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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 神具の力

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(5)感情のやりとり

 ピーチが見つけた水鏡の新しい使い方は、触れた者の過去を静止画として見ることができるというものだった。
 見ることができる過去が、実際にあった場面なのかどうかは、その時々によって変わってくるらしい。
 少なくとも考助が触れたときに見ることができた場面は、過去に起こった場面ではなく記憶そして残っていた風景の一場面という感じだった。
 それでも別世界の風景ということで、ピーチは興味深そうに見ていた。
 映っている場面が、高層ビルが立ち並ぶ街並みだったので、それも当然だろう。
 なぜその景色が選ばれたのかは、考助にもわからない。
 特に意識してその場面を思い出していたわけでもないので、どういう理屈で選ばれたのかは完全に不明である。
 どういう条件で映し出される場面が選択されて表示されるのか、色々なパターンで確認していかないとわからないこともあるだろう。
 それを調べて行くのは、水鏡の新たな力を引き出したピーチの課題ということになる。
 別に急いで調べる必要もないので、ピーチにはゆっくりと調べるように言ってから、考助は自分の研究室へと戻るのであった。

 ピーチが水鏡の新たな使い方を見つけてから数日後。
 今度はフローリアが考助のところに報告をしに来た。
「・・・・・・どうやら劔の感情が感じ取れるようになったようなんだが?」
「へえ? それは興味深いね」
「ただ、完全に言葉として分かるわけではなく、どちらかといえば飛龍たちとつながっているときと同じような感じだな」
「ああ、なるほど」
 考助たちが飛龍に乗るときは、お互いにある程度の感情を共有して乗っている。
 なぜか考助は最初からそれができていたが、他のメンバーは訓練によってできるようになっていた。
 フローリアの言葉では、劔の神具から得ることができる感情は、それに近いものということになる。
 言葉のやり取りに比べれば不完全だが、それでもお互いの感情がわかるというのは、大きな進歩だった。
 もっとも、それが今後の使い方にどんな影響を与えるかは全くの未知数なのだが。

 そんなことを考えていた考助だったが、ふと疑問が沸き上がってきた。
「ん? あれ? それって演舞している最中のこと?」
「ああ、そうだが?」
「邪魔にならないの?」
 考助の素朴な疑問に、フローリアは少し考え込むような表情になった。
「・・・・・・普段、私が舞うときは、周囲の情報を遮断しているのだが、こいつの場合はすんなりと入ってきていたな。邪魔になっているという意識は全くなかった」
「へー、そうなんだ」
 どういう理屈でそうなっているのかはわからないが、フローリアの邪魔になっていのであれば、いい関係なのだろう。

 それに、お互いの感情のやり取りができるようになったことには、もう一つの利点があった。
「そのお陰かどうかはわからないが、舞うたびにいちいち神力を発生しなくなったな」
「それは大きな進歩じゃない?」
 フローリアが劔を使って舞うと、そのたびに神力が発生していた。
 その発生した神力は、考助が作った神具に貯められて、さらにワンリが持つ勾玉に貯められるということが、何度か繰り返されていたのだ。
 それが無くなっただけでも、十分に意味がある。
 問題は、舞のときに発生していた神力が劔にとって何かの意味がある場合だ。
 外に漏れている以外に劔にも神力がたまっているとすれば、何かに使っている可能性もある。

 その辺りは、考助にもわかっていないので、きちんと調べていかなければならない。
 そのためにも、神力を垂れ流しするのではなく、できることなら神力が発生する量を調整できるようにしたいということが、最近のフローリアの課題だ。
「そうなんだがな。神力の調整となると、全く役に立たなくてな」
「あ~。それはそうかもね」
「ん? 理由が分かるのか?」
 自分ではまったく思いつかなかったので、フローリアは考助に興味深そうに聞いた。
「理由というか、多分だけれどその辺りは劔が調整しているんじゃなくて、フローリアの舞のせいなんだと思うよ?」
「なに? そうなのか?」
「断言はできないけれどね」
 考助にも、なぜフローリアの舞で神力が発生しているのかはわかっていない。
 あくまでも今の状況を考えて、そうなんだろうと予想しているだけである。

 考助の説明に、フローリアは悩ましい顔になった。
「そうはいっても、舞でどうやって調整するかなんてわからないぞ?」
「そうなんだよね」
 そもそも舞で神力を発生させることなど、だれも想定していないことなのだ。
 だからこそ、何も参考にできるものがないため、フローリアは手探りで探っていくしかない。
 ただ、それだとあまりにフローリアへの負担が重すぎる。
 そもそも演舞を舞うためには、相当の体力を使うため一日に何度も舞って調べるというわけにはいかない。

 悩ましい表情になっているフローリアを見た考助は、ふと思いついたように提案をした。
「せっかく劔と感情のやり取りができるようになったんだから、その辺りを相談してみれば?」
「相談? そんなことができるのか?」
 感情のやり取りができるからといって、そこまで細かい話ができるわけではない。
 そう思っていたフローリアの言葉だったが、考助は少し考えてから頷いた。
「曲がりなりにも神具の劔だからね。フローリアの言葉は、理解している可能性があるよ」
 フローリアの意図が劔に通じれば、何がやりたいかも分かるだろう。
 そうすれば、どうやってフローリアが舞えばいいかも感情のやり取りで教えてもらえる可能性もある。
 あくまでも考助の推測でしかないが、少なくともなんの手掛かりもない状態で続けて行くよりは、進展がありそうだとフローリアは納得した。
「ふむ。確かにそれはあり得そうだな。今度から試してみよう」
 フローリアは、女神たちを除けば、考助以上に神具に詳しい者はいないと考えている。
 たとえ推測であっても、それなりの根拠があるからこそ話していることはわかっていた。
 だからこそフローリアは、きちんと納得したうえで、そう返事をしたのであった。

 今後どうするかある程度の目標を得たフローリアは、ふと何かを思い出したような表情になった。
「そういえば、この神具は私以外には使えないのか?」
「うーん。それがねえ。シルヴィアとも話したけれど、微妙なところなんだよね」
 難しい顔になった考助に、フローリアが首を傾げた。
「というと?」
「その劔が、儀式によって神力を得ることができるのはほぼ間違いないんだけれど、それ以外に何か使い道はと聞かれるとね」
 当然ながら劔は剣の形をしている。
 これが通常の武器として使えるなら、他にも使いようがあるのだろうが、サムエルのときのことを考えると、迂闊なことはできない。
 剣の形をしている以上、武器以外に使い道を考えるのは、中々難しいのだ。
「なるほど。・・・・・・だったらその辺のことも聞いてみるか」
 もしかしたらフローリアであれば、武器としての使用も認めてくれるかもしれない。
 駄目なら駄目で、またそのとき考えればいいだけだ。

 考助との会話を終えたフローリアは、さっそく武器として使っていいかを劔に聞くと、劔からはあっさりと肯定の返事がきた。
 あまりにすんなり肯定されたので、逆にフローリアが驚いたくらいだ。
 フローリアがその話を考助にすると、考助もまた驚いていた。
 結局、サムエルのときに劔の機嫌が悪かったのは、本来の使い方をしてなかったうえに、扱い方も悪かったのだろうとあっさりと本質をついた結論を気付かずに出す考助とフローリアなのであった。
今回は劔に付いてでした。
そろそろ水鏡とか劔とか、一般名称でよぶとわけがわからなくなりそうです。
区別をつけるためにも、名前をつけようかと思ったり思わなかったり……。

長かった神具関係の話も次で終わりです。
そろそろ塔の日常の話も書きたいですからね。
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