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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(21)事前承認

 セイチュンクラウン支部のドノバンは、クラウン本部のガゼランの部屋を訪ねていた。
 実はこの二人、もともとは知り合い同士だった。
 といっても、お互いに名前だけを知っているような関係で、なにかの付き合いがあったわけではない。
 ガゼランがセントラル大陸に移り住む前、西大陸で冒険者として活動していた頃に、それぞれの名前が有名冒険者として上がっていたのだ。
 ガゼランは二十歳を超えるとセントラル大陸に移ってしまったので、西大陸での活動は短かったが、それでもお互いの名前くらいは知っていた。
 特にドノバンにとっては、当時急激に力を伸ばして来た実力者としてガゼランの名を噂として聞いていた。
 それに加えて、折角西大陸で有名になって多くの信頼を得たにも関わらず、あっさりとその地位を捨てて新天地であるセントラル大陸に移ったのだ。
 ドノバンだけではなく、多くの者たちがガゼランの行動に驚愕していた。
 もっともそんな驚愕も、セントラル大陸から聞こえてくるガゼランの噂のおかげで、すぐに立ち消えて行ったが。
 結局ガゼランは、セントラル大陸に移り住んでからは一度も西大陸には戻らなかったが、そんな状態でも西大陸の一部の冒険者たちにとっては注目の的であり続けたのである。

 ドノバンとしては、まさかガゼランとこうして直接の関わり合いを持つことになるとは、考えてもいなかった。
 そのガゼランは、今手に取っている書類と格闘していた。
 支部長のドノバンでさえ、忙しい日々を送っているのだ。
 それがクラウン本部の一部門長ともなれば、かなりの忙しさだということは想像できる。
 支部長としての立場を利用して、無理やりに時間を作ってもらったのだから、ガゼランが一区切りするまで待つことくらいはいくらでも出来る。

 そんなことを考えていたドノバンに、書類から目を離さずにガゼランが話しかけて来た。
「まさかこの俺が、書類に埋もれる生活をすることなんて思ってもいなかったぜ」
「ああ。それは俺も同じだ。お前の誘いに乗ったのは、間違いだったと何度も思ったぞ?」
 ガゼランが、気晴らしに話題をふって来たのは分かっている。
 口調からも立場がどうこうを気にしてのものではなかったのはすぐに分かったので、ドノバン自身も気軽に返事を返した。
 二人に共通しているのは、どちらも現場主義ということだ。
 ガゼランにしてもドノバンにしても、本来こうして室内に籠って仕事をするのは性に合わないのだ。
 とはいえ、立場上仕方ないことだということも分かっているので、こうして仕事をこなす日々を過ごしているのだった。

 ガゼランの作業の合間に、ちょっとした軽口を交わしていたが、ドノバンが考えていたよりも早くガゼランの作業は終わった。
「よし、終わった。・・・・・・待たせたな」
 さらさらと読んでいた書類の最後にサインをしたガゼランは、そう言いながらドノバンの座っているソファの対面に座ってきた。
「いや。忙しいのは分かっているからな。構わない」
「そうか。それで? 用ってのはなんだ?」
 ソファに座るなり用件を切り出すのは、ガゼランらしかった。
 そもそもお互いに冒険者であることは分かっているので、この二人の場合、まどろっこしいやり取りは省くのが基本となっている。

 ガゼランがすぐに本題に入るよう要求していることを察したドノバンは、早速本題を切り出すことにした。
「ああ。今、コウという冒険者がセイチュンに来ていることは知っているか?」
「・・・・・・ああ。なんかそんなことを言っていたな」
 ガゼランは直接考助からセイチュンに行くとは聞いていなかったが、ワーヒドからは聞いていた。
 ガゼランは、ドノバンがセイチュン支部の支部長であることからそこで何かがあったとは考えていたが、いきなり考助の名前が出てくるとは思っていなかった。
 と、そう考えたガゼランだったが、ふと考助の顔を思い出してそれをすぐに打ち消した。
 今のガゼランの気分としては、「あいつなら何かのトラブルに巻き込まれていてもおかしくはないな」である。
 そんな考えを顔にはおくびにも出さずに真面目な顔で頷くガゼランに、ドノバンが更に言葉を続けた。
「それで、その冒険者からも言われていたんだが・・・・・・いや、まずはこれを見てもらった方が早いな」
 ドノバンはそう言いながら、懐の中から一枚の書類を取り出した。
 そこには、考助から情報を貰ってさらに支部が独自に調べた情報が載せられている。

 その書類をフムフムと眺めていたガゼランは、やがて大きく頷いた。
「これは間違いないんだな?」
「ああ、その筋の人間にしっかり調べてもらった結果だ」
 そこには、今セイチュンで起こっていることに「ドミニント帝国の関与あり」としっかりと書かれていた。
 その調査結果だけではなく、他にもこのままその関与が続けばどうなるのか、クラウンとしてどうかかわっていくのかがしっかりと分析されている。
 勿論この分析はドノバンが行ったのではなく、副支部長のアデールが行っている。
「なるほどな。あいつの言うことももっともだな。・・・・・・シュミットには?」
 今回の件は、<アエリスの水>の使用権にも関わってくるため、商人部門のシュミットにも影響がある。
「ああ、一応打診はしたが、今はあんたの方が早いと言われてな」
「そうか。それじゃあ、俺から連絡を取っておこう。・・・・・・ちょっと待ってくれ」
 ガゼランは、一言そう断ってからソファから離れて、執務机に向かった。

 執務机に向かったガゼランは、引き出しに入っていた直通の通信具を取り出した。
「・・・・・・ああ、俺だ。少しばかり緊急の用事なんだが、大丈夫か? ・・・・・・ああ、それくらいなら大丈夫だろう」
 そう言ってからさらに二言三言言葉を交わしたガゼランは、通信具をしまって再びドノバンの所に帰って来た。
「あと一時間後くらいに来るってよ。それまで、どこかで時間を潰してもらっていいか?」
 流石に部門長同士だと話が通るのが早い。
 こればかりは、組織を運営していく以上仕方のないことだ。
 ドノバンもそれが分かっているからこそ、取りあえずどちらか片方と会えるように手配を取ってもらったのである。
「ああ。それくらいなら全然かまわないさ。折角だから、こっちの品ぞろえでも見ていくさ」
 流石に一時間では、待っている時間も考えれば、転移門を使って往復する時間はない。
 それくらいだったら、本部で取り扱っている品物を見て回るのが、ドノバンにとっては面白味がある。
「ああ、そうするといい」
 ガゼランはそう言うと、自身は再び執務机へと向かった。
 先ほどと同じように、シュミットが来るまでの間、書類と格闘するのだろう。
 それを確認したドノバンは、そっと部屋を出て行くのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ガゼランのときと同じように、シュミットと会えたあとは、話がとんとん拍子で進んだ。
 といっても、今回の件は本部が全面的に支部を支援するので、支部は好きなようにやっていいというお墨付きをもらっただけだ。
 相手が国になる可能性がある以上、支部単独で独走は出来ないが、こうしてきちんと裏付けを貰っていれば問題ない。
 勿論、報告の義務は出てくるが、それは些細な問題である。
 何か起こるたびに一々連絡を取らなくてはならないよりは、はるかに楽にことが進める。
 こうして本部からの許可を得たセイチュン支部は、余程のことが起きない限り、本部の裁定を待たずに解決に進むことができるようになったのであった。
考助たちが塔の中で調査をしている間、着々と騒動に対する準備は進んでいます。
支部としては、あとは来るならこい、と言ったところでしょうか。
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