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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 第五層の街

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(6)被害対応

 考助は、ガゼランと話を終えたあとに、シュミットへの伝言を頼んでから冒険者部門の掲示板を確認しに行った。
 ガゼランと話をしていたお陰で、時間はあまりないが、ちょうどよさそうな依頼があればと考えたのだ。
 とはいえ、さすがに時間も中途半端なため、その日のうちに街の中で出来る仕事はほとんど残っていない。
 そんなときに、同じように掲示板を見ていたミツキが、とある依頼を見つけた。
「あら。これはどうかしら?」
「ん? どれどれ・・・・・・って、ウルフの討伐じゃないか。さすがにナナがいるのに、ウルフ系の討伐はやめよう」
 ナナはそんなことは気にしないだろうが、同じ狼の系統で討伐を行うのは、考助の気が進まない。
「違うわよ。そっちではなくて、こっち。私だって、ナナにそんなことさせたくはないわよ」
 ミツキがそう言いながら、考助が見ていた依頼票の隣にあった別の依頼を指した。
 そこには、畑を荒らすとある害獣を討伐してほしいと書かれている。
「へえ~。ネズミの討伐か。いいんじゃない? 場所も近くだし」
 場所の街の外側にある農業地区で、急いでいけば一時間もかからないところだ。
 これであれば、現場との往復分と合わせても十分に今日一日で処理ができる。
 ちなみに、考助はネズミと軽く言ったが、そんなに簡単に見つけて倒せる相手ではなく、それなりに厄介な存在だ。
 ただし今日はナナがいるので、考助たちにとっては、相手を探すのはさほど難しい作業ではないのである。

 依頼票をサラサに渡して受付してもらった考助たちは、早速現場へと向かう。
 一見若そうに見える考助とミツキが来たことで、依頼主は不安そうな顔になっていたが、それには気づかなかったふりをして考助たちは討伐を開始した。
 やることは非常に単純で、ナナに討伐対象のネズミを見つけてもらい、場所を特定してから倒すだけである。
 討伐対象のことを考助は一言で「ネズミ」といっているが、正確にはビッグマウスという体長五十センチほどになるれっきとしたモンスターだ。
 その特徴は、モグラのように自ら穴を掘って巣を作り、十体近い集団で生活をすることだ。
 素早い動きと力強い体当たり、そして何よりも集団での戦闘になるので、初心者冒険者にとっては苦しめられる相手になる。
 さらに付け加えると、そこかしこに掘られた穴から出てくるので、不意打ちを食らいやすい。
 農業をするにあたっては、直接育てた植物を荒らすことも多いのだが、それ以上にそれらの穴が非常に厄介なのだった。

 ビッグマウスはそんな厄介な相手だが、勿論考助たちのとってはさほど面倒ということにはならない。
 その理由は、
「・・・・・・おー、張り切っているねえ」
「そうね。久しぶりの一緒の狩りだから」
 そんな感想を漏らしている考助とミツキの視線の先では、ビッグマウスが巣穴からぽんぽんと飛び出して来ていた。
 本来であれば、ビッグマウスを巣穴から出すのが一苦労になるのだが、その苦労を知っている者たちからすれば目が飛び出るような光景だろう。
 そのありえないような光景を起こしているのは、当然というべきか、ミツキが言った通り考助との狩りが久しぶりなナナだった。
 身体を小さくしたナナが、ビッグマウスの巣穴に潜りこんで、彼ら(?)を追い立てているのである。
 その光景だけを見ていればいかにも簡単そうにやっているように見えるが、普通はビッグマウスを巣穴から追い出すことは、簡単にはできない。
 ナナがそれなり以上の実力があるからこそ、彼らも逃げまどっているのだ。
 現に、ビッグマウスが次々と穴から出てくる様子を、依頼主はぽかんとした表情で見ている。

