挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

701/1196

(12)代理出陣

この話で本編700話到達です。
いつもお読みいただきありがとうございます。
 ガゼンランの塔の神殿に戻ったフローリアたちは、先ほど会ったことを考助とシルヴィアに話した。
「・・・・・・と、いうわけで、中々面白い茶番劇だったぞ」
 最後にそう結論付けたフローリアに対して、考助とシルヴィアは同時に顔を見合わせた。
「あ、やっぱりシルヴィアも・・・・・・?」
「はい。ピーチほどではないですが、私も巫女ですし。それに、コウスケさんもですか?」
「うーん。なんか、何となく気になった」
 曖昧な考助の言葉だったが、シルヴィアは真剣な表情になった。
 そんな二人の会話を聞いて、フローリアは訝し気な表情になった。
「そんなに警戒することか? 私にはただの貴族のあほ息子にしか見えなかったが?」
「ええ。私もフローリアの感じたことを否定するつもりはありません。ですが、なにか引っかかります」
「そうなんだよねえ。それが何かといわれるとよくわからないんだけれど」
 考助とシルヴィアは、自分でもよくわからない感覚に首をひねっている。
「いや。コウスケとシルヴィアの感覚は無視できないじゃろう。吾にもただの阿呆が踊っているようにしか見えなかったが・・・・・・ん? 踊っている?」
 何気なく言った言葉に、シュレインが何か引っかかったかのように首を捻った。

 そんな三人の様子を見て、フローリアが顎に手をやって考え込むような顔になった。
「ふむ。余りに間抜けすぎて頭から考えていなかったが、そういう可能性もあるか」
「どういうこと?」
「何、単純な話だ。裏で誰かが動いていることもあるかと考えただけだ」
「あ、あー・・・・・・なるほど」
 納得した考助が大きく頷くのと同時に、他のメンバーたちも納得したような表情になった。
「勿論、最初のときはただの偶然かも知れない。だが、二度三度と続くと必然と考える方が自然だしな」
「考助がいれば、また別じゃがの」
「こら。まぜっかえさなくていいから」
 シュレインの合いの手に、考助がわざとらしく顔をしかめた。

 二人のやり取りを見て小さく笑みを浮かべたフローリアは、一度首を振ってから続けた。
「ただ、あくまでも可能性の話でしかないからな。実際はどうかわからん」
「そうだよねえ・・・・・・うーん。仕方ないか」
 フローリアの言葉に納得して頷いた考助は、そう言ってミツキへと視線を向けた。
「ミツキ、ちょっと調べてきてもらって良い?」
 考助のその言葉に、ミツキを除いた全員が驚いた表情を浮かべた。
 コウヒもわずかに驚いた表情を浮かべているので、彼女にとっても意外だったのだ。
 これまで考助は、こうしたことに自分から首を突っ込むことはぎりぎりまでしていなかった。
 ましてやミツキに指示を出すことなど初めてのことだった。

 そんな周囲の様子を見て、考助は肩を竦めた。
「仕方ないじゃないか。もしピーチがいるならピーチに頼んだけれど、今はいないからね」
「だからといって、わざわざミツキを出すほどのことかの?」
 今までの考助であれば、ことが起こるぎりぎりまで放置していたはずだ。
「うーん。何となく気になるから、とかしか言えないなあ。それに、まだまだセイチュンにはいなくちゃ駄目だしね」
 考助としても何か確信があってミツキを出そうとしているわけではない。
 あくまでもただの勘でしかない。

「コウスケ様。貴方が必要だと思えば、そのまま信じてお命じになればいいのです」
 巫女モードになってそんなことを言って来たシルヴィアに、考助は苦笑を返した。
「それはそれで駄目だと思うけれどね。まあいいや。なにもなかったらそれはそれで安心だし。取りあえず、お願い」
 考助がミツキに向かってそう言うと、それまで黙って話を聞いていたミツキが頷いた。
「分かったわ」
「ああ、そうだ」
「?」
「できれば、コウヒの戦いまでに調べてきてね」
「分かったわ」
 考助の意図を察してミツキも頷いた。
 もしかしたら、一連の騒動が繋がっているかもしれないと考えたためである。
 これは、勘とかではなく、本当にタダの推測でしかない。

