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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6部 第1章 水鏡

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(4)おばば

 行方不明になった神具を探すといっても手掛かりなしではどうしようもない。
 そのため、まずは少しでもいいからヒントになるようなことでもわからないかと、考助はピーチのいる屋敷を訪ねた。
 子供をあやしているピーチに、今回のことを話すと、ピーチは納得したように頷いた。
「なるほど~。それで占いの力を借りようというわけですか」
「そうなんだよね」
 軽く頷いた考助に、ピーチは微妙な表情になった。
「うーん。でもちょっと難しいかもしれません」
「あれ? 駄目かな?」
 ピーチの意外な言葉に、考助は少しだけ目を見開いて、驚きの顔になった。
 今までピーチは、考助に何かあると占い的な何かでいろいろと助けてくれていた。
 今回もそれが働かないかと期待してやってきたのだ。
 それが駄目となると、当てが外れてしまうことになる。

 若干困ったような顔になった考助に、ピーチが首を左右に振った。
「駄目、というわけではないです。ただ、今の状態で占いをすると、どうしてもこの子のことに意識が向いてしまいますから」
 ピーチは現在、乳児を育てている真っ最中だ。
 その意識はどうしてもミクへと向いてしまい、占いにも影響が出てしまうのである。
 考助の加護の力にしても、今は恐らく子供のほうに向いてしまっているというのが、ピーチの見解だった。
 そんな状態で占ってもどうしても結果がゆがめられてしまう。
 ちなみに、サキュバスの女占い師たちが子供を授かった場合、育児期間は占いをしないという取り決めがある。

 納得できるピーチの説明に、考助は頷いた。
「なるほどね。それじゃあ、やめたほうがいいか。・・・・・・さて、それじゃあどうしようか」
 アスラから探し物の依頼を受けたときに、真っ先に頼りにしようとしたのがピーチの占いだったので、これからどうしようかと考助は頭を悩ました。
 サキュバスを使って噂を集めるにしても、ある程度の範囲を絞らないと、とんでもない時間がかかることになる。
 何しろ三種類の神具がどこにあるのかわかっているのは「この世界のどこか」というだけで、他には何の手掛かりもないのだ。
 それだとあまりに範囲が広すぎる。
 少しでもその範囲を絞れないかとピーチを頼ってきたのだが、それが駄目となると、さてどうしたものかということになる。

 そんな考助に、ピーチが助け舟を出すようにとある提案をしてきた。
「あの、私が占うのは駄目ですが、他の方を紹介することはできますよ~?」
「あ、そうか。その手があったか」
 今更といえば今更過ぎるピーチの提案に、考助は右手を握って左手の手のひらにポンと打ち付けた。
 占いができるのは別にピーチだけに限ったことではない。
 勿論、その精度に関しては落ちたりするだろうが、今の全く何の手掛かりもない状態よりは、ましである。
「お願い。頼めるかな?」
 占ってもらう内容が内容だけに、口が堅い人というのが必須になるが、それでなくとも口が堅くなくてはやっていけない商売だ。
 それに加えて考助(現人神)からの依頼ともなれば、そこから情報が洩れることはないだろう。
 そう考えた考助は、すぐにピーチに占い師を紹介してもらうように頼むことにした。
「ところで、だれに頼むの?」
「それは勿論、おばば様です~」
 そのピーチの答えに、考助は「ああ」と元気に笑っているひとりの老女を思い浮かべるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ピーチが言った「おばば様」というのは、サキュバスの村で一番の占い師である。
 もともとピーチが以前の里を旅立つことになったのも、おばば様の占いの結果だった。
 占いの腕だけではなく、多くの弟子を育ててきたため、村ではときに長以上の発言力を持つことさえある人物だ。
 そのおばば様は、基本的に自分の住んでいる家から出ることはない。
 だが、さすがに今回は、現人神直々の依頼ということで、ピーチが住む屋敷へと出向くことになった。
 もともと考助は、こちらがお願いしていることなので、と自分が出向くつもりだったのだが、長をはじめとしたサキュバスたちに止められたのである。
 その結果、おばば様が占いのために自分の住む家を出るというのは、十数年ぶりという事態になるのであった。

 急遽占いのために用意された部屋の椅子におばばが腰かけて相手を待っていると、部屋の扉があいて考助が入ってきた。
「ホッホッホ。ようこそ、いらっしゃいませ」
「いや、こちらこそ。わざわざこっちに来てもらってすみません」
「何の。一族を救ってくれた恩人のためじゃ。儂が足を運ぶことくらい、何てことはありゃせん」
 そう言って、再び笑い声をあげたおばばを見て、考助も小さく笑みを浮かべた。
 実際、かなりの高齢のはずのおばばだが、足腰はしっかりしている。
 占いのために外に出なくなったのは、単に他の者たちへの影響を考えてのことである。

 そんな考助を見ながらおばばが軽い調子で話し出した。
「さて、そろそろ始めましょうかね。正直、神を相手に儂の占いがどこまで通じるかはわかりゃしませんが・・・・・・」
 それは掛け値なしにおばばの本気の言葉だったが、考助は首を左右に振った。
「あなたの腕のことはピーチから聞いています。あなたが駄目なら、他の誰でも駄目だろうとも」
「やれやれあの子は」
 ため息をはくようにして言ったおばばに、考助もまた気楽な調子で返した。
「まあ、駄目なら駄目でまた次の手を考えますから、まずはやってみてください」
「勿論だとも。儂はそのためにここまで来たんだからの」
 自分を励ますつもりの言葉と理解したおばばは、大きくうなずいて自らの商売道具に手をおいた。

 おばばは、すでに考助が何の占いを所望しているのかは話を聞いている。
 失せ物探し。
 占い師にとっては定番中の定番の占いだが、それだけに難しいともいえる。
 ましてや、相手は現人神その人なのだ。
 おばばにとっては未知の体験だが、それでもいつも通りの手順で占いを進めていった。
 答えられる範囲でかまわないと断っておいてから、いくつかの質問を考助に対して行い、それについて一つ一つ結果を出していく。
 そうして出てきた占いの結果に、おばばは首を傾げることとなった。

 首を傾げて黙ってしまったおばばを見て、考助は声をかけることにした。
「あの、どうかしましたか?」
 その言葉で、おばばがはっとした表情を考助へと向けた。
「いや、思ってもみなかった結果が出てきての」
「思ってもみなかった?」
「うむ。そうなんじゃが・・・・・・これは、お主に話す前に呼んだほうがいいな。おい、誰か!」
 おばばが声を張り上げて部屋の外に待機している者へと呼びかける。
 すると、その声に気付いてすぐに扉が開いた。
「すまんが、長とピーチを呼んできておくれ」
「はい」
 おばばに呼ばれて入ってきた者は、それだけを答えてすぐに部屋を出ていった。

「あの・・・・・・?」
 状況がわからずに、考助が首を傾げておばばにそう聞くと、おばばは難しい表情になって考助を見た。
「勝手に話を進めてすまんの。だが、結果に協力者が必要だと出ておっての」
「協力者?」
 誰が協力者なのかは、先ほどの会話でわかる。
 だが、何のために必要なのかがわからない。
「うむ。占いにそう出ておるんじゃが、儂にはさっぱりでの。いっそのこと、当事者を呼んだほうが早いと思ったわけじゃ」
「そうでしたか」
 何が何やらさっぱりだったが、おばばがそう判断したのだったら任せたほうがいいと考助は短くそう返事を返すのであった。
おばば登場!
本編では初登場ですかね。
ピーチが里を出ることになった原因の張本人でございますw
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