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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6部 第1章 水鏡

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(26)ふたつの対面

 ダナは目の前に現れた人物を見て、目を丸くした。
 直接の面識はなくとも、今自分の目の前にいる人物が誰なのかはすぐにわかった。
 その人物が身にまとっている服と、何より自分が今いる場所で、わざわざ誰かに教えてもらわなくとも判断できた。
 その人物が近づいてくるのを見たダナは、慌てて平伏をした。
「これ。待ちなさい。そなたにそのような格好をさせるために呼び出したわけではない」
 そんなダナの頭上に、その人物の声が降ってきた。

 ダナが今いるのは、ミクセンのエリサミール神殿である。
 神殿からの直接の呼び出しを受けて慌てて神殿まで来たダナは、一般の者が入ることができない奥の部屋まで案内された。
 そして、しばらく待っていたらいきなりその人が現れたのだ。
 驚くなという方が無理だろう。

 ダナに声をかけてきたその人というのは、エリサミール神殿の神殿長であるローレルだった。
 神具がらみで何かあるのだろうと理解して来たダナだったが、まさか神殿長自ら来るとは少しも考えていなかったのだ。
「は、はい・・・・・・!」
 神殿長から直接声をかけられたダナは、恐る恐る顔を上げて立ち上がった。
 そしてその視線を神殿長に向けると、いきなり頭を下げられた。
 突然のことに、ダナは頭が真っ白になる。
 教会の頂点に立っていると言っても過言ではないローレルが、まさか自分に頭を下げてくるとは全く考えてなかったのだ。
 ダナにとっては、何が起こっているのか全く理解できなかった。
 そんなダナを無視してローレルが、下げた頭を戻して話し始めた。
「すまなかった。そなたには謝らなければならないことがあったので、こうして来てもらったのだ。本来であれば呼びつけるのではなく、こちらから出向くべきだったのだがな。そんなことをすれば、余計そなたに迷惑をかけることになると考えて、こんな形になってしまった」
「うふえっ!?」
 プチパニックになったダナは、変な声を上げることしかできなかった。

 そんなふたりの様子を見て、くすくすと笑い声をあげる者がいた。
「神殿長。あなたがそのようなことをすれば、ダナは余計困りますよ。それからダナ。あなたは少し落ち着きなさい」
 そう言ってきたのはシルヴィアだった。
 見知った顔を見たダナはホッと息をはき、ローレルは渋い顔になった。
「しかしな。迷惑をかけたのはこちらで・・・・・・」
「それはわかりますが、まずは詳しい説明をしないとダナは混乱するだけです。逆効果ですわ」
「うぬっ」
 シルヴィアの言葉に、神殿長は言葉を詰まらせた。
 現状を見る限りでは、シルヴィアの言う通りだと理解できたのだ。

 一方でダナもまた、混乱から立ち直りつつあった。
 そして、シルヴィアと神殿長が親し気に会話をするのを見ながら、驚くと同時にどこかで納得もしていた。
 もともと、シルヴィアにしろ他の人たちにしろ、どこかちぐはぐな印象を受けていたのだ。
 むしろ、神殿長と親しいくらいにくらいが上だと言われた方が納得できる。
 そんなことを考えていたダナに、シルヴィアが視線を向けてきた。
「以前、神殿の人間が、接収だと言って神具を奪って行ったでしょう?」
「・・・・・・ああ、はい」
 別にダナもあのときのことは忘れていたわけではない。
 だからといって、神殿長自ら頭を下げてくるとは思っていなかっただけだ。
 ついでに、自分に対して頭を下げられるような事態になるとは考えていなかったというのもある。
 もっとも、この場にシルヴィアがいることで、どういった状況になっているかも理解はできた。
 シルヴィアの言葉に頷いたダナは、その後、シルヴィアから詳しい説明を受けることになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 緊張を強いられる場から逃れられたダナは、シルヴィアと一緒に別の場所へと向かっていた。
 ちなみに、この時点でダナはシルヴィアの正体にも気付いている。
 それにもかかわらず、神殿長と違って緊張をしていないのは、初対面のときの印象が強いためだ。
 さらにいえば、シルヴィアが態度を改めようとしたダナを咎めたというのもある。
 勿論、相手が相手だけに気楽に話すというわけにはいかないが、神殿長のようにむやみに緊張を強いられるということはなかった。
 おかげで神殿長との話も何とか乗り越えることができたのである。

