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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6部 第1章 水鏡

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(15)占い師の道具

 シュレインたちが話し合いをしていたそのころ。
 塔の様子を見て回っていた考助は、最後にサキュバスの里にいるおばばを訪ねていた。
 今回は占いをしてもらおうというのではなく、占い師について聞こうと思ったのだ。
「どうされたかね、コウスケ殿。占いの結果は、変わらないと思いますが?」
「いえいえ。今日はそうではなく、占い師について聞こうと思ってきたのです」
「ほ? 占い師とな?」
 思ってもみなかったことを言われたのか、おばばは驚いたような表情になった。
「ええ、占い師というか占い師が使っている道具について、でしょうか」
「ホホ。そういうことかえ」
 ようやく考助が言いたいことを察したおばばが、小さく笑って頷いた。

 占い師といえど、行っているのは人なのでその性格など千差万別。
 ひとくくりにして語ることなどできるはずもない。
 だからこそおばばは最初に戸惑ったのだが、占い師たちが使う道具となると話は別だ。
 代表的な物であればカードなどがあるが、占い用に使われる道具には様々ある。
 だが、それらの共通点として、当然だが『占いのため』に使われるということがある。
 道具のすべてについて語れるわけではないが、それでも他の者たちよりも多くのことが語れるという自信がおばばにはあった。

 そんなおばばを前にして、考助は道具を作っていた最中に浮かんでいた疑問をぶつけた。
「そもそも、占い師にとっての占いの道具とは何なのでしょうか?」
 その考助の言葉を聞いて、おばばは目を丸くした。
 占い師でもない考助から、こんな言葉を聞くとは考えていなかったのだ。
 それでも、弟子を何人も持っているおばばだ。
 こんな質問はいくらでも聞かれたことがある。
 ただ、相手は道具作りで知られている現人神だ。

 下手なことを答えるわけにはいかないと考えたおばばは、しばらく首をひねったあとでこう答えた。
「ふむ。中々難しい問いだの。儂個人の考えでも構わんのだろう?」
「勿論です」
「占い師にとっての占いの道具とはの、あくまでも占いを手助けするためのものよ」
 そのごくごく当たり前なおばばの答えに、考助は考え込むような表情になった。
「手助け・・・・・・」
「ホホ、そんなに難しく考える必要はない。神であれば、自らの力のみですべてを見通せるやもしれん。だが、人の身ではそれは敵わぬから道具の手助けを借りておるだけよ」
 そう言ったおばばは、さらに考助にむかって説明を続けた。

 占いの本質というのは、あくまでも占い師が持つ力を使って行うこと。
 占いの道具というのは、それをわかりやすく表に出しているだけなのだ。
 だからこそ、占い師が使う道具も千差万別、様々な形態がある。
 それは、占い師によって、自ら持つ力を表に示す形が違っているためである。
 占い師にとっての道具とは、自らの力を外に出すためのものでもあり、同時にお客にそれをわかりやすく示すためのものである、というのがおばばの説明だった。

 これらのことをおばばの口からきいた考助は、大きくうなずいた。
「なるほど」
「占い師がただ単にお客と向き合っただけで答えを出しても、お客は納得せん。だから、お客を納得させるために道具を使っているということもある」
 おばばがそう言うと、考助は占い師が何も使わずに言葉だけで占いの内容を伝える姿を想像した。
「・・・・・・確かに、説得力が違いますね」
「じゃろう?」
 考助の言葉に、おばばがそう答えてカカと笑いながらさらに続けた。
「まあ、いずれにせよ、道具なしでお客の要求に応える占い師はまずおらんだろうな。というよりも、それをやったら、占い師ではなく預言者とか、それこそ神と呼ばれるようになるのではないかの?」
「それはまあ、そうですね」
 確かにそんなことが出来れば、神と呼ばれてもおかしくはない。
 むしろ、神と呼ばれないほうがおかしいだろう。

