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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7章 塔のあれこれ(その14)

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(8)新たな加護?

 第八層にある百合之神社に、セシルとアリサの二人が訪ねてきていた。
 今の百合之神社は、基本的にエリが管理をしている。
 サキやミキはすでに奴隷から解放されて、家庭を持っている。
 エリが残ることになったのは、出会いがなかったなどの理由はあるが、なんだかんだで居心地が良かったからというのが一番大きい。
 勿論、エリ一人だけで神社のすべてを管理するのは不可能だ。
 今のようにセシルやアリサが訪ねてきては手伝ってくれることもあるが、今のふたりは、クラウンの依頼で教員の仕事をしたり、本を書いたりと忙しい日々を送っている。
 では、代わりに誰の手を借りているのかといえば、神社の周辺を住処にしている狐たちであった。
 ただの狐はエリの手伝いはできないが、人化のできる狐たちが、エリのいうことを聞きながら建物の掃除などを行うのである。
 その報酬はエリの手料理だったりするので、どちらにとっても利のある状態になっていた。
 ちなみに、人化できる狐たちからはエリは『お母さん』と呼ばれていたりするのだが、本人はそれをニコニコと笑って受け止めている。

 狐たちがバタバタと動き回る中で、三人は久しぶりにのんびりとした会話をしていた。
 エリはともかく、セシルやアリサはお互いに忙しい状態になっており、以前のように毎日顔を合わせるというわけにはいかなくなっている。
 今日も久しぶりに休みが合ったため、百合之神社を訪ねてきたのだ。
 そんな三人のもとに、狐たちの様子を見に来た考助がやってきた。
「ああ、セシルとアリサじゃないか。来ていたんだね」
「「「コウスケ様」」」
 ひょっこりと顔を見せた考助に、三人は慌てず騒がずゆっくりと頭を下げた。
 考助がいきなり現れることは、ここではごく普通のことなのだ。

「今日は如何されましたか?」
 三人に混ざって座り込んだ考助に、エリが聞いてきた。
「いや。特に何かあるってわけじゃないよ。強いて言うなら狐たちの様子を見に来たくらい?」
「そうですか」
 考助がこういった理由で百合之神社を訪ねてくるのは珍しくないことなので、その理由を聞いたエリも素直に頷いた。
「それよりも、セシルとアリサのふたりが来ているほうが珍しいんじゃない?」
 少なくとも考助が百合之神社で二人と会ったのは、半年以上前のことだ。
 考助の言葉に顔を見合わせたふたりだったが、アリサが首を振りながら言ってきた。
「これでも月に一度は顔を見せているのですが、むしろ忙しくされているのは、コウスケ様ではないでしょうか?」
「あれ? そうなの?」
 考助が首を傾げながらエリを見ると、彼女はコクンと頷いた。
 考助自身は、あまり意識はしていなかったが、確かにいわれてみれば、ガゼンランの塔に行っていたということもあって、ここ最近は塔の見回りをあまりしていなかった。
「あー。言われてみれば、そうかも?」
 そういいながら首を傾げる考助に、三人は揃って苦笑するのであった。

 そんな三人に向かって、考助は先ほどから気になっていたことを話すことにした。
「ところで、話したいことがあるんだけれど、いいかな?」
 いかにもふらりとやってきた考助が突然そんなことを言い出して、三人は目をパチクリとさせた。
 今の今までふらっと来たとだけ言っていたのに、いきなり三人にいうことがあるというのがおかしい。
 突然何かを思いついたとしか思えない考助の言葉に、三人は戸惑っていた。

 そして、考助もまた内心で首を傾げていた。
 今まで兆候すら出ていなかったのに、今日会ってみれば、いきなり三人にそれ(・・)が見えていた。
 それというのが何かといえば、考助の神としての力を三人に与えられるということだ。
 加護ではなく、持って回った言い方になっているのは、加護とはまた違った力のように感じているためである。
 加護の場合であれば、すでに何度か渡しているので見間違えるはずもない。
 だが、それとはまた違った力のように感じて、それが何かよくわからないのだ。
 戸惑う三人の顔を見ながら、考助は正直にそのことを話すことにした。

