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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7部 第1章 塔のあれこれ(その15)

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(8)新たな加護持ち

 考助(の後ろにいたシルヴィア)からの指示を受けたココロは、早速サラサのところへ向かった。
 クラウンで働いているということはわかっているが、さすがにどこに住んでいるかまではわからない。
 捕まえられる今が話をする絶好のチャンスなのだ。
 考助と話をしていたときも、サラサがいなくなっていないことはきちんと確認していた。

 一方で、サラサは何か悩みながら自分のところに近寄ってくるらしいココロを見て、内心で首をかしげていた。
 今でこそ表に出ていないサラサだが、長い間冒険者部門の受付嬢としてカウンターに出ていたため、人の表情を読むことには長けている。
 それができるからこそ、奴隷という身分でありながら今のような地位に就くこともできたのだ。
 ココロの顔から何かに悩んでいることは、すぐにわかった。
 修行にはいる前はごく普通に接していたことから、その間に何かがあったのだろうと推測した。
 勿論、特殊能力など持っていないサラサは、ココロが何に悩んでいるのかまではわからないのだが。

 サラサのところまでに何から話そうかと考えていたココロだったが、結局それだけでは時間が足りなかった。
 仕方ないので、この場でいきなり話をするのではなく、別のところに来て話をすることにした。
「あ、あの、すいませんが、今日これからお時間よろしいでしょうか? 少しお話したいことがあるのです」
「お話しというのは、どういった内容になるのでしょうか?」
 さすがにサラサとしても、それを聞かずに返事をするわけにもいかない。
 いくらココロが現人神を信仰している巫女といっても、無条件に信用できるはずもない。
 あくまでもサラサとココロは、神殿で何度か顔を見合わせていると言った程度の仲でしかない。

 勿論ココロもそのことをわかっているので、何も言わずに突っぱねるつもりはなかった。
 この段階で話してもよさそうなことを提示する。
「実は、現人神のことに関して、あなたに提案というか、相談したいことがあるのです」
「現人神様の・・・・・・? ということはコウスケ様の・・・・・・」
 後半部分は小さなつぶやきでココロまでは聞こえなかったが、前半部分はきちんと聞こえてきた。
 それにたいしてひとつ頷いたココロは、さらに続けた。
「こちらも神殿ということで、神に関して話をするのには問題ないのですが、内容が内容ですので・・・・・・」
 ココロとサラサがいる場所は、いまは偶然ふたりしかいないが、もとは不特定多数の人間が出入りできる場所になっている。
 いくらなんでもこの場所では話すべきではないと言い訳しつつ、ココロは何とか別の場所で話ができるように提案した。

 ココロの提案を受けて、しばらく考えるように首を小さく傾けていたサラサだったが、やがて頷いた。
「・・・・・・わかりました。時間は大丈夫です。どちらに行けばよろしいでしょうか? 今すぐですか?」
「あ、いえ。場所は城にある私の部屋がよろしいかと思います。ただ、話を通しておく必要があるので、一時間後で如何でしょうか?」
 クラウンの職員として城に向かうことがあるサラサは、すぐに了承した。
 外部の者が中に入ろうとするには複雑な手続きが必要になるのだが、内部の者が話を通しておけばすぐに目的の場所に行けることもわかっている。
「わかりました。一時間後に伺えばいいのですね?」
「はい。それで大丈夫です」
 ココロも客を城に招くのは初めてではないので、大体のことはわかっている。
 他の人間に対しての面会手続きとなると時間がかかるが、自分に向けてであればさほど時間はかからないのである。

 サラサの了解を得られたココロは、早速準備をするため城へと戻った。
 その足取りは、サラサに向かってきたときよりは幾分か軽くなっている。
 それを見て取ったサラサは、自分が一体現人神に関するどういった話があるのだろうと、清めに使っていた道具を片付けながら内心で首を傾けていた。

