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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔の地脈の力を使ってみよう

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(15) セシルとアリサ

閑話にしようかと思いましたが、一応本編ということにします。
 セシルは多少緊張した面持ちで、とある部屋のドアをノックした。
 先ほどまでは、いつも通り事務処理の業務をこなしていた。
 しかし、突然リラアマミヤのトップであるワーヒドに呼ばれたのだ。
 クラウンが立ち上がったばかりのころならともかく、現在ワーヒドが一般の従業員に関わるのはほとんどまれだ。
 セシル自身がワーヒドと直接対面したのは、ケネルセンの奴隷商館で、それ以来の対面になる。
 そのためにセシルが緊張しているのは、突然首(奴隷商館に戻される)になったりするのか、などと考えているからだ。
 奴隷である彼女にとって、リラアマミヤでの労働は非常にいい環境だった。
 とてもではないが、他に移籍になったとしてもこれ以上の場所は無いと思っていた。
 だからこそ、もう一度奴隷商館へ戻されるなんてことは、勘弁してほしいとおもっているのだった。

「入ってください」
 部屋の中から男性の声が聞こえて来た。
 恐らくワーヒドだろう。
 失礼にならない程度の速さでドアを開けて、すぐに頭を下げた。
「失礼します。セシルです。・・・・・・えっ!?」
 挨拶をしたセシルは、思わず驚いて声をあげてしまった。
 思ってもいなかった攻撃(?)が、横から来たのである。
 八歳ほどの少女が、横から抱き付いてきたのだ。
「セシルおねーちゃん・・・?」
「・・・えっ! ええ!?」
 現在のセシルに、姉妹はいない。
 なので、このような年頃の姉妹はいないはずなのだ。
 戸惑うセシルと彼女に抱き着いている少女に向かって、女性の笑い声が聞こえて来た。
「クスクス。・・・ワンリ、彼女が驚いているから、こちらへ戻りなさい」
「ハーイ」
 女性に言われて、ワンリと呼ばれた少女は、素直に彼女の方へと戻って(?)行った。
 そちらには、その女性とワーヒドが立っていた。
「驚かせて申し訳ありません。私はシルヴィア。貴方に抱き付いたのがワンリですわ。・・・とりあえず、お座りになって」
「初めまして、セシルと言います。・・・失礼します」
 一応ワーヒドの方を見て、彼が頷くのを確認してからセシルはソファーに腰かけた。
 本来ならば、奴隷がこのようなソファーに腰かけるなどとんでもない、と言うべきなのだろうが(商館ではそう教わった)、リラアマミヤでは逆にそれを言うと余計面倒になる。
 リラアマミヤでは、奴隷だろうとそうでなかろうと、扱いは同じなのである。
 ソファーに座ったセシルだったが、数人が座れるソファーだったので、左右が開いていた。
 その右側に、なぜかワンリがちょこんと腰かけた。
「・・・・・・問題ないようですね」
「そうですわね」
 その様子を見て、ワーヒドとシルヴィアが頷き合っていた。
「・・・・・・ええと?」
 ワンリに右手を取られながら、セシルが疑問の表情を浮かべた。
「ああ、申し訳ない。君には、これから新しい仕事に就いてもらおうと思っていたんだが、その仕事先は、どうしても彼女と関わる必要があってね。その相性を調べさせてもらったんだ」
 ワーヒドが、セシルに対してそうフォローした。
「・・・新しい仕事、ですか?」
「そうだ」
「具体的に言いますと、神殿の維持管理、ですわ」
 巫女服を着ているシルヴィアが、そう補足した。
「・・・神殿の、ですか? ・・・私は、巫女修行などしたことはございませんが?」
「いや、そうではない。どこかの神殿に、巫女として仕える、というわけではなく、単純に建物が傷まないように、掃除などをしてほしいんだよ」
 益々意味が分からなくなったセシルだったが、ワーヒドが具体的に説明をし始めた。
 塔のある階層に、ワンリが住んでいる神殿がある。
 その神殿だが、かなりの大きさがあって、ワンリ一人では掃除などの管理をするのが厳しいので、その手伝いをしてほしいとのことだった。
 話を聞く限りでは、特に断る理由が無いので、その話を受けるセシルであった。

