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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7章 塔のあれこれ(その14)

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(5)結婚式

 トワとダニエラの結婚式は、盛大に行われた。
 ラゼクアマミヤ国内で行われた行事で、これと同規模で行われたのは、トワの国王就任式ぐらいだが、その性質はまったく異なっている。
 国王就任式が過去から今への引き継ぎ行事であるならば、結婚式はいわば未来を見据えた行事ということになる。
 王家の存続を安定させるには、結婚はともかく子供は絶対に必要になる。
 もっとも、一般の者たちはそんな政治的な理由は抜きにして、純粋に国王の結婚式を喜んでいた。
 国王の結婚に合わせて、そうした者たちの結婚式も増えているのは、どこの世界も変わらないことであった。

 ふたりの結婚式は、就任式と同じ会場で行われている。
 現人神を祭っている神殿は、とても一国の王の結婚式を行えるほどの広さではないのだ。
 主神をまつる大きな神殿がないこともまた、他の教会関係者を勢いづかせる理由になっている。
 現人神自身がそのような神殿は必要としていないと考えているので、あえて国として大きな神殿を作る必要性が認められないだけだ。
 さらに言えば、それだけの規模の神殿を作ったとして、考助を主神とする巫女や神官がどれだけ集まるかは疑問である。
 結局他の教会の勢力を招き入れることになるのであれば、今のままでいいと考えるのは当然のことだった。
 ただし、その状況も少しずつ変わることもあり得る。
 というのも、今ふたりの結婚式を取り仕切っているココロが、弟子をとろうとする計画が進んでいるためだ。
 もしココロの弟子が増えていけば、今度はそうした者たちが生活する場は必要になってくるだろう。
 そのための神殿であれば、考助としてもあえて作ることは反対する理由がないのである。

 大陸外の教会と微妙な距離感を保っている現人神に対する信仰だが、セントラル大陸に限っていえば若干違っている。
 それは、セントラル大陸の信仰の中心となっているミクセンの神殿が、あくまでも中立を保っているためだ。
 現人神が誕生して以来、セントラル大陸内ではかの神に対する信仰が爆発的に増えたため、他の大陸の神殿と違って強引な手を取れないというのが一番の理由とされていた。
 もっともそれは表向きの理由で、三神殿の神殿長たちが現人神をアースガルドに存在る神として、重要な位置にあると認めているのだ。
 それを表立って言っていないのは、あえて大陸外の神殿と敵対する必要性がないためである。
 公表しなくとも現人神の怒りを買ったりはしないということがわかっているのも、表ざたになっていない理由の一つであった。

 そうした国家間や神殿の様々な思惑を含みながらも、結婚式は順調に進んでいった。
 そして、いよいよ最後の宣誓が行われることとなった。
「それでは、現人神を御前にして、いついかなるときもお互いの愛を貫くことを誓えますか?」
 ココロの言ったそれが、誓いの言葉となる。
 その言葉を聞いたトワとダニエラは、互いに顔を見合わせたあとに、一つだけ頷いた。
「はい。誓います」
「勿論、誓います」
 この世界では先に宣誓をするのは、女性となっている。
 そのためダニエラが宣誓をしてから、トワが同じように続けて宣誓を行った。

 そして、トワが宣誓を行った直後に、それは起こった。
 儀式を行っているココロと、トワとダニエラの間には、一つの台が置かれている。
 そこには聖典や儀式の道具が置かれているのだが、その台にむかって上から光が降り注いできたのである。
 降り注ぐ光を見た観客たちは、驚きでどよめいた。
 勿論、普通の結婚式でこのような現象が起こるはずもなく、何かが起こっているということだけは理解できる。

 会場がざわめきに包まれる中、さらに変化は続いた。
 降り注ぐ光が収まったと思った次の瞬間、神に近しい者たち、はっきり言えば聖職者の地位にある者たちがある一点を見つめたのだ。
 最初に気付いたのは、儀式を行っていたココロだった。
 彼らの視線に合わせるように、他の観客たちの視線もそちらへと向かう。
 そして、その姿を見た者たちは、一様に言葉を失った。

