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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔の地脈の力を使ってみよう

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(12) 神殿との交渉

 シルヴィアは、コウヒとシュレインを伴って、ミクセンのエリサミール神殿を訪ねていた。
 急激に拡大しているリラアマミヤのことに関して、出来る限りの楔を打っておこうと考えたのだ。
 コウヒはともかく、何故シュレインがいるのかというと、ただ単に、前回来た時には神殿に入ることが出来なかったから、という理由でついてきた。
 ローレルが来るまで待たされていた間は、部屋の中できょろきょろと辺りを見回していたのだが、現在は落ちついて三人の前にいる人物を見ていた。
 シルヴィアたちが神殿に来てからすぐにこの部屋に通されたのだが、面会を申し出た相手のことを考えれば異例の対応だ。
 前回のことが効いているのか、あるいは、今回もコウヒを連れてきているおかげだろう。
「それで、今日はどのようなご用件でしょう?」
 三人の前に座っているローレルが、表面上は穏やかな表情で問いかけて来た。
 コウヒを一緒に連れてきていなければ、間違いなくここまでスムーズに会うことはできなかっただろう、とシルヴィアは考えている。
 常識的に考えて、神殿長相手にアポもなしに訪ねてきて、すぐに会えるなんてことは、あり得ない。
 しかもローレルの両脇には、神殿の位で次席に当たる神官が二人控えていた。
 神殿側としては、出来る限り万全の態勢で臨んでるのがよくわかる図式だった。
「今日は一つお願いがありまして、伺わせていただきましたわ」
「・・・お願い、ですか?」
 シルヴィアの言葉に、ローレルは少しだけ首を傾げた。
「そうですわ。・・・リラアマミヤについてはご存知ですか?」
「さて・・・私は、存じませんが・・・」
 ローレルはそう言って、脇に控えている二人を見た。
 しかし、二人ともその名前には心当たりがないのか、首を振っている。
「つい先日名前がついたばかりですから仕方ありませんわ。では、アマミヤの塔のなかで結成された、クラウンという組織はご存知ですか?」
 それを聞いたローレルの表情は、特に変化を見せなかった。
 だが、すぐに首を縦に振る。
「ええ。それはもちろん存じております」

 さすがに、ここ数か月で大陸の中でも指折りの大組織になったクラウンのことを知らないということは、いくら聖職者とは言えあり得ないだろう。
 信者たちからも、噂という形でいくらでもその話は入ってきている。
「その組織が先日、リラアマミヤと組織名を付けたのですわ」
「・・・・・・なるほど」
 ローレルは頷きつつ、疑問を口にした。
「それで? そのリラアマミヤという組織がどうかしましたか?」
「単刀直入に言えば、神殿として、今後一切の干渉をしないでいただきたいのですわ」
「それは・・・」
「勿論、塔の中に神殿を作りたいというのであれば、歓迎いたしますわ」
 リラアマミヤという名前は知らなかったが、クラウンという組織が、塔の内部に出来た組織であることは、周知の事実だ。
 塔の中で行われる活動のほとんどを、その組織が握っているのだから有名になって当然である。
 シルヴィアがこう言うということは、彼女がその組織の関係者であることを示している。
 当然、一緒にいた考助も同じであると考えるのが自然であった。
 シルヴィアの言葉に、ローレルは考えるそぶりを見せた。
 はっきり言えば、転移門でつながっている以上、塔の中に神殿を作る意味はほとんどない。
 距離的な制約がほとんどないからだ。
 シルヴィアがわざわざ口にしたということは、神殿としての本来の役目は塔内でしてもいいが、それ以外のことで口出しをしてくるな、ということになる。
 加えてリラアマミヤに関しても同様の扱いにしろということになる。

