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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(18)周辺調査

 ドノバンとアデールに状況を伝えたあとは、ついでに町で買い物をしてから塔へと戻った。
 今回はミツキと二人だけで来ていたので、馬車を使って荷物を運ぶわけではなく、ミツキのアイテムボックスを使っている。
 転移門を使って第七十層に着いたあとも、身軽な状態だったため一度も魔物に会うことなく神殿へと着いた。
 そして神殿へ着くなり考助はシュレインに呼び止められた。
「おお、今帰ったか。少しいいかの?」
「うん? 大丈夫だけれど、なにか急ぎの用事?」
「いや、急ぎというわけではないがの。ある程度調査結果がまとめ終わったからその報告じゃ」
 最近のシュレインは、フローリアと一緒に神殿の周辺環境の調査をしていた。
 特に、薬草や野草の類を詳細に調べたうえで、神殿の泉に何か関係があるかどうかを確認しようとしているのだ。
「おお、そうか。・・・・・・いや待てよ? その報告は、皆がいる所でしようか。二度手間になるし」
 薬草関係となると、シルヴィアもいた方がいい。
 それなら、全員が揃っている時にまとめて報告したほうがいいと考助は提案した。
「ふむ、そうか。ならばそうしようかの」
 シュレインとしても特に反対する理由はないので、考助の提案に頷いた。

 そしてその日の夕飯が終わったあと、シュレインから報告がなされた。
「・・・・・・と、いうわけだが、どうじゃ?」
 そう誇らしげな表情になっているシュレインの視線の先には、今まで調べた神殿の周辺環境の詳細が書かれた地図があった。
 確かに考助から見てもシュレインが得意げになるのが分かるほど、詳細に調べ上げたことが書かれている。
「いや、これはすごいな。よくこれだけ短時間で、ここまで調べたね」
 シュレインとフローリアが作った地図には、事細かく植生が書かれている。
「ほんとうですね」
 流石にここまで細かく調べているとは、考助もシルヴィアも考えていなかった。
 感心する二人に、シュレインとフローリアは顔を見合わせて小さく笑った。
「当然だ。と、言いたいところだが、この短時間でここまで出来たのは、ワンリのおかげだ」
「ふえっ!?」
 突然話をふられて、横で話を聞いていたワンリが可愛らしい声を上げた。

 そんなワンリを見てもう一度笑ったフローリアが、説明を続けた。
「狐の姿になったワンリは、鼻が利くからな。色々細かい物まで見つけてくれたぞ」
「人の姿に戻っても、狐のときの記憶もあるからの。後で聞いて補足も出来た。あり得ないくらい楽にここまでの地図が作れたぞ?」
 褒め倒す二人に、ワンリが手をパタパタと両手を振った。
「そ、そんなことはありません! こういうのはナナちゃんの方が得意だとおもいます!」
「へえ? そうなの?」
「は、はい。ナナちゃんの方が鼻が利きますし」
「なるほどねえ。まあ、だからといって、ワンリが役に立ったのは間違いないんだから、照れる必要はないよ思うよ?」
 考助がそういうと、ワンリは顔を赤くして「ありがとうございます」と答えた。

 そんな二人の様子を微笑みながら見ていたシルヴィアが、シュレインとフローリアへと視線を向けた。
「それで、これから先はどうしますか?」
 今のところ神殿の中心を事細かく調べているが、階層全てを見ているわけではない。
 ただ、今いる階層は第七十層で、出てくるモンスターも上級クラスになっている。
 そう簡単に調査の手を広げるわけにもいかない。
「それなんじゃ。取りあえずすぐにここに逃げ込める範囲内は調べ終わったらかの。あとはどうするかを相談したかったんじゃ」
「薬草とかの分布を調べたといっても、しょせん吾らは素人だからな。これらがどう繋がりがあるかなど、分かるわけもない」
「あー、それは確かに」
 そう言って頷いた考助は、シルヴィアの方へ視線を向けた。
 彼女なら何かわかるのではないかと期待したのだ。

