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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 第五層の街

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(12)考助の功績(前編)

 サラサの認識はともかくとして、今度は別の疑問をカーリが口にした。
「ところで、サラサさんはなぜここに?」
 着ている服(メイド服)を見れば一目瞭然なのだが、そもそもサラサはそんなことをしなくともいい立場をクラウンで築いている。
 できれば違ってほしいというのがカーリの本心で、願いを込めて聞いたのだが、それはあっけなく崩れてしまった。
 問われたサラサが誇らしそうな表情で、カーリに向かって言った。
「それは勿論、この屋敷を任されているからです!」
「いや、屋敷っていう規模じゃないと思うのだけれど・・・・・・」
 横で話を聞いていた考助が思わずそう突っ込んだが、サラサを除くその場に集まっていた全員が頷いた。
 だが、サラサはその場の空気にめげずに、きっぱりと言い放った。
「私にとっては同じことです」
 本人がそう言っている以上は、もはやどうしようもない。
 考助とシュレイン、ミツキは苦笑を返してそれ以上は何も言わず、他の面々は驚きで唖然とした表情をしていた。

 驚きから立ち直ったカーリが、さらにサラサに問いかけた。
「屋敷云々はともかくとして、今更メイドなんてしなくても、クラウンで十分に稼げますよね?」
 冒険者部門の窓口業務がどれくらいの給料をもらっているのかカーリは知らないが、そもそも立場のある地位についているサラサが安い給料であるはずがない。
 それをわざわざ、メイドという給料も安そうな職に就かなくてもいいのでは、という思いでの質問だったが、サラサの答えはその斜め上をいった。
「稼ぎはともかく、私としては今のほうが充実しているのでそれで十分です」
「そ、そうですか」
 お金よりも仕事の内容と言い切ったサラサに、カーリがどう返事をしたものかと考えてから無難な答えを返した。
 カーリにとっては、どう考えてもこんな小さな家のメイドよりも、冒険者部門に居続けたほうがいいのではないか、という思いがあったので、思わずそんな感じになってしまったのである。

 その微妙なカーリの返事と、他の『烈火の狼』の似たような反応を見て、サラサがようやく自分との認識のずれを認めた。
「おや? 皆さまご存じなかったのですか? てっきり、リク様がいらっしゃるのでご存じだと思っていたのですが」
 サラサは勿論、リクが考助にとっての息子であることはきちんと知っている。
 だからこそ、リクがパーティメンバーに考助のことを話していると思って話をしていたのだが、どうにもその辺りの認識が微妙な感じだった。
 サラサにしてみれば、考助に直接仕えることができるというのが、何よりも誇りを感じるのだが、彼らからはそうした考えが感じられないのだ。
 そのため、敢えてリクが話していなかったのではないかと考えたのである。

 だが、そんなサラサに対してリクは首を左右に振った。
「いや、そんなことはない。俺の父上が誰かはちゃんと話しているぞ、こいつらには」
「はあ・・・・・・。それでこの認識なのですか」
 『烈火の狼』の面々は、さすがに若手のトップに上げられるだけあって、それぞれがそれなりの知識も感覚も持っている。
 それにもかかわらず、いまのような反応をしていることのほうが、サラサには信じられなかった。
 勿論、考助を現人神として認識しているが、どちらかといえば腫物を触るような扱いで、喜びといったプラスの感情が感じられないのだ。
 奴隷だった自分を救い上げてくれて、いまのような立場にしてくれたと認識しているサラサからすれば、あり得ないと言っていいようなことだった。

 戸惑う表情を見せるサラサに、それまで黙って話を聞いていたシュレインが口を挟んできた。
「コウスケに対する考えは、世代によって違っているからの。そう不思議なことでもないじゃろ?」
「・・・・・・どういうことですか?」
 意味が分からずに首を傾げるサラサに、シュレインがまじめな顔になって説明した。
「リクのような年代の者たちにとっては、コウスケはあくまでも『現人神』であって『コウスケ』ではないからの。其方のような感覚を持つのは難しいと思うぞ?」
 そのシュレインの言葉に、サラサはハッとした表情になった。

