものとして考えられるようになったのだ。
 語り継がれている物語の主人公や神話の世界の登場人物から現実の英雄へ実感を伴って変わったと言ってもいいだろう。
 カーリたちの変化を見て取ったサラサが、ため息をついてから話を続けた。
「どうやらご理解いただけたようですね」
 若干皮肉を伴っているように考助には聞こえたが、それは気のせいではなかった。
 同じように感じたカーリたちがピクリと体を揺らしたのだ。
 その様子を見てサラサが苦笑した。
「勘違いしないでくださいね。別に責めているわけではないのです。どちらかといえば、呆れたのです」
 どちらにしてもきつい物いいじゃないかと考助は内心で考えたが、口にすることはなかった。
 隣にいたシュレインが、考助の腕を取って首を左右に振ったためだ。
 さらにシュレインは、サラサの言葉に同意するように付け加えた。
「そうじゃの。仮にも若手のトップを自他ともに認めているパーティが、それではいかんの」
 シュレインとサラサの厳しい言葉に、カーリたちはガクリと肩を落とした。

 考助としては、自分ではそこまで大した人間ではないと未だに考えているため、強者としての態度が表に出ることがない。
 そのためカーリたちに誤解を与える原因となっていた。
 だが、他にもカーリたちが考助のことをSSSランクだとは考えていなかった要因があった。
 それが何かといえば、
「で、ですが、コウスケさんは、『コウ』としてAランクを持っていたはずです。そちらは偽物ということになるのですか?」
 気を取り直したカーリがそう聞いてきたように、考助はコウとしてのランクを持っているのだ。
 クラウンカードは、偽造などできないというのが一般的な認識なので、まさか二種類のカードを持っているなんてことは、考えてもいなかったのである。

 このカーリの言葉に、サラサとシュレインが首を左右に振った。
 当の本人は、苦笑している。
「そんなわけがなかろう? どちらも本物に決まっておる」
「え、ですが・・・・・・」
 戸惑うカーリにサラサが右手を上げて止めた。
「あなたは同じ人物がクラウンカードを二枚持つなんてことはできないと言いたいのでしょうが、例外はあるのですよ。もっとも、この例外を知っているのは、ごく一部の者たちだけでしょうけれど」
「じゃろうな。もし知れ渡ったら大変なことになる。誰が知っておる?」
「私は詳しくは知りませんが、少なくともクラウンの上層部と私のように初期に雇われた受付系の奴隷は、ある程度知っているのではないでしょうか?」
 クラウンが立ち上がって初期の頃に買われた奴隷たちは、考助と直接の対面をしている。
 そのときに考助と顔をあわせているで、コウという冒険者して活動しているのを見て勘付いているだろうというのがサラサの考えだった。
「ふむ。確かにそれはありえるの。まあ、その辺りであれば、問題ないじゃろうな」
 初期のころに買われた奴隷たちは、サラサのように考助に対して敬意を抱いている者たちがほとんどだ。
 何しろ、奴隷としての扱いを劇的に変えた張本人なのだからそれも当然だ。
 もっとも、今ではそうした奴隷たちのほとんどが奴隷から解放されているが、大抵はクラウンに続けて雇われているので問題はないはずだ。

 と、そこまで考えていたシュレインだったが、当の考助がここで口をはさんできた。
「いや、多分、SSSランクのことを知っているのは、サラサとあと数人くらいじゃないかな? 本当の名前でクラウンカードを持っていることは、わざわざ言ったりしていないし」
 サラサが、考助が本来の名前でクラウンカードを持っていることを知っていたのは、それこそ初期の頃に受付として働いていたからだ。
 コウ名義のクラウンカードを使っていなかった頃に、ごく少ない回数クラウンの窓口で使ったことがある。
 そのときも奴隷たちにだけ提示するようにしていた。
 考助がクラウンの窓口に直接言って用事を果たすことなどほとんどなかったので、それだけでも十分だったのである。
 奴隷たちにカードを提示していたのは、考助にも他の者に見せると厄介なことになると理解していたためだ。
 本来の名義のクラウンカードを誰に提示していたのかきちんと知っているのは考助だけなので、一番信用できる情報だろう。
「なるほどの。意外にもその辺はしっかりしておったのか」
「いや、意外にもって・・・・・・」
 シュレインの言葉に、考助はガクリと肩を落とした。
 いくら考助でもSSSカードがとんでもない威力を持っていることくらいは理解していた。
 そのため、当時からそれなりの対処はしていたのだ。

