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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6部 第1章 水鏡

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(8)状況整理

 何か状況の変化が起きない限りは手出しをしないことを決めた考助は、サキュバスの里へ向かった。
 自分が手出しをしないからといって、完全に無視をするわけではない。
 何かが起こればいつでも介入ができるように、様子をうかがっておく必要がある。
 そのための人材をサキュバスに出してもらうため、里を訪ねてきたのである。
 付け加えれば、他の二つの神具に関しても何か手掛かりがあればと考えたこともある。
 もっとも以前に占いをしてもらってから数日も経っていないので、次の手掛かりを得ることはあまり期待はしていない。
 どちらかといえば、前のときと何かが変わったことがないかを確認したい。
 そんなことを考えながら考助は、ピーチのいる屋敷へと向かった。

「結局そうなりましたか~」
 屋敷でピーチに状況を話すと、彼女は納得したように頷いた。
 ミクセンで占いをしてもらって別れてから、ピーチなりにどうするかを考えていたのだ。
「あの占い師に監視をつけるのは問題ないでしょうが、占いはあまり変わらないと思いますよ?」
「ああ、それはそうだろうね。あくまで念のためと、あとは事態が急変したりしていないかの確認もかねて、かな」
「そうですか」
 考助の目的が知れたピーチは、考え込むような顔になる。
「あれ? 何か問題でもあった?」
「いえ~。占いではなく、監視につける人員をどうしようかと思いまして」
 本来であれば、サキュバスたちの活動内容は、長をはじめとした里の有力者が決めている。
 ただし、考助がかかわる案件に関しては、ピーチが口を挟める。
 考助と長が直接やり取りをするよりも、間にピーチが入ったほうがいいという考えでそうなっているのだ。

 少しの間うつむきながら考えていたピーチは、顔を上げて言った。
「一応今回は、二・三人で見張ってもらいましょうか~」
「二・三人? それで足りるの?」
 監視などには全く詳しくない考助だが、さすがにそれだけでずっと一人の人間を見張っているのは足りるとは思えなかった。
 いくら、荒事がなかったとしても、である。
 だが、そんな考助に、ピーチはコクリと頷いた。
「大丈夫だと思いますよ~。それに、情報を集めたりするのは、もともとの人間がいますから」
 ミクセンの街には、もともとサキュバスが何人か入って、常に情報を集めている。
 いざとなれば、そうした者たちも動くことが出来る。
 ピーチが選ぶ者たちは、あくまでも今回の件で、専属で動ける者たちだ。
 さらに、塔から転移門で移動できるミクセンは、動きが怪しくなればすぐに増員することも難しくはない。

 いつものことながら影の者たちのことに関しては、まったくのど素人の考助は、余計な口を挟めばろくなことにならないとわかっているので、ピーチの言葉に頷いた。
「そうなんだ。それじゃあ、そっちの調整はお願いしていい?」
「勿論です~」
 考助は、そう言って笑顔になるピーチをじっと見つめた。
「? どうしました?」
 そう言って首を傾げるピーチを考助が変わらずに見ていると、ピーチは少しばかり恥ずかしそうな顔になった。
「・・・・・・ええと?」
「うん。いや、なんでもないよ」
「ええ~? 気になるじゃないですかぁ」
 そう言ってきたピーチに、結局考助はクスリと笑って、それ以上は何も言わなかった。

 改めて惚れ直したなんてことは、恥ずかしすぎて口にはできない。
 ずっと胸の内にしまっておこうと決意する考助であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ピーチと話したあとは、長に話をして女占い師に監視をつけてもらうことにした。
 基本的にはこちらから手を出すことはないので、荒事ができる者じゃなくてもいい。
 何かが起これば、素早く動ける者のほうがいいのだ。
 もっとも、影として荒事に長けている者は、多くが素早く行動できるものだったりするのだが。
 ピーチが選んだ三人に加えて、長がさらに二人ほどを選んで今回の件の影として動くことになった。
 そして、占い師の件に関しては、この五人がピーチに情報を渡すことに決まった。

