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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 劔

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(13)降臨

 周囲が様々な反応を見せる中、舞っている当人はそれを確認することなく、ただひたすら舞に集中していた。
 持っている神剣は、当然のように使うのは初めてのことだが、特にフローリアが意識することなく勝手にいろいろな反応を見せている。
 これが意識を持った神具の効果かと驚くばかりだが、フローリアは、特殊効果(?)については神具に任せっきりでただただ舞い続けていた。
 舞っているときのフローリアは、周囲の様子は意識に入ってこないので、観客たちがどういった反応を示しているのかはわかっていない。
 そんな状態だったからこそ、シルヴィアや考助がどんな様子を見せているかもまったくわかっておらず、フローリアは最後まで踊りきることに集中していた。

 フローリアが舞っている舞は、個別の型はあっても最初から最後までの動きが決まっているわけではない。
 そのため、どういう踊りになるかは、そのときのフローリアの気分次第なのだ。
 そのために、フローリア自身にもそのときの踊りがどういう展開で進んでいくのかはわからない。
 だからこそ、神剣がどういう動きをしていて、どういう結果をもたらすことになるのかは、全く気付いていなかった。
 要するに、フローリア自身は、これから起こることを全く把握しておらず、何が起ころうとしているのか正確に把握していたのは、考助だけという状態だったのである。

 フローリアの舞が始まってから十分程度の時間が経っていた。
 その間舞に引き込まれていた観客も、ようやく会場の異変に気付き始めた。
 神剣が振るわれるたびに起きていた光の軌跡が消え去らずにその場に残るようになっていたのだ。
 そして、いよいよフローリアの舞が終わりを迎えたその瞬間、残っていた光の軌跡がさらに強い光を発した。
 見る者が見れば、その光の軌跡が魔法陣としての役目をはたしていることがわかっただろう。
「え? なんだ、これは?」
 ことを起こした当事者であるフローリアが呆ける中、その魔法陣がさらに強い光を発した。
 その光の強さに、会場中の者たちが腕や手で目を覆ってやり過ごす。
 そして、光が消え去ったあとの会場の上空には、三対六枚の翼を持つ者が出現していたのである。

 突如現れた代弁者に会場中が騒めく中、空中に浮かんでいるミツキが口を開いた。
 勿論、会場にいる者たちには、顔は見えないように魔法で細工をしてある。
「その神具の特性を生かした見事な舞を見させてもらいました」
 ミツキはそう言いながら右手をわずかに持ち上げてみせた。
 そこには、七色に輝く勾玉が握られている。
 観客たちにはその勾玉が何であるかはわからなかったが、輝いている光が、先ほどの魔法陣によって生じた光であることは理解できた。
 フローリアが舞うことによって神具から発生した力が、その勾玉に集められたのだ。
「次のあなたの舞が、どんな力を見せてくれるのか。・・・・・・楽しみにしておきます」
 ミツキは最後にそういって、音も無く消え去った。

 しばらくの間、代弁者の出現に驚いていた観客たちだったが、やがて一部の席から始まった拍手が会場中に広がって行った。
 その拍手の音を聞けば、先に行われた神殿のパフォーマンスと比べて、どちらが神具を持つにふさわしいのかは理解できる。
 もっとも、この会場にいた観客たちは、そんなことなど忘れてただひたすらに、舞を披露したフローリアへと惜しみない拍手を送るのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 先ほどまでの熱気が残ったままの闘技場にある部屋の一室に、今回の騒ぎの当事者であるシルヴィアとフローリア、そして神殿関係者が集まっていた。
 神殿関係者たちの顔を見れば、もはやどちらが勝者であるかなど言葉にする必要はない。
 ただ、それでもどうしてもとあることを聞いてみたかった神殿長が、シルヴィアに向かって口を開いた。
「ひとつ聞きたいのですが、いいかな?」
「・・・・・・なんでしょう?」
「いつから気付いていたのかな?」
 先日会ったときとは違って、オラースは取り繕った言葉遣いをやめていた。
 その心理としては、今回の件で負けを認めるのは仕方ないが、あくまでも神殿長としての立場を強調したいといったところだろう。

