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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6部 第1章 水鏡

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(12)盗難

 深夜。
 普段なら完全に寝静まっているはずの時間だが、珍しいことに考助は突然起こされた。
「コウスケさん、コウスケさん、起きてください~」
「ん? フア・・・・・・? ピーチ?」
 考助は完全に寝ぼけ頭で、まだ暗い部屋の中、何とかピーチを確認した。
 そして、周囲の状況がまだ完全にくらいことを確認して、すぐに何か起こったのを察した。
 考助は、頭を左右に振って寝ぼけているのを振り払った。
「どうしたの? 何かあった?」
「こんな時間にすみませんです~。ですが、例の占い師のところで急変がありまして・・・・・・」
「うん。わかった。何があったの?」
「それが、どうやら、例の水鏡、盗難にあったようです」
 ピーチがそう言ったのを聞いた考助は、一瞬頭が真っ白になった。
「・・・・・・ハイ?」
「盗難です。夜盗が忍び込んで盗んでいくのを見張っている者が見つけたようです」
 手出しは厳禁、という指示が出ているため、占い師を監視している者たちも手出しはせずに、見ているだけだった。
 勿論、盗み出した者がどこへ運び込んだかは、きちんと確認してある。

 ピーチの話を聞いて状況を理解した考助は、さらに質問をした。
「あの占い師はそのことに気付いているの?」
「いいえ。まだのようですね~。完全にやり手の犯行だと言っていました」
 違う部屋に置かれていたとはいえ、留守のときを狙うのではなく、寝るのを待ってからその横で盗みに入ったのだ。
 相当な実力の持ち主であることは間違いない。
「それはまた、厄介な」
 裏で動いているのが、かなりの大物だということがわかった考助は、暗がりの中で頭を抱えた。
 なんで寝ている部屋と同じ場所に置いておかなかったんだと言いたいが、そもそもそれでも同じことが起こった可能性のほうが高い。
 それほどまでに、盗み出した者の技量が高かったというのが監視していた者の言葉だった。

 水鏡が盗まれたと聞いて、考助が真っ先に気になったことがある。
「それで? 暴走とかは?」
「いいえ。そうしたことは、特に起こっていないそうです~」
 ピーチも考助が何を気にするのかわかっているため、報告しに来たものにすぐにそのことを確認したが、目立った変化は起こっていないという回答をもらった。
 その返事を聞いた考助は、安堵のため息を吐いたが、同時に首をひねった。
「うーん。おかしいな? そんな状況になれば、暴走するかどうかはともかくとして、何か起こってもおかしくはないと思ったんだけれど?」
 考助は、水鏡があの女占い師を気に入っていたからこそ、道具として使われていることを選択したと考えていた。
 だが、盗まれた状況にもかかわらず何もアクションを起こしていないとなると、その考助の予想が外れていた可能性もある。

 どういうことだろうと考えた考助だったが、首を左右に振った。
 今はそんなことよりも、水鏡をどうするかを考えなくてはならない。
 だが、その答えはすぐに出た。
「とりあえず、今まで通り水鏡がどこにあるかを把握するようにしてほしい。状況が状況だけに、まともじゃない所に行く可能性が高くなったけれど・・・・・・」
 そもそも人の持ち物を盗み出すということが、まともな扱いをされる保証がないことを意味している。
 今までは一人の女性のところを見張っていればそれでよかったが、これからあの水鏡がどういう扱いになるか、まったくわからない状態に置かれたといっていいだろう。
 監視をするにしても今まで以上に難しくなったともいえる。

 若干不安そうな顔になった考助に、ピーチが小さく微笑んだ。
「それは大丈夫ですよ~。そういうときのために、私たちがいるのですから」
 安心してください、と続けたピーチに、考助も笑顔を見せた。
「そう。まだ様子見でいいから。とにかく見失わないようにしておいて」
「はい~。わかりました。そう伝えておきます」
 考助が指示を出すと、ピーチが頷きを返した。

 とりあえずの指示をもらったピーチは、そのまま里へと戻った。
 指示内容は以前と変わっていないが、より注意が必要になったのは間違いない。
 そうしたことも含めてある程度細かく指示する必要がある。
 管理層を出て行くピーチを見送った考助は、もう一度寝直すために、自分の部屋へと戻るのであった。

