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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 勾玉

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(6)世界樹の怒り?

 エルフの里を経由して塔の管理層へと戻った考助は、他のメンバーにも情報を共有した。
「確かに面倒なことになりそうだな」
 考助たちが説明を終えると、代表してフローリアがそう言った。
 そもそもどんな形をしているのかわからないものを探すということができるのか、と言いたげな表情になっている。
「せめて、神具だけで移動できたのかどうかだけでもわかればいいのですけれどね~」
 ピーチのもっともな言葉に、その場にいる全員が頷く。
 神具が勝手に動き出すことはほとんどないはずだが、中にはそういった神具がないわけではない。
 さらにいえば、水鏡のときのように、誰かに拾ってもらうという手もあるのだ。
 セウリの森は結界があるために、人が入り込むことはほとんどないが、大きさによっては獣とかに運んでもらうということもできる。
 神具がその気になれば、移動する手段はいくつも考えられる。

 揃って悩むような仕草を見せた一同だったが、コレットふと思い出したように顔を上げた。
「そういえば、里の世界樹には聞いてみた?」
「ユッタに? いいや、聞いてないよ」
 考助にしてみれば、結界内に入り込んだことも気付いていなかったので、その先のことも知らないだろうと考えていた。
 だが、コレットの意見は違ったようで、首を左右に振った。
「それ、聞いてみたほうがいいかも? 神具の行方とかはわからなくても、森に異変があればそれが神具かもしれないし」
「そうか。なるほどね」
 別に神具そのものではなくとも、森の中で細かな異変があれば何かわかるのではないかということだ。
 普通は見逃してしまうような小さな変化でも、あえて聞くことで何か気付くこともあるかもしれない。
 そうした小さな森の変化に気付けるのは、やはりユッタしかいないのである。

 とりあえずの方針がコレットからの指示で決まったことで、その場の雰囲気が多少緩んだ。
 そうした雰囲気を感じ取って、フローリアがそういえばとまったく関係のない話題を振った。
「コレットもピーチも、こんなに頻繁にこっちに来ていていいのか? 子供たちがいるだろう?」
 子育て真っ最中のふたりだが、フローリアやシルヴィアのときに比べれば、かなり頻繁に管理層に顔を見せている。
 そんな状態で大丈夫なのかと心配になったフローリアだったが、その問いかけにまずコレットが肩をすくめた。
「私は乳母がいるから大丈夫。というよりも、あまり子供にばかりかまっていると、私のほうが参ってしまうから、適度に離れたほうがいいって言われているの」
「私もそうです~。むしろ、追い出されていると言ったほうがいいですね」
 追随するようにピーチがそう言うと、コレットが大きく頷いた。
 どうやら、ピーチもコレットも乳母から同じようなことを言われているようだった。

 そのふたりの様子を見てフローリアが首を傾げた。
「そんなものか? ・・・・・・いや、考えてみれば、私も子供たちにつきっきりだったことはないな」
 思い出すような顔になったフローリアを見ながら、シルヴィアも頷いた。
「わたしもですね」
 フローリアもシルヴィアも、子育てをしているときはちょうどラゼクアマミヤが建国して忙しく動いていたときだった。
 そのため、フローリアは子供たちにつきっきりだったことはなく、むしろ無理やり会いに行く時間を作っていたような感じだった。
 シルヴィアの忙しさはそこまでではなかったが、それでも忙しくしていたことは間違いない。
 することがあると言っても、ずっと家にいることができるコレットやピーチとは、まったく状況が違うのである。

 フローリアを見ながら、その状況を裏付けるようにミアが首を縦に振っていた。
「そもそも私の場合、お母様の姿を自室で見た記憶がほとんどないのですが?」
「いや、そんなことはないだろう? ない・・・・・・よな?」
 反射的にミアの言葉に否定したフローリアだったが、言っているうちに自信が無くなってきたようだ。
 記憶を探るように天井を見ていたが、やがて諦めて首を左右に振った。
「まあ、そういうこともあるさ」
 何とも強引なフローリアの締めの言葉に、会話を聞いていた一同は、思い思いの笑みを浮かべるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助は、コレットから助言をもらった翌日に、再びユッタの元を訪ねた。
 今回の同行者は、コウヒとミツキに加えて、コレットとシルヴィアである。
 連続して里を訪ねてくることがほとんどない考助の訪問に、里のエルフたちは少しだけ驚いているようだった。
 ただ、考助たちが来ている理由もある程度は伝わっているようで、驚いてはいるものの何があったのかという視線では見てなかった。
 そんなエルフたちの視線を集めながら、シオマラの屋敷へ着いた考助は、事情を話してすぐに世界樹の麓へと向かった。

