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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 劔

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(12)演武(舞)

 シルヴィアの演奏する笛の音が会場に響いて少ししてから、フローリアは剣を持って舞を始めた。
 これからフローリアが舞おうとしているのは、剣を使う演武とはいえ戦いのときのような激しい動きを伴ったものではない。
 むしろ、舞のほうが強調されていて、ほとんどの動きはゆったりとしたものだった。
 だが、最初は神殿側が見せた激しい戦いを期待してがっかりしていた観客だったが、そんな雰囲気は一瞬にして吹き飛んだ。
 それというもの、フローリアの見せるひとつひとつの動作が、見ている者たちを魅せるようなものだったためだ。
 加えて、フローリアの持っている神剣も、その舞に合わせるように光り輝いている。
 フローリアが剣を動かせば、その動きに合わせて光の軌跡が走り、その周囲に様々な色の小さな光が舞い散る。
 舞が行われているのが昼間にもかかわらず、その光の乱舞は、観客席からはっきりと確認できた。
 その光がより一層フローリアの舞をより神秘的に魅せていた。

 フローリアの演武は、基本的にゆったりとした動きであるが、ときには通常の戦いと同様に激しい動きを繰り出すこともある。
 その剣の動きを見ていた観客たちの中にいる幾人かの強者たちは、その鋭さに内心でうめき声をあげていた。
 フローリアが、通常の戦闘を行ったとしても非常に強いということがその剣の振りだけで理解できたのだ。
 その中のひとりには、先ほどまで神剣を使って戦っていた神官戦士も含まれている。
「・・・・・・これは駄目だな」
 自分と戦った場合に勝てる見込みがないと悟って、神官戦士はそう呟いた。
 さらに神官戦士は、ときに儀式用の剣を持って信者たちに演武を見せることもある。
 目の前で行われている舞を見れば、先ほどまでに自分が握っていた剣が実戦用ではなく儀式用だということは、はっきりと理解できた。
 話が違うと文句のひとつでも言いたいところだが、そもそも剣を持った時点で気付くことができなかった自分も駄目なのだ。
 神官としても戦士としても勝てないと理解できた神官戦士は、目の前で行われる舞を見ながら感嘆のため息をつくのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 フローリアの舞は、神官戦士を始めとして多くの観客たちの魅了していた。
 その中には、当然のように考助たちの姿もあった。
 管理層の女性陣は勿論、考助から連絡を受けて駆け付けたドリア夫妻、考助の子供たち全員も駆け付けていた。
「あれが、母上、ですか」
 目立たない格好で観客に紛れながら舞を見ていたトワが、若干呆然とした表情でそう言った。
 彼の隣で見ているミアやリクもトワと同じような顔になっている。
「驚いたかい?」
 自分の孫の呟きに、アレクが楽し気な表情になった。
 勿論、視線はフローリアから外していない。
「昔は周囲の反応を気にして表で踊ることはなかったし、女王になってからは、舞を披露する機会なんてなかっただろうからね。見たことがないのも仕方ないか」
 アレクが言った通り、実は子供たちは、一度もフローリアが舞を披露するところを見たことがなかった。
 それどころか、舞を舞えるという話も聞いたことがなかったのだ。
 それは、フローリア自身が言わなかったこともあるし、周囲の者たちも自分たちがいうことではないと思っていたせいでもある。
 おかげで、フローリアの意外な(?)特技については、今の今まで知る機会がなかったのだ。