 だが、考助に視線を向けられたシルヴィアも首を左右に振った。
「流石に、この手のことは私もわかりませんわ。やっぱりコレットに聞くのが一番でしょうね」
 シルヴィアが知っているのは、どの薬草がどういった効能を持っているかということで、植生がどうのというところはさほど詳しくない。
 やはりそういったことを聞くのは、エルフであるコレットが一番なのである。
「うーん。そうだよねえ。・・・・・・だからといって、わざわざコレットにここまで来てもらうのはなあ」
 流石に産後からは時間が立っているので、体調的にどうこうといったことはないのだが、乳児を抱えた状態でここまで来てもらうのは忍びない。
 地図だけ見てもらっても良いが、コレットのことなので間違いなくここまで来たがるだろう。
 そう予想しての考助の言葉である。

 シルヴィアもその状況がありありと思い浮かべられたのか、深く頷いた。
「確かにコレットは止めた方がいいしょう。ですが、別にコレットだけに限らなくてもよろしいのでは?」
「コレット以外って・・・・・・。ああ、そうか。エルフはいっぱいいるんだった」
 当たり前のことだが、世界樹の周辺に住んでいるのはエルフたちなのだ。
 なにもわざわざコレットに頼らなくても、他のエルフはたくさんいる。
 さらに、考助が頼めば、いくらでもあそこのエルフたちは手を貸してくれるだろう。
 今更ながらにそのことに思い至った考助は、すぐにとある人物を思い浮かべた。
「そうだなあ。だったらシェリル辺りにでも頼んでみるか」
「そうね。彼女だったら頼りになるでしょう」
 考助と同じようにシェリルの顔を思い浮かべたシルヴィアが、同意するように頷いた。

「ふむ。話は決まったかの? では、誰が塔に迎えに行くのじゃ?」
「ああ。それは僕が行くよ」
「コウスケが? まあ構わんと思うが、なぜじゃ?」
「簡単な話だよ。ユリの能力を使えば一瞬で戻れるし、ここに来るときもコウヒかミツキの魔法で一瞬だからね。あと、折角だから、双子の顔も見てきたいし」
 セイチュンの町に来てからは、一度も双子の顔を見ていなかった。
 折角なので、父親の顔を見せておきたかった。
 トワたちのことを考えればそんなことはないのだが、顔を忘れられると考助としても悲しいことになる。
 そうした考助の心情を読み取ったのか、シルヴィアたちは一度顔を見合わせて頷いた。
「そういうことなら、行ってくると良い」
「わかった。ありがとう」
「何、それこそ気にすることなどないわ。私たちはこの神殿に籠っていればいいからな」
 もともと神殿が持っている防御に加えて、考助の魔道具も働いているため神殿にいる限りは大事にはならない。
 それでも念のためコウヒを残していくことに決めた考助は、早速とばかりにアマミヤの塔へと戻ったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「なるほど。それで私の力を借りたいと?」
「そう。お願いできるかな?」
 アマミヤの塔へと戻った考助は、そこからさらに転移門を使って、エルフの里へと向かった。
 そして、コレットと双子のところに顔を出して今の状況を簡単に話したあと、すぐにシェリルの元へと赴いた。
 シェリルと対面した考助は、ガゼンランの塔にある神殿の泉と周辺の状況を説明したうえで、是非とも協力してほしいと話をした。
「そういうことであれば、いくらでもお力になりますが、本当に私でいいのですか?」
 シェリルも考助がコレットの代打として自分を指名していることは分かっている。
 問題は、それが本当に自分でいいのかということだ。
「うん。というか、シェリル以外はちょっと・・・・・・」
 考助としては、他のエルフは妙に自分に対して遜りすぎているので、遠慮したいというのが本音だった。
 シェリルの場合も丁寧な口調なのだが、それが彼女の素であることは分かっているし、変に遜っているわけでもない。
 そうした考助の心情を読み取ったのか、わずかにその顔に笑顔を浮かべたシェリルは、一つ頷いてから答えた。
「分かりました。では、同行させていただきます」
「そう! よかった。じゃあ、早速で大丈夫?」
「勿論です」
 そう即答して来たシェリルに、考助は彼女と同じように笑顔を向けて頷くのであった。
エルフ召喚!(※コレットではアリマセン)
というわけで、シェリルにお出ましいただきました。
エセナでもいい気もしなくはなかったですが、何気に彼女は忙しいですから。
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