挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 勾玉

776/1216

(15)檻

 考助がセウリの森にある結界を使って神具に仕掛けたことは、主にふたつある。
 ひとつは、神具を結界から外に出ないようにするものだ。
 神域から飛び込んできたときに、結界に干渉して大幅な修正を行った神具だが、その力をつかってこの仕掛けを通り抜けることはできないようになっている。
 なぜならこの仕掛けは、神具が力を使えば使うほど、結界の力を強化するようになっているためである。
 さらに、おまけとして結界内で移動する神具の場所を常に捕捉するものまである。
 これのおかげで、ユッタが精霊を使って常に神具を捕捉する必要はなくなった。
 ついでに、神具はセウリの森から抜け出ることができずに、半永久的に森の中をさまようことになる。
 さらにもうひとつの機能は、神具の周りで動いている力の動きを監視する能力だ。
 具体的にいうと、神具が力を蓄えようとしているのか、あるいはどれくらいの力をため込んでいるのかを確認することができる。
 これによって、神具が力を蓄えているのではないか、という考助の推測を裏付けることができる。

 考助からこれらの話を聞いたフローリアが、若干呆れたような顔になっていた。
「こんな便利なものが作れるのなら、最初から作っておけばよかったんじゃないのか?」
「ああ、うん。それは確かに、そうだよね」
 同意しつつも微妙に視線を逸らしてごまかすということをやってのけた考助を見て、フローリアがジト目になった。
「・・・・・・忘れていたのか?」
「いや、違うって。忘れていたわけじゃなく、単に思いつかなかっ・・・・・・あっ」
 思わず流れで真実を暴露しそうになった考助が、慌てて言葉を止めようとしたが、すでに遅かった。
 一度出てしまった言葉は、元に戻すことはできない。

 フローリアは完全にそっぽを向いた考助を見て、ため息をついた。
「・・・・・・まあ、この先幾分かやりやすくなったのは間違いないからいいのだが」
「そ、そうですよ。コウスケさんのうっかりは今に始まった・・・・・・あっ」
 考助のフォローしようとしたシルヴィアが、珍しくフォローにならないことを言いかけて、手で口を押さえた。
 それを見た考助は、すっくと立ちあがって部屋の隅っこにしゃがみ込んだ。
「いいんだ。どうせ、僕はうっかり者ですよ・・・・・・」
 そう言っていじけた様子を見たフローリアとシルヴィアは、顔を見合わせてシュレインを見た。
 ふたりからの視線を受けたシュレインは、小さく笑ってからコクリと頷き、考助のところへと寄っていく。
「まあ、そう言うな。コウスケにもいっぱいいいところはあるじゃろ?」
「・・・・・・・・・・・・そうかな?」
「そうじゃとも」
「・・・・・・例えば?」
「た、例えば? そ、そうじゃの。例えば、血が美味じゃとか?」
 思わずと言った感じで言葉にしてしまったシュレインだったが、それを聞いた考助はジト目で傍にいた彼女を見る。
「・・・・・・それって、シュレインにとってのいいところだと思うんだけれど?」
「う、うむ。そうじゃの。だが、それで何か問題があるのかの?」
 開き直ってそう言ったシュレインを確認して、考助はクスリと笑った。
「いやまあ、うん。確かに問題はない、かな?」
「じゃろう?」
 自信を持って頷くシュレインを見ながら、考助は落ちていたテンションを回復させるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助のうっかりはともかくとして、そんなやり取りを経たあとに、シュレインたちは神具への楔を見事に打ち込むことに成功したというわけだ。
 作戦が成功したことを聞いた考助は、ホッとした表情を見せた。
 実際に現場に行くことができなかったので、きちんと作った道具が動くかどうか不安があったのだ。
「そうか。成功したんだね。よかった」
「ああ。あれ以上近寄っていたら気付かれていた可能性もあったがの。まったくこちらに気付く様子もなかったからの」
 あれで成功しなかったら逆に申し訳ない、と続けたシュレインに、考助は首を左右に振った。
「初めから失敗するとわかっている道具を作ったら、それは製作者のミスだからね。今回は狼(と神具)が相手なのはわかっているんだから、ある程度近寄っても大丈夫な範囲は予想できるから。それにもともとある結界を使っているからさほど大げさな仕掛けも必要なかったしね」
 セウリの森にある結界なしで、同じような効果を持つ道具を作ろうとすれば、かなり大掛かりなものが必要になるが、それが無かった分小さな道具だけですんだ。
 それもまた、今回の作戦の成功に一役かったといえる。