 そこまで話をした考助は、聞きたかったことからずれていると考えて軌道修正した。
「では、占い師にとって、唯一無二の道具というのは?」
「本来の意味では、あるはずがないのだがの。そうはいっても今言った通り『占い師』には道具が必要となる。となれば、当然自らの血肉に近いような道具があってもおかしくはないだろう?」
「そういうものですか」
 おばばの言葉は、一見矛盾しているようにも感じるが、占い師という役割を考えると当然の回答だ。
「そういうものじゃよ。それに、そなたが聞きたいことは、そういうことではないだろう?」
「まあ、そうですね」
「もうわかっているから答えるが、そもそも神具の力を自分の力と勘違いしては、占い師としては駄目よ。勿論、道具との相性というものもあるから何とも言えんがの」
 そう言っておばばが何かを思い浮かべるような顔になった。
 勿論、今回話題の渦中にある占い師のことを考えているのだ。

 おばばもすでにあの占い師が、神具を失ったことを聞いている。
 そのことを念頭に置いたうえでの言葉に、考助は頷いた。
「では、今がちょうどいいタイミングなのかもしれませんね」
「ふむ・・・・・・」
 考助のその言葉を聞いて、おばばが顎に手を当てて考え込んだ。
 おばばは、考助が管理層で作っていた物のことについてピーチから話を聞いていた。
 それはピーチが勝手に話をしたのではなく、考助が相談するために話を持ち掛けていたのだ。

 少しだけ考えたおばばは、やがて首を左右に振った。
「いや、それはやめておいた方が良いじゃろ」
 その否定の言葉に、考助は目を瞬いた。
「それは、なぜでしょうか?」
「いま、そなたが作った道具を渡せば、それこそ道具に逃げることになりかねん。道具だけに頼り切るようになってはおしまいだよ」
 そのおばばの言葉は、長年多くの弟子を育ててきた者としての重みがあった。
 それを聞いた考助は、おばばに頭を下げた。
「浅はかすぎました。すみません」
「カカカ。謝る必要などありゃせん。現人神として、腰が低すぎるもの問題じゃぞ。コウスケ殿」
 そう言って笑うおばばに、考助は苦笑を返すことしかできなかった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助を納得させるための話し合いは、ピーチとミアを加えて行われた。
 ピーチは、加えないと駄目だろうということでシュレインが呼びに行き、その間にミアが面白そうだということで、無理やりに混ざってきたのだ。
 動けない考助の代わりに自分たちが動くというのは一致した意見になっていたが、それでは考助を納得させるための大義名分はどうするか、という段になると様々な意見が出された。
 ワイワイと話し合いが行われる中で、ミアの一言が決め手になった。
「母上たちは何のために動くことにしたのでしょうか?」
 そのミアの一言に、集まっていた全員がぴたりと口を閉じた。
 いろいろと意見を出していくうちに、そもそもの目的を忘れてしまっていた。
 結局そのあとは、まじめに(?)意見が出されて最終的な案が決まった。

 
「・・・・・・それで決まったのが、その案?」
「まあ、そういうことじゃの」
 管理層に戻るなり、全員集合した女性陣から話を聞かされた考助が首を傾げながら問いかけると、シュレインが満足そうにうなずいた。
 他の女性たちも同じように満足げな表情になっている。
 それを確認した考助は、苦笑を返すことしかできなかった。
 現人神という立場のおかげで自分が動けなくなっているという自覚はなかったが、確かにいわれてみれば、という思いもないわけではない。
 それであるならば、せっかく皆が考えてくれた案に乗っかるのも悪くないだろうと思えた。
 それに、自分が考えていたことは、おばばに否定されてしまったばかりだ。
 自分が動かずに、女性たちに任せてしまうというのには少しばかり抵抗もあるが、彼女たちのやる気に満ちた顔を見れば、逆にそれは失礼に当たる。
 そんなことを考えた考助は、最終的に女性陣にゴーサインを出すことになるのであった。
す、すいません。
今日の分に入れられませんでした。
おばばとの話が意外に長引いたのが誤算です><
じ、次回こそは!
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