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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7章 塔のあれこれ(その14)

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(6)経緯

 目の前にいる相手の顔を見た考助は、最近どうもこんな視線にさらされることが多い気がする、と考えていた。
 今考助の前にいるのは、自身の息子であるトワだ。
 その息子は考助を何とも言えない表情で見ていた。
「それで、きちんと説明していただけるのでしょうか?」
 最初からけんか腰のトワの口調に、考助は腰が引き気味になっている。
 これで考助に何の心当たりもなければ引け目を感じる必要はないのだが、残念ながら思いっきりその心当たりがある。
 何しろ考助も参列者としてその行事に参加していたのだから、言い逃れできるはずもない。
 助けを求めて周囲を見回したが、どうにも期待できるような顔をしているものは一人もいなかった。

 トワがこんな顔をしているのは、一昨日に行われた結婚式で起こったことを考助からしっかりと聞き出すためである。
 まさか自分の結婚式に三大神が降臨するなんてことはかけらも考えていなかったが、なぜそんなことになったのかは容易に推測ができる。
 そして、その相手を問い詰めるべく、忙しい合間を縫ってようやくこの場に来ることができたというわけだった。
 そのトワの顔を見た考助は、一つため息をついてから話し出した。
「説明といってもね。僕から言えることって特に何もないよ?」
「どういうことでしょう?」
 てっきり考助が三大神の降臨を仕掛けたのかと考えていたトワだったが、なんとなく考助の言い方から違っていると察した。
 首を傾げるトワに、考助はことの流れを話すことにする。
「どうもこうも、あれは僕から言い出したことじゃなくて、彼女たちから言い出したことなんだよ」
「え?」
 てっきり考助が画策したと考えていたトワは、思わず呆けた声をあげてしまった。
 自分の結婚式に、三大神が自ら降臨すると言い出すとは全く考えていなかったのである。

 そのことに気付いた考助は、畳みかけるようにトワに事情を説明しだした。
「そもそも最初のきっかけは、エリスからどうにか祝福できるようにできないか、という連絡をもらったんだよ」
 考助としては、最初は神として手出しをするつもりは全くなかった。
 戴冠式のときと同じように、ただの関係者のふりをして見ているつもりだった。
 それが、突然エリスから連絡が来たかと思えば、このようなことになっていたのである。
 考助も止めようとはしなかったので、同罪といえば同罪だが、そもそもエリスたちの勢いを止められたかといえば、それは疑問である。

 考助からの説明を聞いたトワは、今度こそ本気で頭を抱えた。
「ということはつまり、あれは三大神が本当に私たちのために祝福をくださったと?」
「本当にという意味がわからないけれど、彼女たちから申し出てきたのは間違いないね」
「そうですか・・・・・・」
 そういって頭を抱えたままになったトワに、フローリアが笑いながら話しかけた。
「まあ、諦めるんだな。せいぜい女神さまたちの怒りを買わないように、対処しろよ」
 トワが頭を抱えているのは、フローリアの言う通り、下手な対処の仕方をすれば女神の怒りを買いかねないからである。
 考助からすれば、気にしすぎといいたいところだが、女神から祝福をもらって増長したおかげで、そのあとに女神たちから怒りを買ったという話は、枚挙にいとまがない。
 勿論それは極端な例だが、トワの場合は一国の国王のため、周囲が暴走するとも限らないのである。
 トワは、暴走しそうな周りを見張っていないといけなくなったわけだ。
 ある意味で厄介なことを押し付けられたともいえるが、女神からの祝福の恩恵はそれ以上なので、文句を言える立場ではない。

