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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 劔

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(10)隠された特技

 管理層に戻ったシルヴィアたちは、セイチュンで起こったことを考助へ話した。
「・・・・・・というわけで、神具の所有権をめぐって争うことになりました」
「へー。そうなんだ。まあ、いいんじゃない?」
 シルヴィアから簡単に話を聞いた考助の返事も、そんな呑気なものだった。
 話を聞く限りでは神殿が神剣をどう扱おうとしているかは分かるし、それであるならば劔がどう判断するかは考えなくてもわかる。
 シルヴィアがそこまで考えて勝負を受けたことも理解できるので、特にそのことに関して口を挟むつもりはない。
 それよりも、サムエルから神具を取り上げたことにより、暴走の危険が少しでも減ったことのほうが重要だった。
「それで? シルヴィアは神具をどうやって使うのか、考えてあるの?」
 今回の神具である劔は、儀式用であることはわかっている。
 それならば、どう使うかは考助よりもシルヴィアのほうが詳しかったりする。
 一口に儀式といっても、使い方は様々なものがある。

 考助の問いかけに、シルヴィアがひとつ頷いてから答えた。
「はい。せっかくですから、フローリアに使ってもらおうと考えています」
「フローリアに? なるほどねえ」
「何!? 私にか?」
 シルヴィアの答えを聞いたときの考助とフローリアの反応が対照的だった。
 考助は納得して頷き、フローリアは驚きの表情になっている。
 フローリアは、セイチュンでシルヴィアと神殿のやり取りを見ていたが、自分が参加することになるとは聞いていなかったのである。
 納得している考助は、一度神具を直接手で触れているという理由から、確かにフローリアが良いと判断した。
 儀式も、フローリアが行うことには、何の問題もない。
 考助には、シルヴィアがフローリアに何の儀式を行わせようとしているのかもわかっていた。

 一方でフローリアは、考助とシルヴィアがわかり合っているのを見て、首を傾げる。
 フローリアは、儀式を見る側になったことはあっても、参加する側になったことは一度もないのだ。
「一体、私に何をさせようとしているんだ?」
「別に慣れないことをしてもらおうと思っているわけではありませんわ。どちらかといえば、メンバーの中では一番フローリアが適任だと思っただけです」
 シルヴィアの説明に、考助も同意するように頷いた。
「そうだね。確かにフローリアが一番適任だね」
「一体私に何を・・・・・・ん? まてよ? ・・・・・・まさか?」
 剣を使った儀式で自分が得意と考えたフローリアは、なにか思い当たることがある顔になった。
 そのフローリアの顔を見て、シルヴィアがコクリと頷いた。
「おそらくそれであっていると思いますよ?」
「む。・・・・・・むむ。いや、しかし、本当にそれでいいのか?」
「むしろ剣を使った儀式では、これ以上のものはないと思うのですが?」
 小さく首を傾げたシルヴィアに、考助も頷いた。
「だよね」
「せっかくですから、コウスケ様に向けての儀式にしましょう」
「うぇっ!? そうなるの?」
 まさか自分に水を向けられると思っていなかった考助は、目をむいてシルヴィアを見た。
 考助から視線を向けられたシルヴィアは、もう一度コクリと頷いてフローリアを確認した。
「その理由は、フローリアのほうがよくわかっていますよね?」
「いやまあ、そうなんだがな?」
 シルヴィアが未だにセイチュンの神殿関係者から言われたことを根に持っていることは、フローリアにもわかっている。
 まさかそのとばっちりが、自分に来るとはフローリアは考えていなかった。