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 城の執務室で書類の整理をしていたリリカは、神殿で修行をしているはずのココロが慌てた様子で戻ってきたのを見て少しだけ目を丸くした。
「どうされたのですか? まだ修行している時間では?」
「そうなのですが、ちょっと別の事情が! リリカさん、助けてください!」
「はい?」
 突然のココロの言葉に、リリカは意味が分からずに首を傾げる。
 ココロもそれがわかっているので、きちんと最初から事情を話し始めた。

 ココロから話を聞いたリリカは、納得したように頷いた。
「・・・・・・なるほど。それで私に相談ですか」
「そうです。リリカさん、経験者だからわかりますよね?」
 期待するような視線をココロから向けられて、リリカは苦笑しながら頷いた。
「まあ、確かに経験者といえば経験者ですね。・・・・・・突然自分に加護を与えられる資格があると言われるのは」
 昔のことを思い出しながら目を細めていたリリカは、懐かしそうに笑みを浮かべた。
 そして、首を左右に振りながらあのときの思いをもう一度大切にしまったリリカは、まじめな顔になってココロを見た。
「ですが、あのときの私と今回のサラサさんの状況はだいぶ違っています。参考にできることもあるでしょうが、すべてが同じというわけにはいかないですよ?」
「それは、勿論です」
 ココロもそのことはわかっているので、しっかりと首を縦に振った。

 リリカはもともと巫女なので、加護を受け入れる余地というか、名誉に感じて受け入れる下地があった。
 だが、今回のサラサは、奴隷という立場であるにせよ、ごく普通の一般人である。
 神から加護を与えられる資格があると聞いて、どういった反応を見せるかは、リリカにも未知の世界なのだ。
「サラサさんには、普通の生活もあります。加護についてどう考えられるかは、ご本人次第ということになると思います」
「なるほど。ココロさんがそう思っていらっしゃるのであれば、それでいいかと思います」
「はい。お父様からは、無理に押し付けなくていいと言われていますから」
 ココロのその言葉に、リリカはクスリと笑った。
「現人神様らしいお言葉ですね」
「お父様ですから」
 ココロも短い一言に、リリカは今度こそくすくすと笑い出すのであった。

 
 約束通りの時間に城に着いたサラサは、ココロから話を聞いて驚きの表情を浮かべた。
 ここまで驚いたことは、久しくない。
「わ、私が、コウスケ様の加護を、ですか!?」
 思わず現人神ではなく名前呼びになっていたが、ココロもリリカも突っ込みはしなかった。
 考助がそんなことでは怒るような人物ではないし、サラサが長い間考助の奴隷として働いていたことも知っていた為だ。
 ちなみに、そのことはココロが先ほどリリカから聞くまで知らなかったが、リリカはシルヴィアから考助が直接の雇用主になっている奴隷たちがいることを聞いていた。
 ついでに、神殿を清めているときに、その話をしていたのも覚えていたのである。

 ココロもリリカも、驚きで固まってしまったサラサにそれ以上何かを言うことはしなかった。
 下手にこちらから何か言うよりも、落ち着くまで待った方がいいというのが、過去の経験によるリリカの推測だった。
 その推測が正しかったのか、一分ほど待っていると落ち着いてきたのかサラサがまっすぐにココロへと視線を向けてきた。
「もう少し詳しくお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「勿論です。といっても、私も話せることは少ないのですが・・・・・・」
 そう前置きをしたココロは、もう一度ゆっくりとサラサが考助の加護を受け取る資格を持っていることや、考助が加護を与えるべきかどうか、サラサ本人に決めてほしいと願っていることを話した。

 結局サラサはこの場では即答ができないといい、答えは後日ということになった。
 返答を急いでいたわけではないココロは、それに同意した。
 そして、この日から一週間がたったある日、サラサは考助から加護を与えてもらうことを了承することになるのであった。
サラサが考助の加護持ちとして加わることになりました。
ただし、一般人(?)であるサラサは、そのことを公表するつもりはありません。
考助もその辺りを縛るつもりは全くないので、好きにしていいというスタンスです。
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