 サラサが奴隷としてクラウンにやとわれたころは、考助はまだ現人神ではなかった。
 それにもかかわらず、塔の攻略をしたり、革新的な魔道具を開発したりと、普通ではありえないような活躍をしていた。
 そうした土台があったうえで現人神となったという認識なのだ。
 だが、リクたちにとっては、考助は生まれたときからすでに現人神だった。
 そう考えれば、サラサとリクたちの間に認識の違いがあって当然なのだ。
 考助が実際に行った実績を肌で直接知っている者と、そうでない者たちの差と言ってもいいだろう。

 改めてそれらのことを認識したサラサは、ため息をつきながら考助を見た。
「・・・・・・ご主人様、申し訳ありません。ご主人様のことを彼らに話してもいいでしょうか?」
「僕のこと? いいけれど、何を話すの?」
 別に考助としては、何を話されても大丈夫だろうと考えてそう答えたが、サラサが何のことを話すつもりなのかは分からなかった。
 首を傾げる考助に、サラサが答えた。
「冒険者ランクとクラウンカードのことを」
「ああ、なるほどの。それはいいのではないかの?」
 サラサの言葉に、考助ではなく、シュレインが彼女の意図を察して納得した表情になった。
 いまサラサが上げたふたつは、考助がどういった存在なのかを冒険者である彼らに説明するには、絶好の材料だと分かったのである。
「うん。まあ、いいんじゃない?」
 不特定多数の人間に大々的に知らせるつもりはないが、リクのパーティメンバーくらいならいいだろうと考えた考助もすぐに許可を出した。
 自ら話をするよりも、ほとんど第三者に近い立場にいるサラサが話した方がいいという考えもある。
 考助にとっては、ちょうどいい機会だったのだ。

 考助から許可を得たサラサは、改めてリクたちを見た。
「まず聞きますが、あなたたちはご主人様のランクをご存知ですか?」
 サラサのその問いかけに、カーリたちは何をいまさらと顔を見合わせた。
 ただし、本当のことを知っているリクだけは微妙な表情をしている。
「以前に聞きましたが、Aランクでしたよね?」
「違います」
 代表して答えたカーリに、サラサが首を左右に振ってすぐに否定した。
「え? でも・・・・・・」
「Aランクのカードは、冒険者コウとしてのランクです。コウスケ様としてのランクも当然持っているのですよ?」
 言われるまで気付いていなかった『烈火の狼』の面々が、改めて言葉にされたことで意表を突かれた顔になった。
 それぞれが、なぜサラサに言われるまで気付かなかったのかという思いを抱いているのだ。

 そして、続けられたサラサの言葉に、さらに衝撃を受けることになる。
「ご主人様、いえ、コウスケ様のランクはSSSランクです」
「「「「「「!!!!??」」」」」
 SSSランクは、冒険者にとっては最高位であり、まずなることが不可能だとされているランクだ。
 『烈火の狼』の言葉にならない驚きを見て、サラサがため息をついた。
「なぜそんなに驚くのですか? そもそもコウスケ様とコウヒ様、ミツキ様は、塔の攻略をされているのですよ? 少なくともここ百年では誰もなしえなかった快挙を行っているのです。SSSランクなのは当然ですよね?」
 本当の意味での考助たちの凄さを理解していなかった『烈火の狼』の面々の反応を見れば、サラサがため息をつきたくなるのも当然と言えた。
 彼らにとっては、すでに考助が行った過去の功績は、すでに伝説の一部に近いものとなっていて、実感を伴えるようなものではなかったのである。
 それが、SSSランクという彼らにとって、身近でもあり最も遠い存在と言えるランクのことを示されて、ようやくそれが実感を伴って認識することができたのであった。
中途半端で申し訳ありません!
後編に続きます。

今回は世代間の差(?)というか認識の違いについての話です。
皆様にとっては当たり前の話ですが、どこがどう違っているのかを比較するために敢えて過去の実績を掘り起こしていますw
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