 そんなフローリアのところに考助が近寄って、シルヴィアに聞こえないようにそっと聞いた。
「・・・・・・何か、シルヴィアが怒っているみたいだけれど?」
「あー、やはりわかるか?」
「それはまあね。というか、あの状態のシルヴィアを見て気付かない方がどうかしていると思うけれど?」
 何やら静かに闘志を燃やしているシルヴィアを見ながら、考助がそう言った。
「ふむ。確かにそうだな。だが、まあ、何があったかは聞かない方がいいと思うぞ?」
 今は考助がいるために、当然ながらコウヒがそばについている。
 この状況で、セイチュンで何を言われたのかといったら、どういうことになるか分かったものではない。
 何となくフローリアの言い方で事情を察した考助は、深く頷くだけで止めておくのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 その日の夕食の席で、一通りの話を聞いたシュレインが首を傾げながら聞いた。
「それで? 結局シルヴィアは、フローリアに何をさせるつもりなのじゃ?」
「演武ですわ」
 短く答えたシルヴィアに、問いかけたシュレインが納得したような表情になった。
「ああ、なるほど。それは確かに、フローリアが適任じゃの」
 演武は、祭りなどの催しでパフォーマンスの一種として演じられることもあるが、本来は神に捧げる儀式である。
 シュレインも演武をやれといわれればできなくはないが、人々に魅せるという意味では、フローリアのほうが一枚も二枚も上手だ。
 何より、
「やっぱりそう思うよね。やっぱり僕も見に行こうかな」
 と、演武を捧げられる本人である考助が、楽しみにしていることが、何より一番重要だった。

 考助たちは、何度かフローリアが余興で行った演武を見たことがある。
 本人が恥ずかしがって、頻繁にやってくれるというわけではないのだが、やはり幼少のころから踊りや演奏などの芸術に関わる基礎の教育を受けてきただけあって、それは見事な舞なのだ。
 その舞が見られるとなれば、考助が楽しみにするのも当然といえる。
「それはいいの。どうせだったらコレットやピーチにも声をかけておこうかの」
 そのふたりもフローリアの舞は見たがると思ってシュレインがそう言ったが、演武を行う当人は若干慌てた顔になる。
「いや、ちょっと待て。そこまで大事にする必要があるか?」
 管理層のメンバー全員が、揃って外に出ることなどほとんどない。
 フローリアにしてみれば、そこまでするほどのことか、という思いだったのだが他の者たちは首を左右に振った。
「大事とかそういうことではなく、フローリアの舞が見られなかったとふたりが知ったらがっかりするじゃろうからの」
「そうですわね。しかも、今回は儀式ということで、しっかりと身を整えていただく予定ですから」
 シルヴィアの言葉は、普段着で踊るのではなく、ちゃんとした衣装を身に纏うということだ。
「それはますます、きちんと伝えておかないと怒られそうだね」
 その矛先が真っ先に自分に来そうだと察した考助が、真剣な表情になって頷いた。

 考助たちの顔色を窺っていたフローリアは、内心で焦りまくっていた。
 勿論、神具を手に入れるために演武を見せろというのであれば、それは構わない。
 ただ、まさか全員が揃ってくるほどの騒ぎになるとは考えていなかったのだ。
 これには、フローリアが考えている舞の実力と周囲の受けている印象の差がある。
 というのは、フローリアがまだフロレス王国にいたころに、加護のこともあり、その舞の実力が表に出ないようにアレクが周囲に隠していたのだ。
 そのため、フローリアの舞のことを知っているのは、教師を含めたごく限られた者しかいなかった。
 そんな環境で実力を伸ばしてきたため、フローリアは自分の実力を正確に知ることがないまま管理層に来ることになったのである。
 結果として、今でもフローリアは、あくまでも趣味の範囲でしかないと思い込んでいるわけだった。

 そんなフローリアを余所に、考助たちは誰に知らせるべきかと話し合っている。
 そして、最終的には子供たちを含めた全員に知らせようということに決まるのであった。
フローリアの隠された特技でした。
フローリアが舞を習っていたのは、当然というべきか、加護をもらっているスピカに捧げるためです。
実は色々な舞を踊れたりしますが、一番得意なのが剣を使った演武です。
どんな演武かは、次かその次の話でお披露目する予定です。
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