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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7部 第1章 塔のあれこれ(その15)

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(6)とある方策

 訓練場から場所を移したフローリアたちは、席について落ち着いたところで再び話を再開した。
「さて、落ち着いたとことで話を戻すが、ソルは今までの間に何か思いつくことでもあったか?」
 そのフローリアの問いかけに、ソルは困ったような顔になった。
 一応ここに来るまでに考えていたのだが、どうしても思いつかなかったのだ。
 というよりも、この短時間で思いつけるのであれば、いままでさんざん悩んできたときに思いついていただろう。
 そのソルの顔を見て、フローリアは苦笑を返した。
「いや、何も責めているわけではないんだ。ソルの直接的な思考は、いい面もあるからな」
「そうじゃの。指導者としては得難い資質であるときもあるからの」
 特に戦闘に関しては、ソルの直感的でまっすぐな性格が、非常に有利に働くのだ。
 ついでにいえば、一度相手を認めれば、その言葉に耳を傾ける柔軟性もある。
 そうでなければ、わざわざこうしてフローリアに意見を聞きに来たりはしないだろう。
 また、そうであるからこそ、フローリアもソルから意見を求められるたびに、きちんと出来得る限りの答えを示しているのである。

 ソルがさんざん悩んだうえで自分のところに来ていることを察しているフローリアは、これ以上困らせるようなことはせず、あっさりと欲しがっていた答えを言った。
「言っただろう? ソルは直接的に物事考えすぎると。小鬼人ゴブリンたちの生活環境を整えてやりたいという気持ちはわかるが、いきなりそこに手をつけようとしても駄目なのだよ」
「・・・・・・え?」
「ゴブリンが駄目なら鬼人、鬼人でも駄目なら大鬼人と、寿命の長い者たちから手をつければいいじゃないか」
「いや、しかし・・・・・・」
 フローリアの説明に、ソルは戸惑った顔になった。
 いまフローリアが言ったことは、すでに実行しているのだ。
 その上で、ゴブリンのことをどうにかしたいというのがことの発端だった。

 ソルの戸惑いを見抜いたフローリアは、肩をすくめて答えた。
「忘れておるかもしれんが、ヒューマンとてこの世界に存在する種族の中では、決して寿命が長い種とはいえない。いやもちろん、ゴブリンに比べればはるかに長いのだがな」
 寿命が長い代表的な種族としてはエルフがあげられるが、アースガルドにはそれ以外にも長寿の種族はいる。
 全ての種族を含めれば、フローリアの言う通りヒューマンは決して寿命が長いとはいえないのである。
 それでもヒューマンは、世界の大地の上にこれだけの文明を築き上げてきた。
 それを考えれば、寿命だけが文明を築くうえで重要な要素であるとは言えない。
「その上で、何が言いたいのかといえば、ソルの着眼点は悪くはないのだよ?」
「・・・・・・えーと?」
「ゴブリン内での技術の継承をどうにかしたいと言っていただろう?」
「は、はい」
 短命なゴブリンでは、季節を含めた特に農業などの技術が開発しずらいといった問題がことの発端だった。
 だからこそ、寿命を上げたいという結論に達したのだ。

 先ほどソルに答えたように、フローリアにもゴブリンの寿命をすぐに上げる妙案など持っているはずもない。
 そんなものがあるのであれば、自分の塔にいるゴブリンたちに実践して試しているだろう。
「そこで先ほどの私の言葉に戻るんだが、まだ思いつかないか?」
「・・・・・・・・・・・・鬼人や大鬼人に任せる?」
 恐る恐ると言った感じで答えたソルに、フローリアはニコリと笑った。
 このようにソルも察しは悪くないのだ。
「そうとも。せっかくゴブリンがほぼ無条件にいうことを聞く上位種族がいるのだから、彼らに技術の開発などを任せてしまえばいい。その上でさらに生活環境を整えれば、少しずつ寿命も延びて行くだろう。あとはその繰り返しだ」
 最初にフローリアが、ソルに対して一足飛びに考えすぎると言ったのは、このことだった。
 結局のところ、劇的に変化を促す方策などなく、地道に変化していくことを期待するしかないのだ。
 また、ヒューマンの歴史もそうして発展してきたのである。
 大切なのは、積み重ねてきた技術を一代で後退させないことだ。
 さらに、ゴブリンたちの場合にもうひとつ気をつけなければならないことがある。
 それは、種族としての明確な差があるために、一番下に位置するゴブリンが隷属的な扱いを受けないようにしなければならないことだ。
 そうなってしまうと、ゴブリンの寿命を延ばすというそもそものソルの目的が果たせなくなってしまう可能性が高くなる。
 そうならないように見張るのは、より上位の種族で、最終的にはソルの役目ということになる。

