挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

711/1218

(22)それぞれの思惑

 ドノバンが本部から取った許可は、クラウンから何かを仕掛けるといったものではない。
 相手が何かをしてきた場合に対抗する方法であって、あくまでも防御的な手段でしかないのだ。
 クラウンとしては、現状維持出来ればそれでよく、無理に権益を広げようとはしていない。
 勿論、今までのように、活動する冒険者の数が増えて行き、自然と増えて行く分には当然の権利として主張していくのだが。
 問題なのは、今ある権利を奪っていくような行為が発生した場合である。
 もしそんなことが起きれば、当然の権利として、対抗手段に打って出るというのが、今回得た承認だった。

 本部から戻ったドノバンは、すぐにアデールに捕まった。
「本部はどうでしたか?」
「ああ、問題ないぜ。あっさり許可が下りた」
「そうですか」
 ドノバンの答えに、アデールが安堵したような表情になった。
 状況が状況だけに、許可が下りないとは考えていなかったが、それでもどこかに不安はあったのだ。
 だが、これでどんな相手が出てきても、支部が全権を背負って即時に対応ができるようになった。

 アデールの表情を見ていたドノバンは、ふと思い出したように問いかけた。
「そういえば、他の動きはどうなっている?」
 ドノバンが支部を離れて半日程度しかたっていないが、それでも何か状況が変わっている可能性もある。
 ただ、アデールは首を左右に振って答えた。
「いいえ。特に変わりありません。本命の動きも、ですね」

 以前は、それこそ考助たちがセイチュンに来る前までは、本命も表だって動くようなことはしていなかった。
 ところが、イーザクがコウヒに負けて以来、それに合わせたように帝国との繋がりを匂わせるような行動をとるようになっていた。
 勿論、ダメスは帝国の貴族なので、なにかの関与はあるだろうとは考えていたのだが、そもそもダメス本人がああいう性格なので、何か意図しての行動なのかが分からなかったのだ。
 それがイーザクの使っていた魔道具のこともあったせいか、はっきりと帝国が関与しているという情報が出回っていた。
 どういう意図があるかは分からないが、明らかに帝国側が流しているのは明らかだった。
 更に付け加えると、ここセイチュンは、昔からライネス共和国とヘイテイ王国、そしてドミニント帝国が所有権をめぐって争って来た地である。
 こうして帝国の関与が明らかになった以上、他の二国も何らかのアクションをしてくるのが当然と考えるべきだった。

 何とも頭の痛い状況に、ドノバンは首を左右に振る。
「やれやれ。面倒な状況だぜ」
「本当ですね」
 そう言って頷くアデールを見ていたドノバンは、ふとあることに気付いてしまった。
「いや、待てよ? そもそもセイチュンにクラウンが出て来たからこそ、こんな状況になったのか?」
 仮にもクラウンの支部長とは思えない台詞に、アデールがドノバンに非難の眼差しを向けた。
「いやいや、冗談、冗談だって! だからそんなにおっかねー顔をするな!」
 慌ててそう言ったドノバンに、アデールはため息を吐いた。
「全く・・・・・・仮にも支部長が、そのようなことを冗談でも言わないでください。誰が聞いているのか分からないのですよ?」
「いいじゃねーか、少しくらい。それに、誰もいないだろう?」
「それはそうですが・・・・・・」