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 話を受けたセシルは、すぐに神殿へ向かうのではなく、しばらくの間待たされていた。
 理由は、アリサと言うもう一人の奴隷の面接を行っていたからだった。
 アリサもその話を受けたようで、しばらく準備があるからと待たされた部屋の中で、雑談をしていた。
「・・・準備出来たってー」
 突然、ワンリが部屋に入ってきて、二人の手を引っ張った。
 ワンリはそのまま手をつないで、ワーヒドとシルヴィアがいる場所へと連れて行く。
 そもそも現在いる場所は、限られた者しか出入りできない場所である。
 その場所のさらに奥の部屋に連れて行かれると、そこにはワーヒドとシルヴィアが待っていた。
 その中央には、見慣れた転移門があった。
 そこを通って行くということなのだろう。
「今後は、ここを通って日用品などをそろえて行くことになるので、覚えておきなさい」
「この門は、許可された者しか通しませんわ。知り合いなどを通そうと思ってもできませんので、気を付けてください」
 もし無断で通そうとすると、塔の管理者へと連絡が行くようになっているとのことだった。
 その話を聞いたセシルとアリサは、神妙な顔で頷いた。
 二人の転移門の使用は、特に制限はされていないので、自由に出入りできるとのことである。

 ワーヒドが来るのはこの部屋までということで、そこから先は四人で向かうことになった。
 転移先は、先程とはまた違った趣がある部屋になっていた。
 その部屋からまずは外へ向かい、外観を見た二人は、セントラル大陸の街にある一般的にある神殿とは違った造りとその大きさに驚いた。
 正確には、神殿ではなく神社なのだが、残念ながら二人にはその知識は無かったのである。
 大きさに関しても、そもそもワンリ一人で管理が無理だというのが納得のレベルの大きさだった。
 というよりも、二人が加わっても部屋の掃除をするだけだけでも手が回らないような大きさである。
 セシルがそう申し出ると、シルヴィアから返ってきた答えは、
「大丈夫ですわ。そもそもお客様などを迎えるわけではないので、建物が傷まないように維持できればいいのですわ」
 というものだった。
 とはいえ、手を抜けばすぐに不適格としてまた奴隷商館に戻されると思っている二人は、手を抜くつもりはないのだが。
 結局、二人で話し合って五日ほどを掛けて、全ての部屋を掃除できるようにローテーションを組むのである。
 さらに、この神社は結界で覆われていて、その結界内にはモンスターは侵入することは無いということだった。
 冒険者のような戦闘能力がない二人は、その話を聞いて安堵したのは言うまでもないことであった。

 外の見回りから戻った二人をさらに驚かせたのが、ワンリであった。
 突然服を脱ぎだしたワンリに首を傾げていると、次の瞬間には一匹の狐になっていたのである。
 一瞬身を竦めた二人に、シルヴィアがフォローを入れた。
「驚くのも無理はありませんが、その狐は間違いなく先ほどのワンリですわ。襲うことはありませんから安心してください」
 シルヴィアがそう言って、狐姿になったワンリを撫でた。
 同じように撫でるように言われた二人は、恐る恐るワンリに近づいて行って首筋の当たりをそっと触れてみた。
「・・・・・・キャッ!?」
 セシルが首筋を撫でると、ワンリがセシルの頬をぺろりと舐めて来た。
 それだけで先ほどまでセシルの中にあった警戒感が、無くなってしまった。
 ワンリは、次に同じようにアリサの頬を舐めた。
 セシルの様子を見ていたアリサが、同じように悲鳴を上げることは無かったが、くすぐったそうに笑い声をあげていた。
「や、ワンリ、ちょっと待って。くすぐったいから・・・!」
 あっという間に、慣れてしまった二人に、シルヴィアが安堵した表情を見せたのには気づいてなかった二人である。
 相手がモンスターだと分かると、どうしても身構えてしまう人も多いのだが、この二人はそうではないようなので、安堵したのである。
「もう、大丈夫そうですわね。一応、生活に必要な物は揃えているけれど、足りない物があったら買い揃えていいですわ」
 そう言ってきたシルヴィアに、慌てて姿勢を正して返事をした二人であった。
 この後は、いくつかの注意点を伝えて、シルヴィアはこの場を去って行ったのである。

 ちなみに、セシルとアリサはこの後、神社に集まってくる多種多様な精霊たちに触れて、精霊使いとしての力を発現することになるのであった。
2014/5/24 誤字脱字修正
2014/6/14 誤字修正
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