 ナナが追い立てたビッグマウスを倒すのは、考助とミツキの役目だ。
 集団で向かってこられれば脅威になり得るビッグマウスだが、ナナが上手に追い立てているため、一体ずつしか出てきていない。
 考助は妖精たちの力を借りて、ミツキは剣をふるってビッグマウスを倒していく。
 最終的にナナがビッグマウスの巣穴から出てきたのは、考助とミツキで十三体を倒してからのことだった。
 時間にして一時間ほどしかかかっていない。
 ビッグマウスの討伐がどれほど大変かを知っている依頼人からすれば、信じられないほどの短時間の作業だ。
「いやー。侮っていてすまなかったね。これだけ早く終わったのを見たのは、久しぶりのことだよ」
「いえいえ。とりあえず、これで終わりということでいいですかね?」
「勿論さね」
 考助の確認に、依頼人は力強く頷いた。
 今回の討伐ですべてのビッグマウスが倒せたわけではないことは、当然依頼人もわかっている。
 というよりも、すべてを倒すことなど不可能である。

 とりあえず依頼人としても、畑のすぐそばにある巣さえ潰せれば、それで満足だ。
 当然、依頼の内容もそのようになっていた。
 そこから考えれば、依頼人にとっては、考助たちの討伐内容はほぼ完ぺきに近いものだった。
「いやー、ありがたいねえ。最近は、中途半端に倒して終わらせる冒険者も多いからねえ」
「・・・・・・そうなんですか?」
「まあねえ。あいつらが厄介な敵なんで、倒しきるのが難しいのも分かるんだがね」
 そう言った依頼人は、仕方ないという顔をしている。
 事実、ランクの低い冒険者では、ビッグマウスを倒しきることは不可能なのだ。

 依頼人も考助たちが例外だということはよくわかったうえで、話をしていた。
「それに、もともとクラウンは被害を受ける前提で作物を買い取ってくれているからねえ。ありがたい限りだよ」
 いま考助たちがいる場所は街のはずれで、モンスターの被害は起こりうることが当然と考えられている。
 そのため、作物を買い取るクラウンは、その分も必要経費として払っているのだ。
「うーん、なるほど。色々と考えられているのですね」
「ハハハ。私じゃ、こんなことすら思いつかないけれどね」
 そう言って笑ってきた依頼人を見て、考助も笑顔になるのであった。

 依頼人から完了のサインをもらった考助は、クラウンへの帰り道に考え事をするような顔をして歩いていた。
「何をそんなに悩んでいるのよ?」
「ああ、いや。今の状態でいいのかなって、思ってね」
 考助が言った意味が分からずに、ミツキが不思議そうな顔をした。
「どういうこと?」
「うーん・・・・・・。なんて言えばいいのかな」
 そう言ってからほんの少しだけ悩んだ考助は、すぐに自分が感じているものが何か分かって、それを口にした。
「慣れている・・・・・・」
「え?」
「あの依頼人も魔物からの被害を考えて購入費用を考えているクラウン、あと恐らくラゼクアマミヤもだと思うけれど、魔物に対する扱いが慣れすぎていると思うんだよね」
 考助が言ったことを吟味するように、ミツキがわずかに視線を落とした。

 やがて、ミツキの顔に納得の色が広がって行き、小さくため息をついた。
「最初から被害を受けることを前提に考えすぎているということですか」
「簡単にいえばそうだね。勿論、この世界ですべての魔物を全滅させることなんて不可能なのだから、そう考えること自体は悪いことじゃない・・・・・・というか、絶対に必要なことだ」
 たとえて言うなら、いつ来るか分からない自然災害に備えは必要である。
 ただし、魔物の被害は自然災害と違って、人と物を投入すれば防ぐことは可能だ。
 結局、そこに対してどれだけの力と予算を注ぐことができるかどうか、ということなのだろう。
「最初から被害を見越して予算を付けるのはいいことなんだけれど、そっちに力を注ぎすぎていなければいいなと思ったんだよ」
 考助の懸念を完全に理解したミツキは、今度は大きくため息をついた。
 もしかしたら、考助の懸念が当たっているかもしれないと予想したのだ。
 ミツキのその顔を見た考助も同じようなことを考えていたので、早急にフローリア辺りに話をしようと決心するのであった。
慣れというものは怖いですね。
特にそれで物事がうまく回っているときは。
考助はちょっとしたことでそれに気づきましたが、別に考助でなくとも、例えばフローリア辺りが同じ依頼を受ければ、気付けたでしょう。
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