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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 第五層の街

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(8)依頼の成果

 大きな問題は国やクラウンに任せることにした考助は、一度管理層へと戻った。
 依頼をふたつ受けたときに、いくつかの魔道具を思いついたので、それを試しに作ってみようと考えたのだ。
「それで? 何を作るんじゃ?」
 研究室に向かう前に、シュレインがそう聞いてきたが考助はニンマリと笑った。
「それは、まだ秘密。まだうまくいくかどうかも分からないしね」
「そうか。まあ、それでは、何ができるかは楽しみにしておこうかの」
 シュレインとしても何が何でも聞きたかったわけではないので、あっさりと引き下がった。
「そうだね。そうしておいて」
 そう言った考助の顔を見たシュレインは、その自信ありげな表情に、そんなに時間がかからず完成品を見ることができるのではと予想した。
 そして、その予想は外れることなく、この日の三日後には笑みを浮かべてふたつの魔道具を手にする考助の姿があった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「それで? 今回は、どんな道具を作ったのじゃ?」
 さっそく作った道具を見せてくれた考助に、シュレインが問いかけた。
 彼女の目の前には、握りこぶし大のボールのような物と奇妙な形をした二枚の板がついている箱が置かれている。
「それじゃあ、まずはこっちの説明からするね」
 考助はそう言いながらボールの形をした球体を持ち上げた。
「まあ、説明といってもそんなに難しい使い方をするわけじゃなくてね。・・・・・・ちょっと耳を塞いでもらっていい?」
「耳を?」
 首を傾げたシュレインだったが、考助の言う通りに両手で耳を塞いだ。
 考助を見守っていたコウヒとミツキも同じように耳を塞いでいる。
 彼女たちは、考助が試作していたときから何度も同じことを繰り返されているので、これから何が起こるのか理解しているのだ。

 シュレインが耳を塞ぐのを確認した考助は、持っていた球体にあったボタンをカチッと押して、ポイッと少し離れた場所に投げた。
 そして、その数秒後には、その球体から大きな音が聞こえてきた。
 その音は、耳を塞いでいるシュレインでも思わず顔をしかめてしまうほどの大きさだ。
「これは・・・・・・狼の鳴き声?」
 球体からは、シュレインの言う通り、ワンワンという音が一定時間繰り返されている。
 シュレインの言葉に頷いた考助は、球体のところまで行ってそれを回収したあとに、すぐにその音を消した。
「そういうことだね」
「・・・・・・それで? これを何に使うのじゃ?」
「あれ? 分からない?」
 球体を手に取って首を傾げているシュレインに、考助が心底不思議そうな顔になった。

 少しの間考えていたシュレインだったが、やがて諦めたように首を左右に振る。
「・・・・・・済まんが、さっぱりわからんの」
「そうですか・・・・・・」
 その答えに、考助はがっくりと肩を落とした。
 実は、研究室で完成させたときにコウヒとミツキにも聞いたのだが、ふたりとも分からなかったのだ。
 見てすぐに使い方がわからない魔道具は、それだけ売りづらいので、あまり良いものとは判断されないのだ。
 勿論、その道具が一般に浸透すれば売れるようにはなる。
 ただ、そうするためには、宣伝をするなどの手間がかかるため、そうした余計な作業をしない道具が好まれているのだ。

 肩を落とした考助は、すぐに気を取り直してシュレインに使い方を説明する。
「例えば、これをビッグマウスの巣なんかに放り込んだらどうなると思う?」
 シュレインもそう説明されれば、さすがにこの魔道具の使い方を理解した。
「・・・・・・なるほど。音でモンスターを追い立てるのか」
「あとは、この音で近付いてくるモンスターを追い払うとかね。まあ、逆に呼び寄せる結果になる可能性もあるから、使い方には気をつけないといけないけれど」
「確かに、それはそうじゃの」
 音を頼りに襲ってくるモンスターもいるので、使いどころを間違えると考助の言う通りに、それらを呼び寄せる結果になりかねない。
 第五層にはそうしたモンスターはいないので、害獣対策として使うことも可能だろうと考えて作っていた。