 そもそも、ラゼクアマミヤにとって一番厄介だった式の主神に関しての問題は、一気に吹き飛んでいた。
 何しろ、降臨した三大神が現人神を認めるような行為をしたのだから、少なくともそれを見ていた者たちがそれに関して文句をつければ、三大神に対して文句をつけるのと同じことになる。
 いくらなんでも、そんな危険を冒してまで馬鹿な真似をする輩はさすがにいないだろう。
 もしそんな存在なり組織なりが出たとしても、それは下手をすれば神々の怒りを買いかねないのだ。
 この場合、実際に神々が直接手を下すことになるかどうかは、問題ではない。
 周囲から三大神の怒りを買うような真似をしたと思われれば、それだけで多大な影響を受けることになる。
 それが個人の場合はともかく、国家となれば下手をすれば、まともな外交ができなくなり、下手をすれば国の存続すら危うくなるのだ。

 ある意味で、ラゼクアマミヤはこと現人神の問題に関しては、この世界では最高の後ろ盾を得たといえる。
 そのメリットを考えれば、トワとダニエラが祝福を得たことで受けるであろう不利益くらいは、対処していくべきだろう。
 そんなことを考えたトワは、ひとつだけため息をついてから言った。
「・・・・・・勿論、そうするつもりですが・・・・・・。どうにも手の平の上で踊らされている気がします」
「今更何を言っておる。相手は、この世界を長年見続けてきた女神たちだぞ?」
 何を当然のことをといった顔になったフローリアを見て、トワはもう一度ため息をついた。
「それもそうでしたね」
 あまりに身近に考助という神がいるために、すっかりそのことを失念していたトワは、女神という存在について再度認識を改めるのであった。

 考助から事情を聞いて何とか納得したトワは、今度は別の疑問を口にした。
「それで、三大神の言っていた祝福とは、どういったものなのでしょうか?」
 式ではエリサミール神が、考助から祝福を得たといっていた。
 わざわざ三大神が顕現している以上、彼女たちからも祝福を得ているが、トワはそれよりも考助から得たという祝福が気になっている。
 この辺りは、今までの実績の差と言っていいだろう。

 その当人であるはずの考助は、ちょっとだけ首を傾げて答える。
「さあ?」
 そのあまりな返答に、トワはガクリと肩を落とした。
「さあって・・・・・・」
「いやだって、祝福よりも強い力のはずの加護のことでさえよくわかっていないんだよ?」
 考助が加護を与えているのは、眷属たちの分を含めればかなりの数になる。
 だが、その加護はそれぞれの個性に合わせて、ほとんどばらばらに力が発現しているように見えている。
 与えている考助も、誰にどんな力が発現するかはよくわかっていないのだ。

 思わずジト目になったトワに対して、これまたフローリアがフォローしてきた。
「まあ、それもあまり気にする必要はないんじゃないか?」
「母上?」
「これはあくまでも私の予想なのだが、恐らくエルフあたりで言われている力がついているのだと思うぞ?」
 その説明を聞いた考助はウグッと唸り、逆にトワは納得半分安堵半分といった表情になった。
 フローリアが言うエルフたちが言っていることとは、安産の神やら子宝の神といった感じのことだ。
 夫婦に対する祝福としては、家庭円満あたりがないのが残念だが、おおむね最適な祝福といえるだろう。

 フローリアの予想が当たっているかどうかはわからないが、そもそも祝福は加護に比べれば与えられる力は弱い。
 その力に関係することに対して、運がいいかなと感じたりする程度だ。
 そこから考えれば、あまり意識する必要はない。
 式で得た祝福が、子宝とか安産とかの関係であるとわかれば、それこそ周囲から祝福される程度で大きな問題も起きないはずである。
 そもそも、結婚式で三大神を主神に据えるのは、そうした祝福が得られるからといわれていたことが始まりになっている。
 三大神が降臨するという大事件が起きたことを除けば、トワとダニエラにとっては最良の結果を得たと言っていいだろう。
 これから先、問い合わせが殺到するであろうという事実に目を背けたトワは、ひとまず安堵のため息をつくのであった。
トワからの問い詰めによる考助からの経緯説明でした。
実際にはエリスたちからの申し出による結果で、ああなりました。
ちなみに、式典にいた客たちは、三大神の降臨に仰天していて、細かい話の内容はあまり覚えていませんw
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