「・・・・・・と、いうわけで、三人には何かの力が渡せそうなんだけれど、どうする?」
 考助の説明を聞いた三人は、少しだけ驚いたような表情でお互いに顔を見合わせた。
 三人は考助が現人神であることは、当然知っている。
 だからといって、今までむやみに恐縮したりしていなかったのは、それを考助が望んでいたからだ。
 何より、そのせいで仕事ができなくなってしまっては本末転倒である。
 だからこそ、適度な距離を保って考助と付き合ってきたのである。

 ただ、考助からの力を授かることに不満があるわけではない。
 そんな相手をずっと主として、奴隷でいるはずもない。
 単にそんな力を授かっていいのかと戸惑ったのだ。
 そんな三人を代表してアリサが聞いてきた。
「あの、それはコウスケ様の加護に当たるのでしょうか?」
「うーん。それが微妙なんだよね」
「どういうことでしょう?」
 考助の返答に、意味がわからずアリサが首を傾げた。

 そのアリサを見てなんと答えたものかと悩んだ考助は、一つ頷いてから今いる神社の主を呼び出すことにした。
「ユリ、ちょっといいかな?」
「はい、ここに」
 考助の呼びかけに応じて、ユリが姿を現した。
 ちなみに、神社の中で姿を現す分には、時間的制約は全くない。
「前にユリが僕の力で構成されていることは話したと思う」
 わざわざユリを呼び出してそんなことを言い出した考助に、三人はいぶかしげな表情になりながらも頷いた。
 三人は、ユリの由来からどういった存在なのかまで、きちんと考助から話を聞いていた。
「それは、要するに僕とユリとがある程度繋がった関係にあるわけなんだけれど、多分いま三人に力を与えれば、これと似たような力が身につくようになると思うんだ」
 考助が予想しているのは、三人が百合之神社と深くつながった状態になるのだろうというものだった。
 いきなり考助のように、百合之神社に何の制約もなく転移してこられるようになるとは思えないが、それに近いようなことはできるのではないかと考えていた。

 考助の説明を聞いた三人は、その説明に理解を示すと同時に不可解な表情になっている。
 今の考助の説明は、力そのものの説明であって、加護かどうかの説明ではない。
 だが、それに関しては、次の考助の説明で理解できた。
「で、さっきの質問にあった加護にあたるかどうかなんだけれど、これがよくわからないんだよね」
 もっとも、その答えはわからないというものだった。
「どういうことでしょう?」
 セシルたちは、考助がすべてのことを知っている万能の存在などとはかけらも考えていない。
 それは別に幸助のことを神として下に見ているわけではなく、そもそも神とはそういう存在だと理解しているのだ。

 首を傾げながら問いかけてきたセシルに、考助は頷きながら答える。
「これが僕だけの力ならはっきりとわかるけれど、ユリの本来の力と混ざっちゃっているから、どういう結果になるかが読めないんだよ。三人とも長いことこの神社と関係しているからこんなことになっているんだと思うんだけれどね」
 そう正直に答えた考助に、三人は再び顔を見合わせた。
 考助の力を授かることに関しては、特に問題はない。
 それがまさか、この神社とも関係しているとは思っていなかったのだ。
 顔を見合わせている三人を見ながら、考助は首を傾げて聞いた。
「そういうわけなんだけれど、どうする? まあ、別に急ぐわけじゃないけれど・・・・・・あ、いや今日中に返事はほしいかな?」
 もしかすると、将来的には今見えているものがなくなってしまう可能性もないわけではない。
 ただし、考助としてはできる限り三人にはこの話を受けてほしかった。
 神として押し付けるわけではないが、今見えているものがどういった力なのかを確かめたいという欲求がある。
 勿論受けるか受けないかは、彼女たちの自由に任せるつもりだが。

 そんな考助の懸念(?)をよそに、彼女たちは考助の力を授かることを了承した。
 ただ、力を授けてすぐに左目の力で確認したが、そこには何の表示もされていなかった。
 結局、すぐにはわからないということで、三人はそのまましばらく様子を見ることになるのであった。
久しぶりに百合之神社の状況です。
サキやミキは、すでに百合之神社から去っています。
そして、新しい人員は追加せずに、狐たちに管理する方法を教え始めました。
エリは狐たちの(おいしいご飯を作ってくれる)お母さんですw
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