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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔の地脈の力を使ってみよう

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(18) 新たな妖精ユリ

 考助は、女性の名前をユリと名付けた。
 その名前を聞いたユリは、嬉しそうに微笑んで同意したのである。
「それで、さっきユリはここら辺を漂っていた存在って言ってたけど、それってどういう事?」
「はい。正確に言えば、漂っていたというよりも、そこに在るだけの存在でした」
 精霊には、たとえ力が弱いものであっても、それなりの意思(もどき?)が宿っている。
 それ故に、光という形で姿を現すこともできるのだが、ユリは精霊ですらなかった。
 ただただこの場所に在るだけの存在だったとのことである。
 普通であれば、そう言った物は四散してしまうのだが、ここは地脈の交点なので、その力をもとに存在し続けることが出来たそうである。
 地脈の交点には、大なり小なりそういった物が存在しているとのことだった。
 その存在は、普通は地脈の交点の辺りに漂うだけの存在なので、特に何かをするといったことは、ほとんど無い。
 ただし、地脈の交点に別の物が出来ると、その者に影響を与えることがある。
 例えば、世界樹だとその成長の手助けをしたりするとのことである。
 ユリの場合は、地脈の交点の上に神社が出来たことで、その神社に宿る存在になるはずだった。
 本来であれば、長い時間をかけて神社そのものに宿った上で、さらに地脈からも力を得ていく存在になるのだ。
 ところが、アスラに姿形を与えられて、考助にはこの世界に存在する力を与えられたことでその意味合いが若干変わったとのことだった。

「変わったって、どういう風に?」
「はい。・・・本来であれば、私という存在はこの建物だけに存在して、地脈から力を得るだけの存在でした。ですが、貴方様の力を得たおかげで、それだけの存在ではなくなりました」
「?? どういう事?」
 頭上にクエスチョンマークを浮かべる考助に、ユリが説明を続けた。
「長い間を掛けてこの建物に宿って行った場合は、この建物の為だけの存在になるはずでした」
 その場合は、この建物の為に存在することになる。
 それはあくまでも、神社という物を中心に存在していることになる。
「ですが、貴方様の力を得たおかげで、私は貴方様の為の存在になっています」
 神社という建物の為ではなく、考助の為に存在しているということになるので、現在のユリにとっては、建物はあくまでもオプションなのだ。
 ただ、オプションとはいってもユリが存在できるのは、あくまでもこの神社のおかげなので、神社自体は維持しないといけないとのことだった。
「例えばですが、本来であればこの建物限定で姿を現すことが出来るはずでしたが、今の私は貴方様のお傍であれば、どこでも姿を現すことが出来ます」
 それを聞いた考助は、それと同じことをしている存在を思い出した。
「・・・・・・エセナと同じ様な感じかな?」
 それを聞いたユリは、同意するように首を縦に振った。
「そうですね。厳密には違いますが、そのようなものと考えていいと思います」
「・・・・・・あれ? エセナのこと知ってるの?」
「はい。あのお方から姿を授かる際に、貴方様に関するある程度の知識はいただいております」
 何故だかそう言って、ユリは頬を染めた。
 それを見た考助は、アスラからどんな知識をもらったのか若干不安になったが、つつくと藪蛇になりそうだったので、スルーすることにした。
「あ、そうなんだ。それで、他には?」
「そうですね・・・。他には・・・この建物をセーフエリアにすることが出来るとかですね」
「ん? それってどういう事?」
「この建物には、他の場所へいく道が存在していますが、貴方様であればそのような物を使わなくても自由にここへ来ることが出来ます」
 何故かその話に食いついたのが、ミツキである。
「それって、転移が自由に出来るってこと?」
「はい、そうです。あくまでもこの建物に来ること限定ですが・・・」
「あなたの意志で?」
「いいえ。私の場合は、考助様の同意が必要になります。考助様から自由に来ることが出来るということです」
「例え塔の外にいたとしても?」
「問題ありません」
「なるほど、それは便利そうね。色々使えそうだわ」
 今の話は、考助の身に何かが起こりそうな場合は、すぐにこの神社へと転移することが出来るということになる。
 コウヒやミツキがいる限りは、大事に至ることはまずないが、それでもいつでも安全圏へ避難できるというのは、大きなメリットである。
 何しろ考助のことを気にせずに、暴れることが出来るのだから。
「他には、何かあるの?」
 ユリが、考助にとって便利な存在だと分かったミツキは、他にも何かないのか聞き出そうとする。
 しかしそのユリは、申し訳なさそうに俯いた。
「申し訳ありません。今の私は、それ以外に大きな力は使えません。今は、地脈の力を得るために、制御する方に力を入れたいのです」
「そう。まあ、それは仕方ないわね。転移の力だけでも十分だし。それに、制御が上手くいけば、使える力も増えるのでしょう?」
「はい」
「だったら、そっちを優先するのは当然ね。とりあえずは、いつでもここに避難できるようになるだけでも十分よ」
「ありがとうございます」
 そう言って頭を下げたユリに、ミツキはいいのよ、と言って手を振った。

 話がユリのこと中心になってしまったが、本来の目的を思い出した考助は、精霊に関して聞くことにした。
「地脈の力を得るって言ってたけど、精霊はどうなってるの?」
「それでしたら、建物の外で確認していただけるのがいいかと」
「外?」
「はい。この建物の中にも呼び込めますが、今は其方の方が都合がいいのです」
 ユリの話を聞いて、考助達は神社の外に出ることにした。
 外に出た考助は、嬉しそうにはしゃいでいるワンリを見つけた。
「おにーちゃーん。精霊さん、いっぱーい」
 ワンリはそう言って、考助のところへと駆け寄ってきた。
 ワンリを抱き留めた考助は、周囲を確認する。
 流石に第七十三層の世界樹の周囲ほどの精霊がいるわけではないが、それでもかなりの量の精霊達が、神社の周辺を漂っていた。
「今はまだ、私自身の力が安定していませんからこの程度ですが、地脈の制御が上手くできるようになれば、もっと集まってきます」
 周囲を見渡す考助に、ユリがそう言ってきた。
「そうか。何か用意してほしいものとかある?」
「いえ、しばらくは自身の力を安定させないといけませんから大丈夫です」
「そう。もし必要な物があったら教えてね」
「畏まりました」
 世界樹の環境を整えるのには、エルフ達の力を借りているが、神社には何を用意すればいいのか分からない。
 エセナと違って、元をアスラが用意したためか、ユリはそれなりの知識が備わっているらしい。
 必要な物があれば、直接聞いた方が早いと思った考助であった。

 ついでにセシルとアリサにもユリを紹介した。
 普段は、特に姿を現すことなく存在できるそうだが、今の内から二人にも紹介しておいた方がいいだろうと判断したためである。
 世界樹のエセナと同じように、神社そのものであるユリには二人のことを紹介する必要はないのだが、二人はそう言うわけにもいかない。
 いつ突発的なことが起こるかわからないので、さっさと紹介したほうがいいと判断したのである。
 最初は驚いていた二人だったが、その後はあっさりとユリを受け入れたので、今後この神社に関しては、ユリを中心に任せてしまうことにしたのであった。
2014/5/24 誤字修正
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