「フローリアお母様、綺麗ですね~」
「うん」
 フローリアの子供であるトワたちとは対照的に、シルヴィアの子供であるココロとルカは、比較的冷静にフローリアの舞を堪能していた。
 他の三人と比べて冷静なのは、舞を舞っているのがフローリアであることと、シルヴィアの笛はふたりとも何度も聞いたことがあるからだ。
 特にココロは、シルヴィアと同じように儀式で用いられる楽器は一通り叩き込まれている。
 だからこそ、ココロはシルヴィアの実力はよく知っていた。
「お母様もさすがですね」
「今日はいつもより上手な気がする」
 何度かシルヴィアの吹く笛の音を聞いたことがあるルカが、シルヴィアを見ながらそう言った。
「そうですね。いつもよりも気合が入っているようです」
 ちらりと考助を見ながらココロがルカに答えた。
 ココロは、シルヴィアがいつもよりも気合が入っている理由に気付いているのである。

 考助は、そんな子供たちの様子をほほえましく見ていたが、フローリアの舞が進むにつれてだんだんと表情が厳しくなっていった。
「主様」
 考助の様子を見て、コウヒもそのことに気づいたのか思わずといった感じで名前を呼んだ。
 コウヒの隣に座っているミツキも、同じように考助を見ている。
「う~ん・・・・・・。これは、まずいかな?」
「コウスケ? 一体何が・・・・・・?」
 遅れて三人の様子に気付いたシュレインが聞いてきたが、考助はそれに答えずミツキを見た。
「ミツキ、申し訳ないけれど・・・・・・」
 そう前置きをしてからミツキに幾つかの指示を出した。
 セイチュンではコウヒを表に出すのは目立ちすぎるので、ミツキを使うのが一番いいのだ。
「・・・・・・わかったわ」
 考助の指示を頷きながら聞いていたミツキが頷き、珍しいことに若干慌てた様子で席を立った。

 慌ただしく立ち去って行ったミツキを見送ったコレットが、首を傾げながら考助に聞いた。
「何かあったの?」
「いや、何かあったというか、これから何かが起こるというか。とにかく見ていれば分かるよ」
 今は話をするよりもフローリアの持つ神具の様子を見ることが重要だと考えた考助は、フローリアの舞を注視した。
 それを見たコレットは、肩をすくめてこれ以上聞くのをやめた。
 何かが起こっているのは分かっているが、ミツキを使って何か対処しようとしていることはわかる。
 余計な質問をすることによって、それを邪魔するような真似をするつもりはないのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助たちの次に異変に気付いたのは、やはりというべきか、シルヴィアだった。
 フローリアの持つ神剣が、舞によって光の軌跡を描いていることは、だれにでも見た目で分かる。
 その軌跡がただの光では無かったのは、ただの偶然なのかそれとも必然なのかはシルヴィアにもわからない。
 ただ、少なくとも舞を舞っているフローリアは、それを意識していたわけではないことだけは確かだった。

 シルヴィアは、フローリアの舞を止めるべきか、それともこのまま続けるべきか判断に迫られることになった。
 もし止める場合は、今自分が吹いている笛の音を止めれば、フローリアも適当なところで切り上げることはわかっている。
 どうするべきか悩んだシルヴィアは、視線を考助へと向けた。
 シルヴィアが考助に視線を向けた丁度そのとき、ミツキがどこかへといなくなるのを見つけた。
 そのあとに考助が小さく頷くのを確認したシルヴィアは、そのまま演奏を続けることを決断した。
 今の中途半端な状態で曲をやめて、逆におかしなことが起こる可能性も考えてのことだ。
 それは、考助がわざわざミツキを動かしたことからも分かる。
 途中でやめた方がいいのなら、そういう指示が神力念話で飛んできてもおかしくはない。
 そこまで考えたシルヴィアは、しっかりと今の儀式を終わらせるべく、最後まで笛の音を奏でるのであった。
演武なのか舞なのかよくわからないタイトルになってしまいました><
とにかく、フローリアの見せ場です!
この見せ場を書きたいがために、三つめの剣をわざわざ劔にしたといっても過言ではありませんw
サムエルなんていなかったんや。(ボソッ)
フローリアが何をやらかそうとしているのかは、次話になります。
ちなみに、余談ですがコウヒは素顔をさらしていませんw
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