 
 ピーチからの報告を受けたのが深夜だったため、他のメンバーたちへ情報が伝わったのは翌朝だった。
 里へ戻ったピーチの代わりに、考助がみなへと報告をした。
 そして、その報告を聞いた一同の表情は、一斉に渋いものとなった。
「それはまた、予想外な・・・・・・いや、あり得る話か?」
「持ち主が寝ている隣で堂々と盗み出すとはの。大胆といえば大胆じゃが、あまりに無防備過ぎないかの?」
「普通はそんな技量の持ち主が、自分の家の物を盗っていくなんて考えませんからね。お屋敷に住んでいるならともかく」
 フローリア、シュレイン、シルヴィアが、口々にそれぞれの感想を述べた。
 ちなみに、コレットは里で子育ての真っ最中で、最近は管理層にはほとんど来ていない。

 ひとりきり感想を述べたフローリアが、視線を考助へと向けた。
「それで? この後はどう対応するのだ?」
「いや、それなんだけれどね。少し考えたら、今まで通りでいい気がしてきた」
「ほう?」
 盗人のもとにあれば危険だと考えることが普通だが、考助はピーチから報告を受けてから少し経って、その考えを改めていた。
「そもそも占い師が持っていようと、盗人が持っていようと、収集家の手に渡ろうと、水鏡にしてみたらあまり状況は変わらないのかと思ってね」
 その考助の言葉に、フローリアたちは顔を見合わせた。

 そもそも人の立場は、神具である水鏡にとってはどうでもいい事柄だ。
 要は自分を乱雑に扱わなければ、特に問題はない。
 盗人の手に渡ったといっても、その場で水鏡を壊すために盗んだわけではなく、高く売れると見込んだからこそ占い師のもとから盗んでいったのだ。
 当然、売れるまでは大事に扱うだろう。
 そういう意味では、神具は誰の手にあっても構わない。
 占い師の手にあったほうが幸せだとか、コレクターの手に渡ったほうがいいとかいうのは、あくまでも人側の物差しでしかないのである。

「なるほど。確かに言われてみればそうじゃの」
「ふむ。人の善悪で考えてはだめか」
 何とも考助らしい(?)解説に、シュレインもフローリアも納得したように頷いている。
「ということは、このまま様子見ですか?」
「うん。まあ、よほど乱雑に扱っているとかじゃない限りはね」
 シルヴィアの問いかけに、考助も頷いて答えた。
 その考助に補足するように、フローリアが付け加えた。
「それに、占い師とやらもさすがに被害届は出すだろう。そうなれば、警備兵あたりが動くのではないか?」
「だろうね。その辺は、ちゃんとした組織に任せておくさ。僕らの出番はなし」
 きっぱりと言い放った考助に、シルヴィアが不安そうな顔を向けてきた。
「それはいいのですが、そうすると神具が暴走する条件とは、一体何なのでしょうか?」
「うーん。すべての神具がそうだとはいわないけれど、たぶん、本来の扱いとは全く関係ないことをされたらじゃないかな?」

 考助が言いたいのは、今回の水鏡を使って盾のように扱ったり、あるいは、調査と称していろいろといじくりまわしたりするような状況のことだ。
「そういう意味では、どちらかといえば、神殿にある方が危険かもしれないね」
「それは・・・・・・否定できませんわね」
 神殿は過去に何度かそういう事故を起こしているので、シルヴィアも否定することが出来ない。
 それに、確かに言われてみれば、シルヴィアが知っている神具の暴走も、考助が今言ったような状況に置かれているときが多い。
 勿論、剣などが戦いの最中に力を扱いきれなくて暴走を起こすということもあるのだが。

 とにかく、考助が出した様子見という結論に反対するものは誰もいなかった。
 結局のところ、事前に神具の暴走を防ごうとしても、どういう状況でそれが起こるのかがわかっていないとどうしようもないのである。
 むしろ、現人神である考助が下手にかかわったほうが暴走しやすそうだというのは、以前と変わっていないのであった。
盗まれました!w
で、改めて考助が考察しました。
ぶっちゃけ誰の手元にあっても変わらないんじゃないかと。
変に分析とかされない限りは、ある場所さえ把握しておくだけでいいと結論づけました。
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