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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔の地脈の力を使ってみよう

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(14) それぞれの取引

 第五層の村の神殿には、リラアマミヤの本部が置かれていた。
 当然ながら最初の大きさの神殿では、規模が小さすぎて現在では拡張につぐ拡張がされている。
 その神殿には、塔の外部に繋がっている四つの転移門と、塔の内部に繋がっている二つの転移門がある。
 塔の外に繋がっている転移門は、言うまでもなくリュウセン、ナンセン、ケネルセン、ミクセンの四つに繋がっている。
 また、塔の内部に繋がっている転移門は、ヴァンパイア一族のヴァミリニア城とデフレイヤ一族の村に繋がっている。
 塔内部に繋がっている二つの転移門は、部外者立ち入り禁止になっていて、それぞれの一族以外の者は出入りができないようになっていた。
 当然ながらそれぞれの転移門には、一族の者が管理していて、関係者以外はそれぞれの層に転移できない。
 そもそも神殿のこの二つの転移門があるのは、ごく限られた者にしか知られていない。
 リラアマミヤのメンバーであっても、ほとんどの者達は知らないことになっているのである。

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 ヴァミリニア城と繋がっている転移門の隣の部屋には、一人のヴァンパイアとシュミットがいた。
 二人が行っているのは、イグリッド族が作った製品の受け渡しである。
 ヴァンパイアが持ち込んだ製品をシュミットが一つ一つ丁寧にチェックしているのだ。
「いや、これはまた素晴らしいですね」
「・・・それで? 今回はどれくらいになる?」
「いつもの引き渡し品以外に、変更はありますか?」
「いや、ないな」
 この転移門が出来てからは、定期的にイグリッド族が作った製品を持ち込んでいた。
 その製品を売り込み、彼らが必要とする必需品を購入している。
「それでしたら、今回もまたプール金が発生します。いつものように貯めておくのでいいでしょうか?」
「ああ、そうしてくれ」
「かしこまりました」
 シュミットは、そう言って頭を下げた。
 イグリッド族が作った製品は、現在ではリラアマミヤの商人部門の主要な収入源になっている。
 ヴァンパイアが作っているのではないことは、流石にシュミットも気づいているが、わざわざ聞こうとは思わない。
 そもそもが考助からの紹介なのと、毎回転移門からの納品なので、塔の中にそういった生産活動をしている者達がいるのだろうと当りを付けている。
 もっとも例え生産している場所が、塔の中でなかったとしても、シュミットはそれらの製品を引き受けているだろうが。
 彼らが持って来る製品は素晴らしいものであるのは、間違いないのだから。

「それにしても・・・」
「・・・なんだ?」
「いえ、余計なお世話かもしれませんが、プール金がかなりの金額になってきています」
「・・・うん?」
「もし細工物などで入用な材料などありましたら、こちらで取り揃えますが、いかがいたしましょうか?」
 シュミットの言葉に、ヴァンパイアの男はすぐに返事はせずに考え込んだ。
 イグリッド族のいる階層で手に入る資源の種類には限りがある。
 その中で作れる最高の物を、イグリッド族は作っているが、他の材料があればさらに素晴らしいものが出来るかもしれない。
「・・・確かに、そうだな。そちらでも心当たりのある物があったら、資料を提出してもらえるか? こちらでも聞いてみる」
「かしこまりました」
 シュミットは彼らが持ち込んでくるような商品の専門家ではない。
 商品としての見立ては出来るが、必要な材料などはある程度のことしかわからないのだ。
 そのために、この後すぐにダレスに問い合わせようと決めた。
 ついでに言えば、彼らが持込む製品を見た工芸部門の者達は、毎回その出来栄えに目を見張っている。
 彼らであれば、良い意見を出してくれるだろうと目論んでいる。
「それから、今まで商品を見てきましたが、今よりも製品の質と量が落ちないのであれば、定期購入品を増やしても足が出ないかと思われます」
「確かにそうだな。・・・その辺は一度こちらでも確認してみるが、増えることはあっても減ることは無いだろう」
「でしたら、今のうちに必要な物をそろえておくのもいいかと思います」
「・・・そうだな。わかった。他の購入品も考えておこう」
「よろしくお願いします」
 シュミットはそう言って、頭を下げた。
 既にヴァンパイア一族(とイグリッド族)との取引は、リラアマミヤにとっての重要な取引相手になっているのであった。

