挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 神具の力

800/1252

(7)神具の今後

 世界樹の妖精であるエセナは、基本的に表に出てくることはない。
 考助が名前を呼んだだけで出てくることができるのは、あくまでも両者の間で特別な関係が築かれているからである。
 さすがに本体である世界樹の麓で名前を呼べば気付けるのだが、そうでない場合は名前を呼んだとしても出てくることはない。
 そもそも世界樹の妖精でなくとも、全く別の場所で自分の名前が呼ばれたとしても気付くことができる存在など、ほとんどいないだろう。
 もしそれを可能にするためには、道具をつかったり魔法を使ったりして気付かせるようにすればいい。
 そして、今回エセナが勾玉に施した仕掛けは、自分の名前を呼べば気付くようにするためのものだった。
 勿論、勾玉を持ってさえいれば誰でも使えるようになっているわけではない。
「要するに、コレットかワンリが使えば、エセナが呼び出せるようになるということ?」
「はい。そうなります」
 ワンリが差し出した勾玉を見ながら聞いて考助に、エセナが頷いた。
「それって、大丈夫なの?」
「そもそもコレットかワンリにしか使えないようになっているので、特に問題はありません」
 考助としては、負担が大きくなるのではないかと考えての問いかけだったが、エセナ本人はあっさりとそう答えつつニッコリと笑顔を見せた。
「勿論、兄様は今まで通り普通に呼んでくださって構わないですからね?」
「そう? ありがとう」
 そう言いながらお互いに微笑み合う考助とエセナだったが、周囲の者たちが多少呆れたような顔をしていたことには気づいていなかった。

 今回エセナが勾玉に行った『調整』は、コレットとワンリがエセナを呼べるようになったことだけではない。
「それで? 世界樹から勾玉に力を渡せるようになったのは、大丈夫なの?」
 もともと勾玉は、世界樹の持つ力を欲しがっていた。
 その力がどのように使えるかは、今後の使用者、つまりコレットとワンリ次第ということになる。
 とにかく、その力がなければ勾玉も何もできない状態だったというわけだ。
 以前に考助の作った道具から渡した力だけでは、本来の勾玉の力を発揮できなかったのである。
「はい。問題ありません。神力そのものはすでに十分にあったので、あとは精霊に関する力だけでしたから」
「そう」
 エセナの説明に考助は、納得して頷いた。

 考えてみれば、勾玉はこの世界に落ちてきたときから精霊に関する力を使っていた。
 コレットやワンリが使う場合は、その力を世界樹を介して使う必要があったということになる。
「それにしても、世界樹の力が必要になるって、どういうことなんだろう?」
「正確には、私の力を必要とするのではなく、私を触媒のように使っているというのが正しいです」
 コレットやワンリでは、勾玉の力を直接使うのは難しい。
 そのため妖精が仲介することによって、簡単に力を引き出せるようになった。
 ただ、そのための妖精もその辺に漂っているものではだめで、よりふたりに近しいエセナの力が求められたというわけだった。
「なるほどね。これで、コレットとワンリは勾玉の力を使えるようになったというわけだ」
「はい」
 考助の言葉にエセナが頷いたが、それに対してコレットが待ったをかけた。
「ちょっと待って。エセナからその説明を受けていろいろ試したけれど、特に何も変わったことはないわよ?」
 そう言ったコレットの隣では、ワンリがコクコクと頷いている。
 ワンリから勾玉を受け取ったふたりは、さっそくとばかりにいろいろと試そうとしたのだが、当の勾玉は何の反応も示していない。
 それで使えるようになったと言われても、首を傾げざるを得ない。

 そんなふたりに対して、今度は考助が説明をした。
「ああ、それは単純にタイミングが悪いのか、ふたりが使い方をわかっていないのか、それとも他の何かあるのか、だよ。他のふたつの神具だってすぐに使えるようになったわけじゃないんだし」
 そもそも水鏡にしても劔にしても、神具として使いこなしているかといえば、そうではない。
 どちらも、ようやくそのための一歩を踏み出したというところだろう。
 そういう意味では、勾玉も同じような状態になったと言える。
 たとえ、使用者のふたりに実感がなかったとしても。

 とにかく、これで勾玉もようやく使うためのスタートラインに立てたといえる。
 この先、どうやって使っていくかは、今度こそコレットとワンリが見つけて行くことになる。
 それが具体的にどんな力なのかは、まだまだはっきりとはわかっていないのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 エセナから勾玉について話を聞いた日の夕食に、シュレインがぽつりと言ってきた。
「そういえば、吾だけ使える神具がなさそうなんじゃが?」
「え? そんなことないと思うけれど?」
 意外なことを言われたといった表情になった考助を見て、シュレインが目を見開いた。
「そうかの? 少なくとも吾は思い当たらないのじゃが?」
「あ~、そっか。最初のイメージが強すぎたからかな?」
「こら。ひとりで分かってないで説明してくれんかの?」
 ひとりで納得して頷く考助に、シュレインが催促をした。
「劔だよ劔。僕も最初は儀式のためだけに使うものだと思い込んでいたけれど、結局普通に剣としても使えるみたいだからね。そうなれば、シュレインにだって出番はあるんじゃない?」
 劔の神具は、主に使う用途としては儀式ということになるが、先日のフローリアの結果からも武器として使えることがわかっている。
 それであれば、十分にシュレインも使うことができる。
「それに、別にシュレインが儀式をしたっていいんじゃない? 別に儀式って舞だけに限られているわけじゃないし」
「・・・・・・ふむ。いわれてみれば、確かにそうかの?」
 考助の説明に、シュレインは納得して頷いた。

 ふたりの話を聞くとはなしに聞いていたフローリアが、今度は別の疑問を飛ばしてきた。
「そういえば、三つの神具はやはり繋がりがあると考えた方がいいのか?」
「うん? どういうこと?」
「劔が儀式で神力を発生させて、その神力を勾玉が溜めて、その溜まった神力を水鏡が使うというように見えるのだが?」
 フローリアの言葉に、考助が「ああ」と頷いた。
「まあ、偶然というのには無理があるよね。最初からそうだったのかはわからないけれど、間違いなく僕らが関わったからそうなったんだと思うよ?」
「そうか」
 今の三つの神具が、つながりがあることは疑いようもない事実だ。
 それが最初からそうだったのかどうかは、今更調べようもない。
 それに、調べたところで神具のありようが変わるわけでもないので、考助にとっては神具の成り立ちはあまり意味がない。
 それよりも、今後どんな力を発揮していくことになるかの方が重要だった。

 繋がりがあることによって、三つの神具が集まってどんなことができるかどうかはこれから調べなくてはならない。
 ただ、それを知るためには、ひとつひとつの神具がどう使えるのかをきちんとわかってないといけないのだ。
 それは今後の課題ということになる。
 とにかく、集まった三つの神具が今後どういう使われ方をしていくのか、考助は勿論、他の神々にもまだわかっていないのであった。
これにて神具にまつわる話は終わりになります。
長くなりましたが、とりあえず最初に書きたかったことはすべて書けた・・・・・・はずです。
明日からは、また塔の日常に戻ります。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