 そんなふたりが向かっている先だが、シルヴィアがダナにぜひとも会ってほしい人がいると言われてついてきたのだ。
 シルヴィアが誰であるとは明言していなかったので、ダナも気軽に了承した。
 そんなダナだったが、歩いている途中で、なんとなく嫌な予感にかられた。
「あの・・・・・・シルヴィアさん。これから会いに行く人って・・・・・・?」
「ああ、ダナが使うことになった水鏡を作った人ですよ」
 シルヴィアがあまりにもさらりとそう言ったので、ダナは「そうですか」とあっさりと流そうとした。

 だが、その返事を返す前に気付いてしまった。
 シルヴィアは、現人神の巫女→現人神は、魔道具作りで有名→ダナが持っている水鏡は魔道具→魔道具を作ったのは?
 そこまで連想できれば、あとはこれから会いに行こうとする人物(?)が誰であるのかは、さすがのダナでもわかる。
 さあーっと血の気が引いたダナは、クルリと方向転換をし・・・・・・ようとして、ニコリと微笑んだシルヴィアに腕をつかまれた。
「あら。目的地はもう少しですよ。どこへ行くのでしょうか?」
「かかか、勘弁してください!」
 ダナはそう言ってプルプルと首を左右に振ったが、シルヴィアは手を離すことはなかった。
「大丈夫です。怖い人ではありませんよ」
「人ではなくて、神様じゃないですか!」
「あら。そういえば、そうでしたわね」
 ダナの突っ込みに、シルヴィアがポンと両手を打った。
 そのシルヴィアが手を離したすきに、これ幸いとばかりにダナは逃げ出そうと画策したが、どこからともなく現れた女性に腕をつかまれてしまった。
 それを見たシルヴィアが、ニコリと笑った。
「逃げようとしても無駄ですよ」
「い~や~」
 自分がそんな声を上げたにもかかわらず助けようとするものが現れなかったのは、やはり一緒にいるシルヴィアのせいなのだろうな、と頭の一部で冷静なことを考えるダナであった。

 シルヴィアが会わせたいと言った人物(?)は、ダナの予想通り現人神その人(?)であった。
 どこで対面することになるのかと思えば、なんと塔の中にまで連れていかれた。
 転移門を通っているので、ダナには塔のどこに行くことになったのかはわからない。
 一応シルヴィアに聞いてはみたが、曖昧な答えが返ってきたので、知らない方がいいのだろうと考えてそれ以上は聞かなかった。
 ちなみに、転移門を通るときに、クラウンの職員に「誘拐されそうなんです!」と訴えてみたが、シルヴィアがクラウンカードを差し出すとニッコリと微笑まれてそのままスルーされてしまった。
 ダナの逃亡計画は、その時点で終わることとなったのである。
 そして、神殿長との対面以上に緊張を強いられることになったダナは、現人神との会話をほとんど覚えていなかった。
 シルヴィアの言った通りに、威圧とかをしてくるようなことはなかったのだが、何ともいえない雰囲気を感じていた。
 そんな緊張しっぱなしのダナに、現人神が気を使っていたのだが、そんなことを感じる余裕はダナにはなかった。
 確かに受け答えをしているのに、内容を全く覚えておらず、いつの間にか時間が過ぎているという貴重な体験をすることになったダナは、家に着いたときにはぐったりとへたり込むころになるのであった。
これで水鏡編は終わりになります。
次からは、勾玉編になります。

ダナはご愁傷さまでした。
今の考助の立ち位置を知ってもらうのにちょうどよかったので、犠せ・・・・・・ではなく、貴重な体験をしてもらいました。
まあ、これで終わりというわけではないと思います。(タブン)

ダ「え? えっ!?」
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