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 ワーヒドは、第七十九層のデフレイヤ一族と会っていた。
 特別な何かがあったわけではなく、いつもの定期連絡だ。
 第五層の神殿で会わないのは、出来るだけデフレイヤ一族とのパイプを疑われないようにするためだ。
 まあ、一応転移門を出来るだけ隠しているとはいえ、神殿からサキュバス一族の者が出入りしているのはバレバレなので、そこから繋がりを疑われることがあるのはしょうがないのだが。
 余談であるが、サキュバス一族は特に一目でそうであるという特徴が無いために、すぐにサキュバスだとバレることはない。
 転移門の出入りを同一人物が使うのは、最低限にしてあるので、よほど注意深く見張っていないと疑われることが無いようになっている。
 もちろんこれらは、裏の仕事をしてきたデフレイヤ一族が実行している方法だった。
 考助は、神殿と出入りできる転移門の運用方法は、完全にデフレイヤ一族に任せていた。
 ワーヒド側から直接デフレイヤ一族に、定期的会いに行くのも、デフレイヤ一族からの要請だ。
 その用件は、アマミヤの塔とリラアマミヤに関する調査報告になる。
 ありとあらゆる情報を一族の者が集めて、それをまとめた物をワーヒドへ直接渡しているのだ。
 勿論、緊急性のある物は、このような方法ではなく、別ルートで渡すことになっている。
 定期連絡の報告内容は、どちらかと言えば、緊急性のない物になる。
 とは言え、それらは塔とリラアマミヤにとっては、非常に重要な物になっているのだ。

「こちらが、今回の調査内容です」
「有難うございます」
 ワーヒドに書類|(ちゃんと紙書類である)を渡しているのは、デフレイヤ一族の長のジゼルだ。
「毎回言っていますが、生活で入用な物があったら、教えてください。きちんと用意しますので」
「ほほ。わかっております。今のところ里で困っていることはありませんので、大丈夫ですな。・・・それよりも一つお願いしたいことがあります」
「なんでしょう?」
「そろそろ移住環境も落ち着いてきたので、占い業の方も再開しようかと思いましてな」
 ジゼルが今回申し出ているのは、情報収集のための辻角で開くようなものではなく、きちんとした商いとして占いを出すということだ。
 当然ながら里にとっての外貨を稼ぐという目的がある。
 現状、裏稼業である情報収集の分だけで生活に必要な物は用意できているのだが、資金は出来るだけ用意しておきたい。
 その方が、さらに裏稼業も安定してくるのだ。
「それは、第五層にですか?」
「そうですな。既に村というよりも町と呼んでもいい規模になりそうだと聞いております。それでしたら占い営業しても不自然ではないでしょう?」
 ある程度の大きさの街であれば、占いの館的な物があっても不思議ではない。
「・・・なるほど。おっしゃる通りですね。・・・わかりました。そちらで人員を用意していただければ、こちらの担当の者と話を詰めましょう」
「よろしいのですかな?」
「ええ。もちろんです」
 二人はそう言って、握手をしてから別れた。
 結局、リラアマミヤの商人部門で用意していた店舗の一角を使って、占い業が開始されることになる。

 店舗の一角で始まった占い業だが、よく当たると評判になり塔の中どころか、この占いの為だけに転移門を通ってくるほどお客を集めるようになるのは、また別の話である。
2014/5/24 誤字脱字修正
2014/6/3、14 誤字修正
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