 先ほどまで降り注いでいた光に導かれるように、三人の女性がココロの頭の上に出現していたのである。
 彼女らが誰であるかは、この世界に住まう住人であれば、誰一人として知らない者はいないだろう。
 それはまさしく、この世界で三大神として讃えられている三柱の女神たちであった。
 当然といえば当然だが、たとえ一国の王の結婚式といえども、三大神が降臨してくるなんてことは起こるはずもない。
 その異常な事態が目の前で起こっているのだから、観客たちが静まるのも当然であった。

 会場中の視線を集めている女神たちの中で、中央にいたエリサミール神が言葉を発した。
 その言葉は、空気を伝わって聞こえてくるものではなく、直接心の中に響いてくる不思議なものだった。
『結婚おめでとうございます。トワ、ダニエラ』
 エリスが二人の名前を呼んだ瞬間、会場にいる者たちが驚愕の表情になった。
 この世界では、女神が降臨してくることはあるにしても、こうして個人を指定して名前を呼ぶことなどほとんどない。
 三大神の一柱である女神に名前を呼ばれるほどに注目をされているというだけで、多大な影響力を持つことができる。
 もっとも、トワが現人神の直接の血を引いた存在であることは、もはや公然の秘密となっている。
 そのためこの場合は、ダニエラの名前が呼ばれたことが重要な意味を持っているのだ。
 エリスに名前を直接呼ばれたダニエラは、先ほどまでの高揚した気分など吹き飛び、何を言われるのかとこわごわとした表情を浮かべていた。

 そんな会場の様子など気にした様子も見せずに、エリスが言葉を続ける。
『この世で現人神の祝福を初めて受けた婚姻が、末永く幸せなものであることを願っています』
『両者に高き繁栄と』
『幸運がもたらせますように!』
 エリスの言葉にスピカとジャルが続いて、三柱によるトワとダニエラへの祝福は終わりとなった。

 ただし、三大神によるイベント(?)はそれだけではなかった。
 儀式をしていたココロへと視線を向けたエリスが小さく頭を下げて、スピカとジャルがそれに続いたのである。
 それを見ていた一般の者たちは意味がわからなかったが、神殿関係者は仰天していた。
 何も三柱の神は、ココロに頭を下げたわけではない。
 ココロはあくまでも主神である考助の代わりに儀式を行っているだけだ。
 要するに、三大神は現人神に向かって頭を下げたのに等しい。
 これは、神職にある者たちにとっては、驚天動地の大事件といってもいいほどの衝撃だった。
 別にエリスたちが頭を下げたからといって、それが即神々の間の上下関係につながるわけではない。
 だが、少なくとも現人神は三大神にとって、それだけのことをさせる存在だと知らしめるのに等しい行為となるのだ。
 エリスたちにとっては頭を下げるだけの行為であったが、それを見ていた神職関係者にとっては、今までの態度を覆さざるをえないほどのことだったのである。

 ココロへと頭を下げた三大神は、他に何かを言うでもなく、静かにその場を去って行った。
 そして、その一部始終を見ていた観客たちは、盛大にため息を吐いた。
 唐突な三大神の降臨というのは、人々に多くの影響を与えたのである。
 そして、当事者となってしまったトワはといえば、隣で震えているダニエラの手を握ってどうにか落ち着かせながら、自身の動揺を見せないように取り繕っていた。
 こうして、世界の歴史でもまれに見る三大神が降臨するという結婚式は、幕を閉じることとなるのであった。
はい。当然ながら(?)普通には終わらなかったトワたちの結婚式でした。
これだけ派手なことが起こってしまったので、各国とそれぞれの神殿は対応に追われることになります。
いやはや、大変ですね(棒)。
次は、トワが考助にいろいろ言いに行く予定ですw
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