 セイチュン支部の建物は、もともと考助が直接関与しただけあって、防諜や防御には極端に強くなっている。
 今でも部外者を受け付けないための魔道具は、動いているのだ。
 そうそう簡単に諜報員が入ってくることなど出来ない。
 勿論、ドノバンが道具だけには頼っておらず、自身の能力で周囲を探っている。
 アデールには周囲の気配を探るような能力は持っていないが、きちんと事前の確認はしてある。
 今の支部の状況は、どれだけ気を使っても使いすぎるということはないのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ドノバンとアデールが支部で軽口をたたき合っていたその頃。
 ダメスの屋敷にある一室では、とある人物が報告を受け取っていた。
 その人物こそ、今回セイチュンでドミニント帝国の思惑を持って動いている中心人物であり、現在の国王の第三王子であるアメディーオだ。
 以前、バトル商会の支店長にあっていた人物もアメディーオその人である。
 イーザクが使っている魔道具は、ドミニント帝国の宝物庫から持ち出した物である。
 勿論、国王の許可をもらった上での持ち出しだった。
 ちなみに、すぐ傍に王子がいながらダメスが街で奔放に行動していたのは、アメディーオが彼の行動を止めなかったというのもある。
 アメディーオとしては、ダメスを隠れ蓑として自分がいることを隠したかったのだ。

 アメディーオに報告している女性は、信頼する側近の一人である。
 普段は奥を取り仕切っている彼女は、表に出ることがほとんどないので、こうした場で活動するのにはもってこいの存在なのだ。
「取りあえず、順調に噂は広がっているんだね?」
「はい。勿論、誰が直接関与しているかまでは、表に出ていません」
「そう。それなら、構わないよ」
 もし、この場にドミニント帝国の第三王子が来ていて直接指示を出していると知られると、必ずライネス共和国とヘイテイ王国が出てくる。
 そんな状況になってしまえば、必ず今までと同じように三つ巴の戦いになってしまうのだ。
 アメディーオとしても、そんな無意味なことはしたくない。
 もっとも、すでに噂として帝国の関与を匂わせている時点で、両者が出てくる可能性は大いに考えられる。
 むしろ、それを狙って今回その噂を流したとも言える。

 そんなことを考えていたアメディーオに、女性が声をかけて来た。
「王子、よろしいでしょうか?」
「うん? 何?」
「イーザクに渡している国宝はいかがされるのでしょうか?」
「ああ、あれね。いずれ回収はするけれど、今はまだいいかな?」
「よろしいのですか?」
 王子の回答に、女性は首を傾げながら聞いていた。
 てっきりコリーに負けた時点で、道具を回収するものだと考えていたのである。
「まあ、あれもまだまだ手駒として使えそうだしね。それに、行動が分かりやすいぶん、使いやすいだろう?」
 含むように笑みをこぼした王子を見て、女性も同じような顔になった。
「確かに、おっしゃる通りですね」
「今までのようにランクを維持するのは、恐らく難しいだろうが、使い方は他にもいろいろある。まあ、持ち逃げだけはされないように注意しておけばいいさ」
「畏まりました」
 そう楽し気な表情で話す王子に、女性は丁寧に頭を下げた。

 その後は、二人で静かに書類を片づけたりしていたが、やがてその沈黙を破るものが来た。
 ドアをノックする音に反応して、女性が歩いて行く。
「どちら様でしょうか?」
「私だ」
 短く帰って来た返事は、女性も良く知っている仲間のものだった。
 すぐにドアを開けて、その人物を迎え入れる。
 ドアを開けて入って来たのは、軽装備を着こなした冒険者風の男だった。

 その男は、一度女性に黙礼をしたあとで、王子のいる場所へと向かった。
「王子。ただいま戻りました」
 アメディーオの正体を知っているこの男もまた、計画を進めるうえで重要な働きをしている側近のひとりであった。
 その彼の姿を見た王子は、作業の手を動かしたまま男に話しかける。
「やあ、お疲れ様。その顔を見る限り、なにか進展があったようだね?」
「はっ! 例の場所の調査が完了しました」
 その報告に、王子は書き物をしていた手を一旦止めて、男へと視線を向けた。
「そうか。では、詳しく報告を頼む」
 王子の言葉に、男は自身が持つ情報の全てを話し出した。
 そして、その言葉を聞くたびに、王子の顔が明るくなっていくのであった。
いよいよ本命の登場です!
国宝級クラスを三つも簡単に他人に貸し出せるくらいですから、これくらいの身分が丁度いいと考えましたが、いかがでしたでしょうか?w
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