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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 勾玉

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(7)精霊の監視

 ユッタのところに顔を出した考助は、さっそく調査の結果を聞いた。
「それで、何がわかりましたか?」
「まず、神具の形ですが、それとほぼ同じような形をしていたそうです」
 ユッタはそう言って、シルヴィアが首から下げている首飾りを示した。
 正確には、首飾りに通されている勾玉を指している。
「勾玉、ですか」
 自分が触ってユッタが頷くのを見たシルヴィアが、そう言った。
 勾玉は、水鏡と同じく聖職者が神事の道具として使うものになる。
「勾玉というのですか。それと同じものかどうかはわかりませんが、少なくとも形と大きさは同じようですね」
 はっきりとそう断言するユッタに、考助は首を傾げた。
「ずいぶんはっきりと言っているけれど、ユッタはその神具を見たの?」
 そう言った考助をユッタが不思議そうな顔をして首を左右に振った。
「いいえ。私は見ていませんが、精霊たちに聞きました」
「あ、そうか」
 ユッタの答えに、考助は納得して頷いた。

 エセナと同じように、ユッタも地脈を整えるという役目を担っている。
 その目的を考えれば、精霊たちが世界樹を中心に集まるのも同じことだ。
 ユッタは、その精霊たちを集めて、神具が落ちた場所で起こったことを確認したのだ。
 そして、精霊たちの話を総合したのが、今回の報告ということになる。
 精霊の意思をほぼ正確にくみ取ることができる世界樹ならではの方法といえるだろう。

 その方法でユッタが集めた情報によると、考助たちが前に見つけた場所に落ちた勾玉(仮)の神具は、狼型のモンスターに運ばれてとある洞窟へと入って行ったようだ。
 そこから先は移動した様子がないのでそのままその場所にあるはず、というのがユッタの説明だった。
「なるほど。洞窟の中ね」
 説明を聞いた考助が、そう言ってから腕を組んでウーンと唸る。
 それを見て、一緒についてきたフローリアが首を傾げた。
「洞窟に何かあるのか? 探しに行けばいいだけだと思うが?」
「そうなんだけれどね。何か、僕が行ったら一瞬にして逃げそうな気がしてね」
 どうやって狼型のモンスターに運ばせたのかはわからないが、考助が来たと察知したとたんに、同じような方法で逃げてしまう可能性がある。
 勾玉の神具が、考助の気配を感じ取れるかどうかはわからないが、もしその場合は、逃げられると考えたほうがいいだろう。
 そうでなければ、落ちた場所からわざわざ移動するような真似はしないはずだ。
 もっとも、勾玉が考助かもしくは女神たちから逃げるつもりで移動したのかどうかはわからないのだが。

 ありそうな未来に、フローリアが難しそうな顔になった。
「・・・・・・考えられなくはないな」
「だよね?」
「ですが、それを言ったらコウスケさんは、今後の探索に参加できないことになってしまいますが?」
 シルヴィアの言葉に、考助はコクリと頷いた。
「そうなんだよねえ。まあ、それは今更といえば今更だけれど」
 そもそも水鏡のときも考助は、ほとんど表に出ることはなかった。
 せいぜいが、最初にダナに占いをしてもらったくらいである。
 それを考えれば、今回も女性陣に任せてしまったほうがいいのかもしれない。
 ただ、前回に引き続き任せっきりにしてしまうのもどうなのか、という思いもなくはない。
 折角なので、今回は自分も探索に加わろうと最初は考えていたが、どうにも神具の能力を考えると難しそうだった。

 悩ましい表情になる考助を見て、フローリアがクスリと笑った。
「まずは先走らないで、本当に逃げるのかどうか確認してみたらどうだ? 逃げたら逃げたでそのときに考えればいいだろう?」
「まあ、それもそうなんだけれどね」
 あっさりとしたフローリアの言葉に、考助も頷く。
 モンスターに移動させる分には、恐らくこの森から抜け出すことはないので、逃げられたとしてもまた追いかけることは可能だろう。
 ただしそれには、神具を運ばせるモンスターが、絶対にこの森を出ないという前提がある。
 森を出られてしまえば、ユッタが精霊に頼んで行方を探してもらうのも難しくなってしまうのだ。
 出来なくはないが、効率が落ちてしまうのは間違いない。

 ユッタからそれらの確認をした考助は、ひとしきり悩んでからユッタを見た。
「うん。いいや。とりあえず、最初は行ってみよう。もし逃げられた場合も、ユッタが精霊を使って監視をしてくれるんだよね?」
「勿論です」
 力強く頷いたユッタを見て、考助は決断した。
「よし。それじゃあ、僕も行くよ」
 たとえ逃げられたとしてもそれを追える手段があるなら構わない。
 考助が姿を見せていきなり暴走する可能性もないわけではないが、そのときはそのときだ。
 場所が洞窟の中らしいので、被害は最小限に抑えられるだろうと、考助は考えた。
 少なくとも、水鏡のときのように町中にあって暴走される可能性があったことを考えれば、今回ははるかにましである。

 考助が直接洞窟に乗り込むことを決めると、あとは残りのメンバーをどうするかだ。
「本当であれば、コレットが来てくれればいいんだけれどなあ」
 せっかくユッタのサポートがあるのだから、できれば精霊に精通している者が一緒に来てくれればなおいいと考えての発言だ。
 女性陣の中で、コレット以上に精霊に精通している者はいない。
 精霊に関しては次点のシュレインがさほど得意とは言えない時点で、他のメンバーに関しては当てにできない。
 もっとも、それは考助も同じなのだが。
「今は、どう考えても長期間離れるのは難しいからな」
 子育ての最中のコレットに、無理を言うことはできない。
 というよりも、考助自身が言いたくはない。

 さてどうするかと頭を悩ませる考助に、シルヴィアがふと思い出したように言った。
「・・・・・・ワンリは駄目でしょうか?」
「あっ!」
「なるほど」
 シルヴィアの言葉に、考助とフローリアが同時にワンリのことを思い出した。
 考助にしてみれば、精霊よりも他の術に強いというイメージがあるために忘れがちだが、人型になっているときのワンリは、コレットほどではないにしろ精霊に精通している。
 そもそも精霊神の加護を持っているのだから、それもある意味当然だ。

 メンバーさえ決まれば、あとは目的地に向かうだけである。
 ただ、前回同様に里からは離れた場所にその洞窟があるため、ある程度の準備は必要になる。
 何よりワンリのところに行って、一緒についてきてもらわなければならない。
 そのため考助たちは、慌ただしい様子でユッタのところを辞して、アマミヤの塔へと戻った。

 考助たちを見送ったユッタは、その場に残っていたシオマラを見て言った。
「・・・・・・あなたも精霊には精通していると思うのだけれど、一緒に行かなくてよかったのかしら?」
「私が、ですか? なぜでしょう?」
 突然なぜそんなことを言い出すのかと言いたげに、シオマラはユッタを見る。
 そのシオマラの顔を見たユッタは、わざとらしくため息をついた。
「・・・・・・あなたに期待した私が間違っていたわ」
 ユッタのその言葉はシオマラの耳にもしっかりと届いたが、言われた当人は意味がわからずに首を小さく傾げるのであった。
ワンリ参戦!
そしてシオマラは、見事にユッタの思惑を外してみせました。
ど天然です。
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