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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(16)国宝級?

 闘技場での戦いを終えたコウヒは、すぐにガゼンランの塔の神殿へと戻って来た。
 彼女が戻ってきたときは、丁度考助も作業の合間を縫って休憩に入っていただが、それを見たコウヒが話しかけて来た。
「ただいま戻りました」
「ああ、コウヒ、お疲れ様。どうだった?」
 コウヒが負けたとは欠片も思っていない考助だが、戦いの様子は気になる。
 そんな考助に、コウヒは簡単に説明を始めた。
「イーザク本人の強さはさほどでもありませんでしたが、使っていた道具が一流品でした」
「へえ?」
 コウヒの答えに、考助が興味を持ったような表情になった。

 当然のように、コウヒも考助がこうなるだろうと分かっていて言っている。
 加えるなら、考助がこういう反応を示すと分かっていたからこそ、わざわざあそこまで時間をかけて色々と道具を分析していたのだ。
「イーザクは全部で三種類の道具を使っていました。ランク上位の者たちも、イーザクの道具の扱いに翻弄されて負けたのかと思われます」
「なるほどねえ」
 考助の戦い方は基本的に妖精たちに任せるもので、自分自身はさほど強いというわけではない。
 ただし、魔道具のことに関しては別である。
 考助は、コウヒの言葉からイーザクがどういうスタイルで戦っていたのかを想像して納得していた。
 そして、そんな考助だからこそとある矛盾点に気が付いた。
「・・・・・・ん? てことは、イーザクはかなりの魔力の持ち主?」
 考助が考えていたのは、あくまでも本人の魔力を使って何らかの攻撃か防御を取ることができる魔道具である。
 ランク上位者たちとて弱いわけではないため、彼らを倒すためにはかなり上位の魔法を使わなければならないはずだ。
 そのため、使われる魔力はかなりの物になると考助が予想するのも当然だった。

 考助の問いに、コウヒは首を左右に振った。
「いいえ。本人の魔力はさほどではありません」
「というと?」
「使っている魔道具が、どれも魔力を補充できるタイプでした」
 コウヒの言葉に、考助が興味を持った表情になった。
「へえ? 以前の僕が作ったやつみたいな?」
「そうですね。ただ、補充できる量はけた違いのようでしたが」
 以前に考助が開発した魔力を補充できる魔道具は、安価に使えるようにと一度に大きな魔力が放出できないタイプの物だった。
 攻撃魔法としての魔力をして換算すれば、精々が中級のモンスターを何とか倒すことができる程度だ
 どちらかといえば、長く使えるように丈夫さを重視して作っている。
 そして、コウヒが見た感じでは、イーザクが使っていた魔道具は、一つ一つの攻撃が上級モンスターを傷つけることができるほどの威力があった。
 それだけの量の魔力を攻撃するたびに減らしていたため、コウヒの感覚からすれば目の前でドンドンと魔力の嵩が減っていくような感じだった。

「ウーン、なるほどねえ」
 コウヒの説明で何となく状況を察した考助だったが、今度は別の疑問がわいてきた。
「それにしても、魔力を補充できる魔道具ってなかったと思ってたんだけれどねえ」
 考助があの魔道具を作り上げた時は、ほぼすべての人に驚かれた。
 そのため考助は、この世界では電池のような物はないと思っていたのだが、そういうわけでもなさそうだと思い直した。
 もっとも、この考助の認識が微妙にずれているということは、その日の夕食の席で判明することになる。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助の感想を聞いて真っ先に首を傾げたのは、フローリアだった。
「ん? それはおかしいぞ、コウスケ」
「というと?」
「考助が作った魔道具が珍しい物だったのは間違いない。だからこそ、シュミットもあれほど驚いていただろう?」
「そういえば・・・・・・?」
 フローリアの言葉を聞いた考助は、首を傾げながらあの時のシュミットの表情を思い出していた。
「そうだろう? 今回の場合は、魔力の補充できる魔道具を、しかも最高ランクの物を複数所持していたイーザクがおかしいと考えるべきだろう」