 とりあえず神具に楔を打ち込むことに成功したわけだが、このあとのことは話していない。
 どうするのかと疑問に思ったシュレインが聞いていた。
「それで、このあとはどうするのじゃ?」
「うん? どうもしないよ。そもそもあの仕掛けは、神具を森の中に封じ込めるためのものだし」
 もともとは、神具の位置捕捉と封じ込めができないかと考えて作ったものだ。
 力の蓄えが行われているかどうかのチェックは、考助にとってはあくまでも二次的な機能でしかない。
 神具のある場所が特定していて、暴走による被害が最小限で済むとわかってさえいれば、敢えて藪をつつくつもりはない、というのが考助のスタンスだ。
 勿論、考助としては、女性陣が神具を手に入れたいというのであれば、それを止めるつもりはまったくない。

 考助の考えを聞いたシュレインは、腕を組んで考え込むような表情になった。
「そうか。確かに、森の中にある限りは、無理に回収する必要はないからの。さすがにエルフの里に入り込むと話は別じゃろうが」
「それは勿論。だからこその監視機能だしね」
「ということは、あとは私たちのやる気次第というわけか」
 考助とシュレインの会話を横で聞いていたフローリアが、口をはさんできた。
「そうなんだけれど・・・・・・神具、ほしいの?」
「いや、どうだろうな? 確かに神具が手に入ったとして、使い道が思い浮かばないな」
 前に手に入れた水鏡は、シルヴィアやピーチが保管している考助の神域に出向いて使われている。
 ただ、それも本格的に神具の所持者になろうというわけではなく、自らの力を伸ばすために使っているという方が正しい。
 あくまでも神具はサポートのための道具でしかない。
 あるいは、もっと使い込めば本来の神具としての使い方もできるようになるのかもしれないが、今のところシルヴィアにもピーチにもその様子は見えていない。

 今回の勾玉に関しては、そもそもの能力が不明であることに加えて、回収したあとに何の目的で使うのかという問題がある。
 考助の言う通り、どこにあるのかが把握できていて、暴走の心配もほとんどないのであれば、今の状態で放置していても問題はない。
「今のまま、宙ぶらりんの状態であるのも問題がある気もしなくはないが・・・・・・確かに変に関与するよりはいいかもしれないな」
「だよね? まあ、それも一つの考え方でしかないから、これからどうするかはシュレインたちに任せるよ」
 神具に近付くことが拒否されている以上、考助ができることはほとんどない。
 シュレインたちに頼まれればできる限りのサポートをするつもりはあるが、あくまでも補佐的な役目しかできない。
 その状態でどうこう口出しをするよりも、あとはシュレインたちでどうするかを話し合って決めればいいと考助は考えていた。

 このあとシュレインたちで話し合いが行われることになるのだが、それに混じっていたワンリがとある提案をすることになる。
 そのことに少しだけ驚く一同だったが、快くワンリの提案を受け入れることになる。
 そして、勾玉の回収はまた新たな展開を迎えることとなるのであった。
少し前半遊びすぎました。
つい、書きたくなってしまったんです。お許しください。m(__)m

そんなわけで、勾玉の神具は檻の中に閉じ込められることとなりました。
この先はあえて回収する必要もないか、とまとまりかけたところで、ワンリがとある提案をして・・・・・・。
この先は次話ですw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