 そこまで考えたローレルは、一つ探りを入れることにした。
「やはりあの方とアマミヤの塔は関係があるということですね?」
「コウスケ様は、塔の管理者ですわ」
 あっさりシルヴィアの口から出て来た回答に、神殿関係者三人は動揺を隠せなかった。
 前回の訪問時は、考助が管理者であることまでは、言っていなかった。
 とは言え、神殿を騒がせた力の持ち主の上に、コウヒという存在まで引き連れていたのだから、あるいは、という予想はたてていたのだ。
「それは、こうしてこの場で言うということは、公言しても構わないということでしょうか?」
「どうでしょう? コウスケ様が、その名前を神殿に勝手に利用される事をどう思うかまでは、私は存じませんわ。ですが、わざわざ私が口にしなくても彼の方を見れば一目瞭然ですわね」
 シルヴィアが言う「彼の方」というのは、ここにいるコウヒのことだ。
 そのコウヒは、明らかに面白くなさそうな表情をしていた。
 ちなみに、これはわざとである。
 彼女が考助の名前を勝手に使われて、面白く思うはずがないのだ。
 であれば、最初から表情で分からせた方が伝えやすいと、考えてのことだった。
「そうですか・・・。しかし干渉するな、とはどういうことですか?」
 さすがに先ほどの言い方には、首を傾げるローレルである。
 神殿側にしてみれば、リラアマミヤは普通の活動をしている組織だ。
 言われなくても神殿として、特に何かしようとは、思っていなかった。
 わざわざそのことをここまで言いに来る理由が、思い当たらなかった。
「横槍を入れてくるギルドもあるでしょうということですわ」
 簡単に言えば、リラアマミヤを面白く思わない組織が、神殿をつついて動かすこともあるだろうということだ。
 本来神殿というのは、そう言うことに関わってはいない、というのが表向きの立場だが、この場にいる誰もそんなことは信じてはいない。
「そういう事ですか・・・。しかし、神殿にも立場というものが・・・」
 一旦は断ろうとしたローレルだが、それをシルヴィアの言葉に遮られた。
「それならそれで構いませんが、その時は彼の方が出てくるだけですわ」
「・・・・・・」
 はっきり言って、神殿にとってのコウヒの存在は、神に次ぐ存在だ。
 シルヴィアはあえて「お願い」としているが、コウヒがわざわざこの場にいるということは、神殿側にとっては、ほとんど神託に近いものがある。
 ましてやコウヒの持つ力に関しては、前回に思い知らされている。
 流石にあれが、まだ全開であったこととは思ってもいないが、それでも十分すぎるほどの力だった。
「・・・わかりました。エリサミール神殿は、リラアマミヤに対して、余計な手出しをしないことを約束します」
 ローレルのその言葉に、シルヴィアは大きく頷いた。
「ありがとうございます」

 これで、彼女たちがここに来た用事が終わったわけであるが、最後にローレルの脇に控えていた神官の一人が、地雷をそれと知らずに踏みつけた。
「あの、コウヒ様・・・!!」
 彼としては、問いかけのつもりで名前を呼んだだけである。
 前回の訪問時に、考助がそう呼んでいたのを、しっかりと記憶していた。
 だが、それがまずかった。
 名前を呼ばれたコウヒからその神官に対して、威圧が飛んできたのである。
「・・・いつ、私がその名を口にしていいと許可しましたか?」
 前回ほどの力の奔流ではない。しかしそれでも、十分すぎるほどの圧力だった。
「も・・・申し訳ありませんでした」
 コウヒの名前を呼んだ神官は、何とかそれだけを口にした。
 その次の瞬間には、コウヒから放たれている威圧はあっさりと消え去った。
 ほんの数秒間の出来事だったが、それだけで彼の神官服の中は、汗だくになっていた。
 その様子を見ていた神殿関係者二人も直接向けられたわけでもないのに、冷や汗を流していた。
「迂闊者よのう。彼の者にとって、名前が重要であることなど、そなたらにとっては、周知の事実であろうに」
 シュレインの呆れたような言葉に、ぐうの音も出ない神官であった。
 結局、その神官がコウヒに対して問いかけようとした質問は、最後まで問いかけられることは無かったのであった。
2014/5/11 誤字脱字修正
2014/6/14 誤字修正
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