 そもそもコウヒが以前戦ったハルトヴィンが使っていた魔道具も過去の遺物として、かなりの貴重品だったはずである。
 今回のイーザクが使っていた魔道具も、それに匹敵するほどの価値があるはずだ。
 一つ一つがそうなのに、それを三つも同時に使っていた時点でおかしいと考える方が自然なのだ。

 その上で、と前置きをしたうえでフローリアが続けた。
「コウヒによれば、イーザク自身は大した強さではなかったということだ。だとすれば、彼自身でそれだけの道具を三つも手に入れたと考える方が不自然だろう?」
 そこまで言われれば、考助も他の者たちもフローリアが何を言いたいのか、すぐに察することが出来た。
 というよりも、既にその情報はミツキがコウヒの戦いの前日に手に入れている。
「あのバカ貴族か・・・・・・・」
 思わずといった感じでシュレインが呟いた言葉が、その場の全員の気持ちを表していた。

 周囲を見て苦笑したフローリアだったが、小さく首を傾げて続けた。
「ただ、それにしても、少しおかしい気がするのだが・・・・・・」
「というと?」
 考助が疑問を口にすると、フローリアが推論だと前置きをしてからさらに話した。
「コウヒの話を聞く限りでは、一つ一つの魔道具が国宝に近いような物だと思える。馬鹿貴族がどの程度の爵位かはわからんが、そんなものを他人に三つも貸せるほどの地位とは思えなくてな」
「確かに、話を聞く限りでは、かなりの業物になりそうじゃからの」
 フローリアの推測に、シュレインも同意するように頷いている。
 考助からすれば、似たような物が作れるだけに、そこまでの価値があるとは思えないのだが、こと魔道具に関しては自分の感覚がずれているという意識は持っている。
 ついでとばかりにシルヴィアに視線を向けると、同じように頷いていたので、ここは素直に(?)黙っておいた。
 その代わりに、別の疑問を口にした。
「その魔道具がイーザク自身の持ち物じゃないとして、そんな高価なものを普通貸し出したりするかな?」
 考助としては持ち逃げなどを予想しての言葉だったが、これにはフローリアが首を左右に振った。
「持ち逃げなどを防ぐ方法はいくらでもある。一番簡単なのは、監視を付けておくとかだろうな」
「契約で縛るという方法もないわけではないしの」
「なるほど」
 そういえば魔法で縛ることもできたな、と思いつつ考助は頷いた。

 それまで黙って話を聞いていたシルヴィアが、ここで口を挟んできた。
「フローリアは、例の貴族以外にも後ろがいると疑っているのですか?」
「どうかな? ミツキの話では、そこまでのことは言っていなかったが、いても不思議ではあるまい?」
 フローリアは、そう言いながら視線をミツキへと向けた。
 その視線を受けたミツキは、少し考え込むようにしながら答える。
「流石にそこまでは分からないわ。ただ、そこまで行くとかなりの上の人間が動いていることになるわね」
「ああ、そうなるな」
 ミツキの言葉にフローリアが頷くと、今度は視線が考助へと集まった。

 この流れで皆が何を求められているかは、考助にも分かる。
 今までの話の流れで、かなりの大物がセイチュンに関わっていることが理解できる。
 やっていることは、考助たちがクラウンを作るときにやったことと同じことだ。
「うーん。支部もどの程度まで気づいているかだけれどねえ。・・・・・・まあ、無難に今持っている情報を教えるくらいでいいんじゃないかな?」
「まあ、その辺りが無難だろうな」
 考助の言葉に、フローリアも同意した。
 言葉を発したのはフローリアだけだったが、他のメンバーも同じような顔になっている。
 これによりこれまで考助たちが得た情報をクラウンの支部長に教えることが決まったのであった。
イーザクと馬鹿貴族についての考察でした。
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