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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7部 第1章 塔のあれこれ(その15)

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(1)嬉しい報告

祝!800話
 神具の騒動もひと段落して、管理層にいつもの日常が戻ってきてからしばらくのこと。
 トワがダニエラを伴って管理層にやってきた。
「・・・・・・父上。いくら寛ぐための部屋とはいえ、もう少ししっかりしてくれませんか?」
 すっかりだらけて休んでいる考助を見ながら、トワが呆れた顔でそう言ってきた。
 隣に立っているダニエラは、どんな顔をしていいのかと困ったような表情を浮かべている。
「ん? ああ、トワか。どうかした?」
 考助はソファに寝転がったまま、身を起こす様子も見せず視線だけをトワに向ける。
 態度を改める気がないと理解したトワは、ため息をついてから続けた。
「お話があるので来たのですが・・・・・・できれば、母上と一緒に」
 最後に付け加えられた言葉に、まじめな話だと分かった考助は、すぐに身を起こす。
「フローリアだったら、今の時間は訓練室で訓練していると思うけれど?」
「そうですか。私が、呼んできます」
「いや、僕が行ってくるからちょっと待ってて」
 何となくそうしたほうがいい気がした考助は、ソファから立ち上がってそう言った。
「そうですか。それではお願いします」
 それをみたトワは、そう言って一度だけ頷き部屋から出て行く考助を見送るのであった。

 最近のフローリアは、訓練室で頻繁に神具の劔を使った訓練をしている。
「うん? どうしたんだ? 訓練中に来るのは珍しいな」
 室内に入ってきた考助に気付いたフローリアが、舞を止めて聞いてきた。
 考助がこうしてフローリアの訓練中に入ってくるのは珍しいのである。
「邪魔してごめんね。なんかトワがダニエラと一緒に来ているから呼びに来た。なんか話があるって」
 考助がそう説明すると、フローリアが途端にまじめな顔になる。
「なるほど。分かった、少し汗を流してから向かうと言っておいてくれ」
「わかったよ」
 考助の言葉から何かあると感じたフローリアは、きちんと身支度を整えたほうがいいと判断してそう言った。
 訓練している最中で汗をかいているというのもあるが、わざわざふたりで来ていることから少しでも身を整えたほうがいいと考えたのである。
 考助もフローリアのそうした事情を察して、小さく頷いた。

 神剣を片付けて風呂場に向かったフローリアを確認した考助は、そのままくつろぎスペースへと戻った。
 先ほどのフローリアの言葉をトワに伝えないといけない。
 さほど時間が経っていたわけでもないので、考助がくつろぎスペースに戻ってもトワとダニエラはその場所で待っていた。
 ただ、トワはともかくダニエラは相変わらず慣れていないのか、緊張した様子で固まっている。
 ダニエラは、既にトワと結婚をして一国の王妃となっているのだが、未だに管理層に来ることにはなれていないようだった。
「フローリアは、少し身支度してから来るってさ。それよりも、場所を変えたほうがいいんじゃない?」
 ちらりと視線をダニエラに向けた考助に、トワは苦笑を返した。
「すみませんが、そうさせてもらいます」
「謝ることはないよ。会議室に行こうか」
「そうですね。少し待つことになるでしょうからそうさせてもらいます」
 考助とトワでさっさと話をまとめてしまって、ダニエラには口を挟む余地を与えなかった。
 下手にダニエラに選択肢を与えると、このままで待つと言いだすためである。
 こうしてダニエラは、考助とトワの親子の連係プレーによって有無を言わさず場所を移動することになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 身支度を整えたフローリアは、しっかりと訓練服ではなく、普段着に着替えてきた。
 考助が会議室にいるとダニエラが緊張しっぱなしになるので、考助とフローリアは一緒に会議室に入る。
 ふたりが入ってきたのを確認したトワとダニエラは、慌てた様子で立ち上がった。
 それをみたフローリアが、顔をしかめた。
「あのな。周りの目があるとことならともかく、家族しかいないところでそんなに緊張してどうする?」
「い、いえ、しかし・・・・・・」
「しかしもなにもあるものか。ダニエラは仕方ないにしても、お前はもっとしっかりすべきだぞ?」
 フローリアは、ふたりから要件を聞く前からなんとなくなぜここに来ているのかを察していた。
 口に出さないのは、考助がまったく気づいていないのと、きちんとトワの口から報告させるべきだと考えているためだ。