 そんなオラースに、シルヴィアは短く答えた。
「最初からですわ」
「何?」
「あなたたちが酒場に来る前、前の持ち主からこの神具を受け取ったときから知っておりました」
 正確にいえばその前から知っていたのだが、そんなことをわざわざ教えるつもりはシルヴィアにはない。
「・・・・・・そうか」
 オラースを含めた神殿関係者は、すでに神具を手に入れることは諦めているのか、それとも先ほど行われたフローリアの舞にあてられたのか、先日あったときの勢いはなくなっている。
 シルヴィアたちのことをたかが一冒険者と見下していたところがあるので、それだけショックが大きかったともいえる。

 それだけを言って口を閉ざしたオラースの代わりに、今度は神官長が問いかけてきた。
「なぜ分かったんだね?」
 その問いかけに、シルヴィアはまっすぐに神官長を見て答えた。
「貴方たちは最初から覚えていないのでしょうが、現人神は道具を司っている神の一柱ですよ?」
「それは・・・・・・」
「直接の神託を得られなくとも神から啓示を受ける方法など、あなたたちはいくらでもご存知でしょう。それとも私からの教えが必要ですか?」
 一冒険者と見下していた相手から教えを乞うという現実を指摘された神官長は、うっと言葉を詰まらせた。
 神官長としての立場でごまかそうとしていたが、結局のところ今シルヴィアが言ったことが本質なのだ。

 シルヴィアは、黙りこくったオラースと神官長を見て更に追い打ちをかけることにした。
「あなたたちは、信仰している神の立場を強調していましたが、私たちのような立場の者にとって重要なのは、信仰している神そのものではなく、自分自身の信仰心です。こんなことは基本中の基本でしょう」
 その言葉は、神具を手に入れるという目的だけにとらわれて、神々に問いかけるということをしていなかった神殿関係者を痛烈に批判するものだった。
 結果だけを見れば、見事にシルヴィアが神具を手に入れることになったのだ。
 この場に集まった神殿関係者から反論の言葉が出てくることはなかった。
「新しく出てきた神だと蔑むことよりも、あなたたちは自分たちの修行に励むことをお勧めいたします」
「シル、そこまでだ」
 流石にそろそろ止めたほうがいいだろうと判断したフローリアは、シルヴィアを愛称で呼んでストップをかけた。
 どうやらシルヴィアの以前からの怒りは、まだ継続していたようだった。
 フローリアに止められてハッとした表情を見せたシルヴィアは、一度首を左右に振ってから続けた。
「・・・・・・確かに、これ以上は言っても仕方ないですね。とにかく、この神具は私たちのものです」
 そう言って神剣に手を伸ばしたシルヴィアを、神殿関係者は誰も止めることはしなかった。

 
 シルヴィアとフローリアが部屋を出て行ってからしばらくして、オラースがぽつりとこぼした。
「・・・・・・言われてしまったな」
「・・・・・・手を回しますか?」
 明らかに気の乗らない様子で、祭司長がシルヴィアに対して何かの手を打つか確認してきた。
 神殿の組織として言われっぱなしではいかないということでの発言だったが、オラースは首を左右に振った。
 どういう流れで闘技場でのパフォーマンスを行ったのか、すでに町の人々には知れ渡っている。
 こんな状況でシルヴィアに対するおかしな噂を流したとしても、神殿側のやっかみだと思われるのがおちだ。
 祭司長が気の乗らない表情をしているのも、そうした事情があるためだろう。
 それに、オラースは何となくだが、シルヴィアの正体に気付きかけていた。
 下手につつけば、それこそ藪をつつけば・・・・・・になりかねない。
 それよりも、彼女の言葉に耳を傾けたほうがいいだろう。
 何しろ、今の世界で神々に一番近い巫女といわれている存在なのだから。
 オラースは、最後に様々な思いを込めて、大きくため息をつくのであった。
久しぶりのミツキの見せ場でした。
スピカを始めとした女神さまの降臨を予想された方も結構いるのではないでしょうか?
ほんの数行しかないじゃないか! という突っ込みはなしでお願いしますw
これで神殿とのやり取りも終わりです。
この章も次の話で終わりになると思います。
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