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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 勾玉

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(8)罠

 再びアマミヤの塔の管理層へと戻った考助は、ワンリの元へと向かって事情を話した。
 考助から話を聞いたワンリは、一緒に神具を探しに行くことにすぐに了承した。
 狐のお宿の運営で忙しくしていたワンリだが、最近では他の狐たちに任せてしまっても問題はないほどになっている。
 たとえ数カ月単位で考助から同行を求められたとしても、すぐに頷いただろう。
 もっとも今回は、せいぜいかかっても十日程度だということは、考助から話してある。
 そもそも日数的にも問題ないワンリは、考助からの申し出に喜んでと同意するのであった。

 ワンリの同意をもらった考助は、管理層で準備を整えたあと、再びセウリの森へと戻った。
 今回同行しているメンバーは、コウヒとミツキ、シルヴィアとフローリアにワンリが加わった六人である。
 管理層から転移門を使って移動している以上、一度は必ずエルフの里を通ることになる。
 そのため、里の者たちは考助が森で何かを探しているということを、すでに噂として知っていた。
 何を探しているのかまでは噂として流れていないようだったが、シオマラが変な誤解を生まないように、ある程度の情報を流しているのだ。
 勿論、それは考助に了解をとった上のことなので、考助も安心して里を通り抜けることができるというわけだ。

 里を抜けて一度世界樹の麓に行った考助は、ユッタとちょっとした打ち合わせを行った。
 正確には考助ではなく、ユッタとワンリが話をしたのだ。
 これから神具があると思われる洞窟に行くにあたって、もし逃げられたときのことを考えて、精霊たちを使って連絡を取るようにするそうだ。
 精霊を使って行うことなので、考助はふたり(?)の会話にはほとんど付いていくことができなかったが、話し合いが終わったときのユッタの満足げな顔を見れば、納得のいくものだったということは理解できた。
 そうして、諸々の準備を終えた考助たちは、ようやく洞窟を目指して森の中に入ったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 今回は、精霊を通してユッタの導きがあるので、エルフの案内はなしだ。
 代わりに、ユッタの言葉を中継(?)しているワンリが大活躍していた。
 ただ、中継といっても言葉で伝えているわけではなく、ユッタの指示を受けている精霊のあとに付いて行っているだけなのだが。
 途中で何度かモンスターの襲撃に会いつつも、それはコウヒかミツキが蹴散らしながら、一同は里を出て三日目には目的地の洞窟前に着いた。
 神具があると予想されている洞窟の位置は、里から見れば南東側になる。

 その洞窟はあくまでも自然にできたものなので、塔のダンジョンのように整備されているわけではない。
 外から見る限りでは、中には光はとおっておらず、魔法の光で進まなくてはいけないようだった。
「コウヒ、お願い」
「かしこまりました」
 考助の指示に従って、コウヒが魔法で光をふたつ出した。
 光を出す位置は、パーティの前方と後方になる。

 コウヒが出した光が洞窟の中に入ると、我先にと飛び込んだのは、ワンリだった。
 人型になっていても狐のときの性質が残っているせいなのか、それとももともとなのか、非常に楽しそうな足取りだ。
 それに続くように考助が歩き出したが、それとほぼ同時にワンリの声が洞窟内に響いた。
「お兄様、待って!」
「えっ・・・・・・!?」
 ワンリの制止と考助が洞窟内に一歩踏み込むのはほぼ同時だった。
 そして、その瞬間、考助の身体の中に何かの違和感が走った。
「・・・・・・あ~。これは、失敗したねえ」
「ごめんなさい。もう少し早く言えばよかったのですが・・・・・・」
「いや、ユッタからの警告も遅かったんだよね?」
「はい」
「それじゃあ、仕方ないよ」
 沈んだ表情を見せたワンリに、考助は元気づけるように笑顔を見せた。

 そのふたりに対して置いてきぼりになっているのが、シルヴィアとフローリアだ。
「・・・・・・何かあったのか?」
 そう言って首を傾げるフローリアに、考助は苦笑いを返した。
「うん。一言でいえば、神具の罠が仕掛けてあった」
「何?」
「まあ、罠といっても神族とか神が入ってきたら知らせるようなタイプのものだけれどね」
 考助が肌で感じたのは、何かの攻撃を仕掛けてくるとかいったものではなく、フローリアに言った通りに神威を持った者を感知するためのものだった。
 そのタイプの罠が設置されていると、いくら考助が意識して神威を抑えていても無駄になってしまう。
 入口に設置されていた罠は、そこを通ると設置した者のところまで知らせが行くようになっているタイプのものだった。

 考助の説明を聞いて一定の理解を示したフローリアだったが、それでもまだ何かが引っかかっているか、首をかしげていた。
「罠があったのはわかったが、コウヒはなぜそれに気付けなかったのだ?」
 洞窟に最初に入ったのはワンリだったが、そのあとに入ったのはコウヒだった。
 勿論、考助よりも先に入って安全を確認するためだが、コウヒがその罠になぜ気付けなかったのかフローリアには分からなかったのだ。
 そのフローリアの問いに、コウヒが珍しく苦々しい表情を浮かべた。
「・・・・・・森にある結界の一部だと思っていたからです」
 セウリの森には、ユッタと考助合作の結界が張り巡らされている。
 その結界は、森中に張られているので、コウヒもミツキもいちいち知らせるようなことはしない。
 そんなことをすると、一メートルと進むたびに警告をしなくてはならなくなる。
 コウヒも罠の存在には気づいていたが、罠とは思わずに結界の一部と認識したのだ。
 そのため、これまでと同じように警告はせずに、そのまま考助が通り抜けるのを許してしまったというわけである。
 この場合、コウヒを責めるよりも結界を利用した罠を張った神具をほめるべきだろう。

 コウヒと考助の説明に、フローリアが感心したように頷いた。
「・・・・・・なるほどな。相手が見事だったというわけか」
「そうだね。そもそもコウヒが結界の仕掛けに気づくたびに警告していたら、僕が止めていただろうから、結果は一緒だよ」
 未だに落ち込んでいるコウヒを慰めるように考助がそう言った。
「そうよ。先に行っていたのが私だったとしても、結果は同じだったわよ」
 考助に続いてミツキもコウヒを慰める言葉をかける。
 考助とミツキのふたりがかりで慰められたコウヒは、自らの失敗を振り払うように首を左右に振った。
「ですが、これで神具は……」
「ああ、そうだね。たぶん逃げただろうね。こんな罠を張っていたんだから、洞窟の出入口がひとつしかないと考えるほうが不自然だし」
 考助が罠に触れた時点でさっさと逃げ出したと考えるほうが無難だろう。
 もしそうでなければ、何のために罠を張っていたのかがわからなくなる。

「それで、どうするんだ? この先にはいくのか?」
「いや。神具が本当にあったのかどうかも知りたいからね。とりあえずは、先に向かうよ。それに、本当に逃げ出したかどうかもわからないし」
 今は神具が逃げ出したという前提で話を進めているが、単に考助が来たことを知るためだけに罠を張った可能性もある。
 結局、奥に行ってみないと神具が何を考えて、入り口に罠を張ったのかはわからないのだ。
 そのためにも、一度は奥に行って確認しなければならない。
 ついでにいえば、せっかくここまで来たのにここで引き返すのは、意味がない。

 フローリアも確認のために聞いただけで、最初から奥には行くつもりだった。
 考助の言葉に頷いて、洞窟の奥へと視線を向けるのであった。
コウヒが失敗しました。
何気に初めてのことではないでしょうか?(ただし、料理を除く)
なぜ考助だけが罠に引っかかったのかは、次話になります。
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