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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7章 塔のあれこれ(その14)

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(7)ユリの力

 アマミヤの塔の第八十三層には、現在狼と狐が混在している。
 考助の眷属である彼らは、自分たちが眷属であることを認識しており、普段は互いの狩場を譲り合って生活していた。
 とはいえ、いかにお互いに考助の眷属とわかっていても、同じ場所で生活をしていれば争いに発展することもある。
 勿論、争いといっても人間でいうところの殴り合いのけんかのようなものが、発生するわけではない。
 あくまでもじゃれあいの延長線上でとどまっているのが現状だった。
 その理由としては、ナナとワンリの存在があることが大きい。
 彼らにとってナナとワンリは、力では絶対に敵うことのできない存在として君臨(?)しているのである。
 ただ、その二匹(一匹とひとり?)をしてもどうにもできない場合がある。
 そういったときには、二人に頼まれて考助自身が彼らの前に姿を現すこともあるのだ。
 まさしく今、ナナとワンリに頼まれて第八十三層に訪ねているように。

 ナナとワンリに頼まれて仲裁にきているからといって、考助が何かをやったり言ったりするわけではない。
 あくまでその場にいるだけで、大体のことは片付く。
 そもそも考助には、彼らがなぜ争っているのかもわかっていないことのほうが多いのだ。
 ナナとワンリではどうしても仲裁できないときは、考助が両者から話を聞いて解決することになるが、そんなことは今までに二度か三度あったかどうかといった回数である。
 今回も考助が何かをするといったことはなく、集まっていた狼と狐はその場からいなくなった。
 それぞれの拠点へと戻ったのだろう。

 狼と狐が去っていくのを見ていた考助に、ナナとワンリが近寄ってきた。
 ナナは謝罪するように考助の手をぺろぺろとなめて、ワンリはわざわざ人型に戻って謝ってきた。
「お兄様、わざわざありがとうございました」
「もう大丈夫なの?」
「はい」
 首を傾げながら聞いてきた考助に向かって、ワンリが小さく頷いた。
「そうか、それじゃあ、このまま階層の様子でも見に行こうか」
「わかりました」
 考助がそう提案すると、ワンリは再び狐の姿に戻る。
 第八十三層は、上級のモンスターが出てくるため、人型でいるよりも狐型に戻ったほうが戦力になるのだ。
 今回はコウヒとミツキが二人そろってついてきているため、特に何かがあるとは思えないが、念のためである。

 地脈の上に建てた神社は、一年程度では特に大きな変化も起こっていなかった。
 それを考えれば、百合之神社がいかに特別だったかがわかる。
 あのときは、アスラの手助けもあったからこそ、ユリという存在が考助の前に姿を現すことができたのだ。
 さすがに二度目の手助けはないか、あってもよほどのことではない限りありえないだろう、と考助は考えている。
 もっといえば、今度はアスラの手助けなしに発現させたいという欲求もある。
 もっとも、アスラにしてみれば、考助の考えも見ぬいたうえで、手助けしてこないということもあり得るだろう。
 とにかく、今は様子を見るという点では以前と変わりがない。

 と、そんなことを考えていた考助だったが、狐たちが拠点にしている神社を見て首を傾げた。
「なんじゃこら?」
「何かあった?」
 神社の前で立ち尽くす考助に、ミツキが不思議そうな顔で聞いてくる。
 考助が、コウヒのほうを見ると、彼女も同じような表情になっていた。
 それを確認した考助は、今自分が見えている光景が、ミツキやコウヒには見えていないことがわかった。

 ふたりの様子を確認した考助は、改めて目の前の神社を見直した。
 そして、何度見ても神社が淡い光に包まれているのが確認できる。
「うーん」
 考助は、首をひねりながら何度も神社の様子を確認する。
 その様子をコウヒとミツキのふたりは、ただ黙ってみていた。
 今までの経験からしても、こういうときは黙っていたほうがいいとわかっているのだ。