 監視員を決めたあとは、おばばに来てもらって以前と同じように占いをしてもらう。
 その際に、やはりピーチと同じことをおばばも言ってきたが、考助はピーチのときと同じように答えた。
 その考助の言葉を聞いて、おばばも納得してから占いをしたが、やはり特に大きな変化はなかった。
 さすがに二つ目の神具の情報まで今の段階で得るのは虫が良すぎたかと反省する考助であった。

 
 サキュバスの里から戻った考助は、シュレイン、シルヴィア、フローリアの三人にもピーチのフォローをしてもらうように頼んだ。
 そもそも子育て真っ最中のピーチの負担は、できるだけ減らすようにしておきたい。
 本来なら、ピーチを今回の件にかかわらせないというのが一番いいのだが、事情が事情だけにそういうわけにもいかない。
 であるなら、できるだけ周囲の人間でできる限りフォローをするしかない。
 幸いというか、当然というべきか、三人は快く考助の提案を受け入れた。
 そもそも考助が話をしなくても、個々にそういった対応はするつもりだったようだったが。

 そして、シュレインたちと話をしたあとの考助はというと、魔道具作成部屋に入っていた。
「今度は何を作るの?」
 部屋に入るなり、一緒についてきたミツキが聞いてきた。
 考助が魔道具を作るときにこんなことを聞いてくることはほとんどないミツキだが、その表情はすでにわかっていると言いたげだ。
 聞かれた考助は、ニヤリと笑みを浮かべて答える。
「想像通りだと思うよ」
「あら。わかっていて、あえて聞きたいのに、教えてくれないのかしら?」
 ミツキは考助の笑みに答えるように、クスリと笑った。
 別に考助としては、わざわざ隠しとおすつもりはない。
「まあ、今回の件に関係する物をちょっとね。使わないかもしれないけれど」
「そう」
 そう短く返事を返してきたミツキは、小さく頷いた。
 今の質問は、単に自身が答えを知りたいだけで聞いたわけではない。
 魔道具に関しては暴走しがちな考助の考えを、きちんと認識させるためにも聞いている。
 そんなミツキの配慮(?)が功を奏したのか、考助は落ち着いた気分で魔道具の作成に取り掛かることが出来たのであった。

 考助が魔道具を作るために部屋にこもったちょうどそのころ。
 シルヴィアとフローリアが、顔を突き合わせて話をしていた。
「聖職者の馬鹿が先走る可能性はどれくらいだと思う?」
「どうでしょうね。五分五分、といったところでしょうか」
 シルヴィアと自分の認識がほぼ同じだと分かったフローリアは、小さく頷いた。
「まあ、そんなものか」
「それよりも、私としては好事家たちが動く確率のほうが高いと思っていますが?」
 そのシルヴィアの指摘に、フローリアも渋い顔になった。
「あり得るだろうな。むしろ一番高いのはその好事家と聖職者が手を組むことだと思っているが?」
 確認するような視線を向けてきたフローリアに、シルヴィアも頷いた。
「そうですね。それが一番高いでしょうね」
「珍しい道具を使った占い師の噂がたってから二カ月・・・・・・。そろそろしびれを切らしてもおかしくはないな」
「・・・・・・でしょうね」

 そこまで話したふたりは、同時に視線を考助のいる部屋に向けた。
「ここまで行くと一種の才能と言っていいだろうな」
「いえ、それは・・・・・・。ない、とは、いえないですが・・・・・・」
 フローリアの言葉に、シルヴィアが歯切れの悪い返事を返す。
 これだけの状況が揃ってしまえば、何にも起こらないと考える人間のほうが少ないだろう。
 考助が首を突っ込むなり、状況が動き出しそうになるのは、いつものことだとシルヴィアとフローリアはそろってため息を吐くのであった。
今回は管理層側の状況。
次はミクセン側の状況、かな?
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