 考助が、違和感があったという場所で先日確認したことを簡単に話すと、ユッタは小さく頷いた。
「そんなことがあったのですね。なるほど」
 ユッタの口調はいつもの通りだったが、その顔には小さな笑みが浮かんでいる。
 考助はその笑みを見て、なぜか背中に冷や汗が流れた。
「コウスケ?」
 及び腰になっている考助を見てコレットが首をかしげたが、考助はそれどころではない。
 他の誰も気づいていないようだったが、目の前にいるユッタは、間違いなく怒っている。
 その笑顔は、以前にスピカと向かいあって言い合ってときのことを思い出させる。
 自分に気付かれずに、結界の中に入り込まれたことに、プライドを刺激されたのだ。
「ユ、ユッタ? あまり過激にはならない方が、いいと思うんだけれど?」
「あら。何のことでしょう?」
 そう言ったユッタは、相変わらず笑ったままだったが、さすがにこの時点でシオマラとコレットもユッタの纏っている雰囲気に気付いて、コクリとのどを鳴らした。

 さて、どうやってユッタを静めるかと一瞬悩んだ考助だったが、すぐにいい方法を思いついた。
「変に神具を追い詰めると、森がつぶれてしまうからほどほどにね」
 きれいな森を盾にしたわけだが、その効果は抜群だったようで、ユッタが身にまとっていた雰囲気は一瞬で霧散した。
「それもそうですね。でも、昨日の今日でここに来たということは、このまま見逃すわけではないでしょう?」
 昨日はユッタのところに寄らずに管理層に帰った考助だったが、しっかりとそのことを把握していたようだった。
 考助としてもユッタの言う通り見逃すつもりはないので、ここは素直に頷いておく。
「そうですね。それで聞きたいことがあったんです」
 ここぞとばかりにそう言ってきた考助に、今度はユッタが頷いた。
「なんでしょうか? いくらでも協力しますよ」
「神具が落ちてきてから今まで、森で何か異変がなかったかどうか知りたいんです。どんな小さなことでも構いません」
 その考助の言葉に、ユッタは考え込むような顔になった。

 そもそも森に異変があったかどうかは、先日考助に聞かれたときに答えている。
 考助の質問は、それ以外に何かなかったかということになるが、ユッタにも今すぐに答えられることは残念ながら何もない。
 しばらく動かなかったユッタだったが、首を左右に振って考助を見た。
「何も思い当たりません。ですが、先ほどの話であのときに、森に異変があったことはわかったのです。必ずそこから辿って見せます」
 気合が入った顔でそう言ってきたユッタに、考助は苦笑をしながら頷いた。
「わかりました。ただ、さっきも言いましたが、見つかったとしてもあまり追い詰めないでくださいね」
「勿論わかっています。この森を焼かれたら意味がないですからね」
 先ほどの考助の脅し(?)が効いているようで、ユッタは分かっていると言いたげに頷いた。

 とりあえず森の調査に関してはユッタに任せて、考助たちは管理層へと戻ることにした。
 ユッタの気合の入りようを見れば、放っておいても大丈夫だろうと考えてのことである。
 もし何かを見つけた場合は、シオマラを通して考助たちのところに連絡が来るようになっている。
 そうして管理層に戻った考助たちだったが、ユッタから連絡が来たのは、この日から数えて二日目のことだった。
ユッタが怒りました。
考助が宥めました。
他の人たちはようやくそのことに気付きました。

というわけで、分かりずらいユッタの怒りでしたw
考助から調査を依頼されたユッタは、わき目も振らずに(?w)調査に邁進しますw
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