 フローリアの言葉に、トワは苦笑いをした。
 国王としてのトワは、年の割に威厳があると評判なのだが、母親フローリアを前にするとそれもまったく効かないのだ。
 もっとも、フローリアが女王として君臨していた期間のほうが長いのでそれも当然だが、そんなことは関係なしにトワはフローリアに頭が上がらない。
「確かにその通りですね。少し浮足立っていたようです」
「まあ、気持ちはわからないではないがな」
「えーと、どういうことなのかな?」
 何やらフローリアとトワがふたりで分かり合っているのを見て、考助はトワとダニエラが何の用事でここに来たのかをフローリアが察していると気付いていた。
 ただし、考助らしいところが、なぜ来ているのかわかっていないところだろう。
 フローリアに言わせれば、ふたり揃って改まってきているのだから気付かない方がおかしいのだが。

 顔を見合わせたフローリアとトワは、まずは座ろうと提案した。
 そして、すぐにトワが向かい合わせに座った考助に要件を切り出した。
「・・・・・・ダニエラが懐妊しました」
「懐妊? えっ!? ダニエラが!?」
「コウスケらしいといえばらしいが、本当に気付いていなかったのか」
 驚く考助を見て、フローリアが呆れたような表情になる。
 考助としては、なぜ気付けるんだというのが本音だが、それを言葉に出して言うといろいろと終わりそうだったので、とりあえずごまかすようにダニエラを見た。
「と、とにかくおめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
 全力で喜びを示した考助に、ダニエラがペコリと頭を下げた。

 考助とダニエラのやり取りを見てからフローリアがトワに視線を向けた。
「これで少しは周囲もおとなしくなるか?」
「さて、どうでしょうね。むしろ勧めてくる気もしますが」
 トワは一国の王で、何よりも跡継ぎが求められている。
 誰が、何を勧めてくるのかは、わかりきっていた。
 更には世継ぎとしてではなく、ダニエラだけに権力が集まるのを嫌う者もいる。
 そうした者たちは、第一夫人であるダニエラが妊娠しているからこそ、次の夫人候補を勧めて来たりする。
 自分の権力を高めるためとはいえ、一応国家の運営をしていく上では理に適っているので、断り難いというのが現状だった。
「だが、断るんだろう?」
 フローリアは、息子の顔を見てそう問いかけた。
 疑問形になっているが、フローリアの顔は確信しているようだった。

 そのフローリアの問いかけに、トワは苦笑を返す。
 どう頑張ってもこの母親には隠し事ができないと思ったのだ。
 そして、隣に座っているダニエラは、困ったような嬉しいような複雑な表情をしていた。
 ひとりの女性としてはうれしいのだが、国を支える夫人としては、トワの選択がいただけないということもわかっているのだ。
 何より、自分に夫人としての権力が集まれば、色々と困ることになるのは実家なのだから。
 ダニエラはダニエラで中々に複雑な立場にいたりするのである。
 そんなふたりを見比べたフローリアは、トワが何か言うよりも早く言葉を返した。
「まあ、お前の人生なんだから好きにすればいい。ただ、国をつぶすような真似だけは許さんが」
 フローリアは、ラゼクアマミヤは考助が作った国だと今でも思っている。
 いくらその考助の血を引く息子といえども、その国をつぶすような真似だけは絶対に認められない。
 いざとなれば、トワから王位を簒奪することもいとわないだろう。
 そして、それができるだけの力をフローリアが未だに有しているのも確かなのだ。
 現国王を前にしてそう言い切ったフローリアに、トワは神妙な顔で頷くのであった。
ダニエラ懐妊です。
これで考助もおじいちゃん(!)ですw
管理層のメンバーは全員が長寿になっているので、とてもそうは思えないのですがw
そして、最後にフローリアがトワにくぎを刺しました。
本文に書くのは初めてですが、実際にはフローリアは何度も同じことをトワに言っています。
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