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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 勾玉

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(10)不思議な行動

 考助たちが塔の管理層に戻って、再びユッタから連絡があったのは、それから五日後のことだった。
 ユッタからの連絡は、南の塔のエルフの里を経由して来ている。
 報告を受け取った考助たちは、さっそくメンバーを選んだ。
 今回神具を探しに行くのは、前回のメンバーから考助が外れて、代わりにシュレインが入ることになった。
 もっとも、今回考助が抜けなかったとしても、シュレインは探索パーティに入っただろう。
 前回はたまたま手が離せない用事が入っただけなのだ。
 ピーチとコレットは、当然ながら子育てで不参加である。

 今回は行かないことになった考助は、彼女たちを転移門の前で見送りだ。
「それじゃあ、気をつけてね」
「ああ、任せろ」
「朗報を待っていてください」
「たまにはのんびりと、くつろぐといい」
 考助の言葉に、それぞれが返事を返して転移門を通って行った。
 今回のワンリは、たまたま狐の姿になっていたので、考助に首筋を撫でられてからの出陣(?)となった。

 シュレインたちを見送った考助は、ミツキと一緒にくつろぎスペースへと戻った。
 そしてそこには、朝の見回りを終えたミアがソファーでのんびりと座っている。
「母上たちは、行きましたか?」
「うん。たった今ね」
「そうですか。今度は捕まえられるといいですね」
 自らでは動くはずのない神具に対して、捕まえるというのもおかしな話だが、現実的に逃げられているのでミアが言っていることは間違っていない。
「そうだね」
「・・・・・・? 何か、微妙な顔になっていますが、もしかして難しいと考えています?」
「いや、そういうわけじゃないんだけれどね。神具の意図がわからなくてね」
 考助の返答に、ミアが不思議そうな顔をして首を傾げた。
「神具の意図?」
 神具の意図といっても、ミアには単に逃げ回っているようにしか見えないのだ。

 そんなミアに向かって、考助は一回だけ頷いた。
「うん。だって、おかしいと思わない? ただ単に僕らから逃げるだけなら、森の中にとどまっていないでさっさと出て行けばいいんだし」
「・・・・・・そういえば、そうですね」
 考助は以前からそのことを不思議に思っていたが、今回の件でますますおかしいと感じるようになった。
 神威を感じ取る罠まで設置して逃げたのに、まるで誰かが来るのを待ち構えているかのように森にとどまっている。
 森の結界をきれいに修復するだけの能力があるのだから、抜け出すことだってできると考えてもおかしくはない。
 それをしていないということは、何か理由があるのか、もしくは考助が言った通り、だれかを待っているという可能性がある、というのが考助の考えだった。

「ですが、単に森を抜けられないという可能性はないのですか?」
「勿論、その可能性もあるけれどね。一瞬であれだけの修復をした神具がその程度のことができないというのは、ちょっと考えにくいかな」
 神具がある部分だけに特化して作られていて、他のことに関しては全くできないということは、よくあることだ。
 というよりも、高度な神具になるほど、ある機能に特化して作られている。
 そのため、今回の勾玉も、結界の修復・作成に特化しているということは、ごく普通にあり得る。
 ただ、結界の修復もできるということは、結界の状態を見抜けるということに繋がるので、その力を使えば結界から抜け出すことなど簡単にできると考えるほうが自然なのである。
「・・・・・・というわけで、逃げ出せないんじゃなく、逃げ出してない、というのが正しいと思っているんだけれどね」
「なるほど。そういうことでしたか」
 話をきちんと聞けば、考助が感じている違和感にも納得できる。

 大いに納得したミアは何度か頷いていたが、ふと何かに気付いたような表情になった。
「誰かを待っているということは、最初からその誰かが来るということがわかっていた、ということですか?」
「そうなんだよねえ。それが問題なんだよ。果たして、勾玉の神具にそんな能力があるのかどうか・・・・・・」
 これが水鏡であれば、そうした先読みの能力があったとしても、考助は不思議には思わなかっただろう。
 勾玉の神具がどんな能力を持っているのか、考助はきちんと把握しているわけではない。
 あくまでも今まで起こった状況を見て判断しているだけだ。
 だが、勾玉がそうした先読みの能力を持っているのかと言われると、考助としても首を傾げざるをえない。

 悩める考助を前にして、ミアが同じように何かを考えるような表情していたが、やがて首を左右に振った。
「ここで考えていてもどうせ推論にしかなりません。それよりも、母上たちが朗報を持ち帰ることを期待して待ちましょう」
「ああ。確かにその通りだね」
 もっともなミアの意見に、考助も苦笑した。
 確かにミアの言う通り、今は外野にいる自分が考えても仕方がないと思ったのであった。

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 ユッタに指示されながらシュレインたちが向かった先は、ちょうど狼が雨露をしのげるような岩場だった。
 前回の洞窟と違って、開けた場所を拠点にしているので、狼が匂いで気付くことのないように風下から近づくようにしている。
 さらに、ワンリは人型ではなく、狐型になっている。
 五感的には狐型のほうが優れているために、開けた場所で狼を追い詰めるには、そちらの方がいいのである。
 そのワンリを先頭にして、一同は慎重に神具がいると思われる場所に近付いて行った。
 やがて、なんとか狼が目視できる場所に着いたところで、一度その歩みを止めた。
「ワンリ、一度ストップだ。前もって打ち合わせしておいた方がいいだろう」
 フローリアがそういうと、二メートルほど先に進んでいたワンリが、くるりと方向を変えて皆がいる場所へと戻ってきた。

 三人と一匹が固まっていても何とか座れるスペースを確保してから、それぞれの意見を出し合った。
 目視できる範囲にいる狼は一匹だけだが、他に仲間がいないとも限らない。
 そのため、ワンリだけは周囲の警戒をしている。
「相手が狼である以上、まったく気づかれずに近づくのは不可能だと思うが、どうする?」
「場所が場所だからのう。むしろ逃げられるのを前提に、何か考えないといかんじゃろうな」
「それはそうなのですが、そもそも不思議なことがあるのですが・・・・・・」
 そういって疑問の表情を浮かべたシルヴィアに、シュレインとフローリアの視線が集まった。
「不思議なこととは?」
「あの神具は、神域から移動してきた衝撃で破壊された場所をあれだけ一瞬で治せる能力があるのですから、精霊術の類があってもおかしくはないと思うのです」
 そのシルヴィアの言葉に、シュレインとフローリアが顔を見合わせた。

 ここまで来るために、ワンリとユッタは精霊を使ってやり取りをしている。
 当然、狼がいる場所を確認するために、ユッタの指示を受けた精霊たちが動き回っているのだが、もし神具に精霊を扱う力があるならそのことに気付いていてもおかしくはない。
 それにも関わらず、ここまで近づくまでに全く動きを見せていないのはおかしいのではないか、というのがシルヴィアの疑問だった。
「・・・・・・確かに、不思議といえば不思議じゃの」
 腕を組んでウームと首をひねってシュレインがそう言えば、フローリアも悩ましい表情になった。
「あの神具がどういった能力を持っているのか正確にわかっていない以上、推論しか出ないわけだが、確かに不思議だな」
「ええ。勿論、ユッタ様が気付かれないように精霊を操っているとも考えられます」
 ユッタの気合の入りようからすれば、その可能性もあり得る。
 どちらも考えられるだけに、三人はこれから先どうするかを考えて、何ともいえない表情になるのであった。
神具の不思議な動きについて語ってみました。
そろそろ神具の目的もわかってくる・・・・・・かもしれません?
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