 目を閉じたり開いたり、何度か試した結果、わかったことがある。
 それは、右目で見た場合にしかその淡い光が見えない、ということだった。
 さらに、考助はその光をどこかで見たような気がするが、どうしても思い出せなかった。
「精霊・・・・・・でもないしなあ。どこで見たんだろう?」
 精霊の光で包まれる世界樹を見たときもこんな感じで見えたが、あれは個々の精霊が寄り集まっているように見えていた。
 だが、いま目の前にある光は、神社全体を覆っているように見えている。

 その光がどこで見たかは思い出せなかった考助だったが、とりあえず心当たりのある人物(?)に確認をとることにした。
「ユリ、今大丈夫かな?」
 考助がそう呼びかけると、目の前に和服を来た一人の女性が現れた。
 百合之神社に宿る存在であるユリだ。
 最初のころと比べて、かなり存在が安定して力をつけてきた彼女は、エセナと同じようにこうして考助の呼びかけに応えられるようになっていた。
 もっとも、エセナとは違ってまだ出現できる時間は短く、今のところは長くても十分程度で限界を迎える。
 こうして何か質問があるときは、すぐに聞くことができるので、とても便利になっていた。

 考助に呼び出されたユリは、考助を見ながら首を傾げた。
「コウスケ様、いかがなさいましたか?」
「ああ、突然呼び出してごめん。ちょっとあれを見てもらいたいんだけれど・・・・・・」
 ユリは考助を正面に見えるように出現したため、神社は後ろ側にある。
 考助にいわれるままに後ろを振り返ったユリは、納得したように頷いた。
「なるほど。ずいぶんと安定してきていますね」
 ユリは、一目見ただけで考助が何を言いたいのかわかったようだった。
「あの光が何かわかるんだ」
「勿論です。というよりも、コウスケ様が見ているほうが・・・・・・ああ、そうですね。もしかしたら私のせいかもしれません」
「どういうこと?」
 一人で納得するユリに、考助が問いかけた。

 問われたユリは、一つ頷いてから説明を続けた。
「今こうして私がコウスケ様のそばに出てこられるのは、力がつながっているためです。そのつながりを通して、私の見ることができるものが、コウスケ様にも見えるようになっているのだと思います」
「つながり・・・・・・ということは、あれは本来見ることができない?」
「そうです。『目で見る』ことができているのは、私の力とコウスケ様の権能が混ざった結果だと思われます」
「そういうことね」
 本来は同族であるユリしか見ることができない存在を考助が見ることができているのは、今ユリが説明した通りであった。
 今まで考助がこのことに気付いていなかったのは、単純にユリと同族になりそうな存在が今まで確認できなかったためだ。

 だが考助は、ここでひとつの疑問がわいてきた。
「つい先日に来たときは、こんな光は見えなかったけれど?」
 いきなりこんなに顕著な変化が出るのかと疑問に思った考助だったが、ユリはすぐに頷いた。
「はい。私が見た感じでは、恐らく昨日か今朝あたりにこのような状態になったかと思われます」
「へー。そんなことまでわかるんだ」
 感心する考助に、ユリは若干照れたような表情を見せた。
「一応、同族のことですから。ただ、あくまでも力が集まりかけているという感じなので、私のような存在になるにはまだ時間がかかります」
「なるほどね」
 そもそもこの神殿を設置してから長い月日がたっているわけではない。
 ユリの言葉から、やっと力が集まり始めて、これからユリのような存在として出来上がっていくのだと考助は推測した。
 ただ、少なくとも肝心の第一歩を踏み出したことが、これで確認できた。
 ユリと同じように姿かたちを持つにはまだまだ時間がかかりそうだが、少なくとも方向性は間違っていなかったようである。
 これから先の神社のことを考えた考助は、どうやって変化していくのかと楽しみになるのであった。
神社の変化の話を書くはずでしたが、ユリとの力の話がメインになってしまいました。
神社はこれからまた時間をかけて力を蓄えていきます。
ユリのような存在ができるかどうかは、まだはっきりとはわかっていません。
途中で力が霧散してしまう可能性もないわけではないですから。
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