 考助から球体を受け取って手の上でコロコロと転がしていたシュレインだったが、真剣な表情になった。
「これは、いくつか作ってもらってもいいかの? 里に持って行って、有効活用できないか調査してもらいたい」
「ヴァンパイアたちの里で? それは、むしろお願いしたいけれど、いいの?」
 考助としては、どんな使い方ができるのか、調査してくれる対象が増えれば増えるほど別の使い方が見えてくるかもしれないので、とてもありがたい。
 仕組み自体は単純な魔道具なので、複数個作ることなど大した手間ではないのだ。
「うむ。何か面白い使い方を思いついてくれそうだしの。特にイグリッドあたりが」
「あ~。確かにそうかも」
 考助は、特徴ある容姿を持っているイグリッドの姿を思い浮かべて、楽しそうに笑った。
 いろんな意味でインパクトのある彼らだが、確かにシュレインの言う通り、自分では及びもしないような使い方を思いつきそうな気がしたのである。
 それは、イグリッドだけではなく、ヴァンパイアたちも同じだ。
 考助は頭の中で、いくつこの魔道具を作れるかを急いで計算した。
「・・・・・・五個、くらいなら明日には渡せると思うよ?」
「ふむ、そうじゃの。最初は、そのくらいで十分じゃろ」
 それ以上となると、調査用という名目で、無料で作ってもらうには気が引ける数になる。
 シュレインとしても妥当な数に、満足げに頷くのであった。

 
 魔道具を借り受けることを考助と約束したシュレインは、もうひとつの魔道具へと視線を向けた。
「それで、こっちの珍妙な板が付いた箱は何なのじゃ?」
「珍妙なって・・・・・・いや、見たことがなければ、そう思うのも仕方ないと思うけれどね」
 シュレインの言い草に考助は苦笑を浮かべた。
 彼女が珍妙なと称した板は、考助の持つ記憶の中では、スキー板と呼ばれるような物と同じような形をしている。
 何に使うのか分からない物からすれば、先端がそっているその板は、奇妙だと言われてもも、おかしくはない。
 さらに、だからこそ、その板がついた箱の使いかたも思い浮かばないのだ。
 生まれて初めてスキー板を見た者が、それが雪山を滑り降りるための道具だと分からないのと同じことだ。

 こちらの道具に関しても、魔道具を起動させれば一発で使い方はわかる。
 首をかしげたままのシュレインに、考助は魔道具を使って見せた。
 といっても、床の上に置いた道具を起動させたあとに引っ張るだけだ。
「・・・・・・とまあ、こんな感じで重たい物を箱に入れたり、上に置いたりして運ぶことができる魔道具だね」
「ほう! ・・・・・・なるほど。この板の部分が滑りやすくなるのじゃな?」
「そう。地面との摩擦が無くなるようにして、楽に運べるってわけ」
 最初はほんの少しだけ浮かせるように作ろうとしたのだが、それが簡単にはできなさそうだったので、抵抗を減らす方法を選んだのだ。
 具体的には、スキー板の下に氷のようなものを張って滑りやすくなるようにしてある。
 この魔道具を使うと、もちろん限度はあるが、かなり重たい物まで運ぶことができる。
 地味な魔道具ではあるが、狭い路地で荷物を運ぶのには重宝するだろう。
 これも依頼を受けたときに思いついた魔道具だった。

 依頼を受けている最中に思いついた魔道具はまだほかにもあったが、実用に耐えられるものはこのふたつだけだ。
 思いついた時点ではよさそうでも実際に形にしようとすると上手くいかないなんてことは、魔道具を作っていく上ではよくあることなので、今回は考助としても十分な結果なのであった。
魔道具を二つ作りました。
ひとつはクマよけの鈴でもう一つはそりですw
音の方は、狼の声で追い立てるというよりも、大きな音でびっくりさせるという意味合いが大きいです。

そりは、土の上でも滑らせることができるものです。
・・・・・・本文書いているときには思いつきませんでしたが、子供の遊び道具としても使えそうですね。
遊び道具としては高いですがw
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