 考助とシュレインのやり取りはともかくとして、カーリたちには別の疑問がわいていた。
「いえ、待ってください! そうではなく、どうやって二枚のカードを作っているのですか!?」
 クラウンカードは一度窓口で作ると、魔力紋が登録されるため名義を変えて作ることは不可能なのだ。
 別の名義で登録しようとしても、魔力紋が検索されてい、すでに登録されているのと同じ魔力紋が見つかった場合は、不正登録としてみなされる。
 クラウンカードは、少なくともセントラル大陸内ではどこでも通用する身分証となるので、その扱いは非常に厳重なのだ。
 だからこそ、カーリの疑問はもっともなのだが、別の角度から見ればずれているともいえる。
「カーリ、そもそもクラウンカードを作るための神能刻印機は誰が作ったのですか?」
 サラサの言葉に、カーリが一度きょとんとした表情を見せてから答えた。
「え? それは勿論・・・・・・あっ!?」
 カーリがそう答えるのと、『烈火の狼』のメンバーが同じような表情になるのはほぼ同時だった。
 サラサからほんの少しのヒントを与えれば思い浮かぶような答えなのに、今まで全くと言っていいほどそのことを考えていなかったのは、そもそも同一人物が二つのカードを持てるということが頭になかったためだ。
 それと同時に、考助を見ながらほぼ全員の頭に「規格外」という言葉が思い浮かんでいたが、賢明にもそれを口にする者はいなかった。

 今までの話で、ようやく彼らにもサラサの考助に対する態度を理解することができた。
 上げればきりがないほど、考助はこの世界に対して現人神になる前から大きな影響を与えている。
 考助にSSSランクが与えられているのは、当然の結果なのだ。
 そう考えたカーリだったが、ふと何かを思いついたような顔になった。
「なんだ? どうかしたのか?」
 それに気付いたリクが、敢えて問いかけた。
 気づかなかったふりをしてもよかったのだが、今のうちに聞いておいた方がいい気がしたのだ。
 リクに問われたカーリは、一瞬だけ考助に視線を向けて言いづらそうにしていたが、思い切ったように口を開いた。
「コウスケさん、いえ、コウスケ様が凄いことはわかったのですが、それが私たちの年代に広まっていないのはなぜかなって思ったのよ」
「ああ、それは簡単だ。単に父上の趣味だ」
 そのリクの答えに『烈火の狼』の面々は目をむき、考助たちは苦笑をした。
 その中でサラサだけは、不満そうな顔をしている。
 それに気付いたシュレインが、一応のフォローを入れた。
「まあ、間違ってはいないが、ちと極端じゃの。リクは実の息子だからそう思えるのかもしれんがの」
「そうです! いくらなんでも失礼ですよ!」
 ヒートアップしそうなサラサに、リクがしまったという顔を見せた。
 ついトワミアに話しているときのような感じで言ってしまったのだが、口に出してしまった以上戻すことはできなかった。
 結果として、サラサのお小言を食らうことになるのであった。
以上、後編でした。
改めて第三者的な視点から見た今の考助の現状を書いてみたかったので、ここまで長くなってしまいました。
考助の功績は、ある一定年齢以上の者たちには広く知られていますが、それ以下となると現実のものというよりも物語的な扱いに変化していっています。
それは、実際に目の当たりにしてきた年代との差になります。

次は、どうしましょうか。
まだ決めていませんが、塔の話に戻るかもしれません。
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