「まあ、何が言いたいのかといえば、結局今までとやることは変わらないということだな」
 そう結論付けたフローリアに、ソルははっきりと肩を落とした。
「結局、上手い方策などないということですか」
「まあ、身も蓋もない言い方をするとそういうことだな」
 ソルの言葉にフローリアは特に怒ることなくそう答えたが、今度は今まで黙って話を聞いていたシュレインが口をはさんできた。
「本当にそう思うのかの?」
「え?」
「フローリアの今までの話に結構重要なヒントがあるのじゃが、ソルは気付いておらんのか?」
 シュレインのその言葉に、ソルは慌ててフローリアの顔を見た。
 だが、その表情は特に何も変化しておらず、そこから何かを読み取ろうとしてもできなかった。
 それよりも、シュレインに忠告されたソルは、今までの話で何か聞き漏らしたり、考え違いをしていることがなかったか、もう一度よく考えてみることにした。

 まず、ゴブリンの寿命は簡単に伸ばすことはできない。
 そして、技術の継承といった文明的なことは、より上位の種族に任せてしまう。
 ゴブリンの寿命を延ばすには、文明を発展させてより生活環境を整えればいい。
 色々な角度から先ほどフローリアから聞いた話を考え直していたソルだったが、ふとヒューマンについて話をしていたときのことを思い出した。
 ヒューマンがエルフや他の長寿の種族と違って、ここまで文明を発達させてきた理由のひとつに、それがあげられていた。
「あっ・・・・・・そうか。そういうことでしたか」
 そして、ソルがそのことに思い至ってそう呟くのを見ていたフローリアとシュレインは、同時に顔を見合わせて笑った。
 ソルはヒントさえ出せば、きちんと自分なりに答えを導き出すことができる能力があるのだ。
「思いついたかの?」
「決して個人個人が強いわけでもないヒューマンが、ここまで発展できたのは、決して種としての個体の能力が高かったからではないです」
「ほう? それでは、なぜここまでの大きな発展を遂げてきたんだ?」
 フローリアがそう言って、敢えてソルに質問を投げかける。
 ソルがきちんと正しい答えを導き出したのか、それを確認するためだ。
「ヒューマンが発展できたのは、他の長寿の種族よりも数が多かったから、ですね?」
 ソルのその答えに、フローリアはにやりと笑って頷いた。
「まあ、それがすべてではないが、おおむね間違ってはいないな」
 戦いをするにしても土地の上に町を作っていくにしても、高い文明を気付いていくには、どうしても数は必要になってくる。
 アースガルドの世界において、ヒューマンは突出して数の多い種族なのである。
 そして、それを生かして、これほどの文明を築いてきたのだ。

 それであるならば、それと同じようなことをゴブリンでも実践すればいい。
 今のゴブリンは、確かに出生率は落ちているが、決して産めなくなったわけではない。
 子供の生存率が高まったぶん、親となるゴブリンが多くの子を産まなくなっただけだ。
 それであるなら多くの子を産むような空気を里に作ればいいのだ。
 もともと多産の種族なのだから、それは難しいことではないはずだ。
 勿論、これが本当に正しい方策なのかどうかは、今は誰にもわからない。
 それでもかけてみる価値はあるだろう。
 そう考えたソルは、管理層に来たときとは違って、期待を胸に里へと戻るのであった。
というわけで、「産めよ増やせよ」でしたw
ソルは別に無理やりに出産を押し付けるつもりはありません。
単純なゴブリン(失礼w)のことですから、子供を産んだ分肉を増やすと言ったりすればいいと考えているくらいです。
勿論、具体的な方策はこれから部下ときちんと話し合っていくことになります。
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