 もっとも、ミツキにしてみれば、それが勘だろうと推測だろうと事実にもとづくものであろうと、考助からの指示であればそれに従うだけだ。
 それに、コウヒがいなくなる前に戻ってくるのも、ミツキとしては当然のことである。
 必ずどちらかは考助の護衛として付いていなければならないというのは、コウヒとミツキの間での約束事である。
 それに、コウスケから頼まれた仕事をそこまで時間をかけるつもりはミツキには無かった。
「それじゃあ行って来るわね」
 まるで散歩に行ってくると言わんばかりの足取りで、ミツキは右手を軽く上げて皆のいる部屋から出て行った。

 そんなミツキを見送りながらシュレインが呟いた。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
「そうやって聞くと、不吉なものを探しに行くみたいだね」
 シュレインの言いように、考助が思わず小さく吹き出した。
「似たようなもんじゃろ?」
「言えてるな」
 シュレインの追撃に、フローリアが真面目な表情で頷いた。
「ただのお馬鹿さんの行動だとしても頭が痛くなるが、裏で何かがあるにしても面倒になるからな」
「うーん。そう考えると、やっぱり余計なことに首をつっこんじゃったかな?」
 そんなことをいって、今さら優柔不断を発揮する考助に、フローリアが軽く頭を小突いた。
「こういった時の最大の戦力を出しておいて、何をいっている」
「ですよねー」
 誤魔化すようにそう言った考助に、他の者たちはわずかばかり呆れたような視線を向けるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 コウヒの闘技場での戦いを翌日の控えた日の夜。
 調査を頼んだミツキが、珍しくさえない表情で戻って来た。
「ただいまー」
「お帰り。なんか、顔を見る限りでは芳しくなかったみたいだけれど?」
「んー。いえ。そんなことはないのだけれどね」
 意味が分からずに首を傾げた考助に、ミツキは苦笑を返した。
「皆が揃っているところで話すわ」
「そうだね。そうしたほうが早いか」
 ちょうど夕食がまだだったので、それが終わってからでも遅くはない。
 頷いた考助は、取りあえずミツキをねぎらって作業の続きを行うことにした。

 そして、夕食の席でミツキから報告が行われた。
「結論からいえば、分からなかった、というところが正直なところだったわ」
 ミツキの第一声に、他の者たちが顔を見合わせた。
 ミツキであれば、数日もあれば突き止められる思っていたのだから、皆が不思議に思うのも当然だろう。
 それを察したミツキがさらに続けた。
「この神殿に来る前にちょっかいを出して来たのも、先日フローリアたちに馬鹿なことをやったのも、同一人物だということは分かったわ」
「え? それだけじゃないの?」
「それだけで話が終われば単純だったんだけれどね」
 首を傾げた考助に、ミツキがため息を吐いた。

 セイチュンの町でちょっかいを掛けて来たのは、予想通りとある貴族のバカ息子ということまではすぐに分かった。
 そのバカ息子がちょっかいを掛けて来たのが、単に美人の集団を狙ってのことなのか、それとも別の意図があってのことなのか、詳しく調べているときに別の者との繋がりが出て来たのだ。
 それが誰かといえば、現在闘技場ランク二位のイーザクだった。
 イーザクもそのバカ息子も隣国のドミニント帝国の関係者だったのだ。
 もっといえば、イーザクは頻繁にバカ息子の借りている屋敷に出入りしている所も目撃されている。
 それだけを見れば、イーザクがコウヒに対して対戦前に何かを仕掛けようとしていたとも考えられなくはない。
「人質とかか?」
 フローリアの言葉に、ミツキも頷いた。
「最初は私もそう思ったんだけれどね」
「違うのか?」
「そこがよくわからなくて。あのバカ息子、普段の行いから女好きでも知られているから、本当に何も知らずにちょっかいを掛けてきたとも考えられるのよ」
 ミツキはそう言いながら両手を上げて、お手上げのポーズを取った。
「とにかく、これ以上のことを調べるには時間が足りなかったわ」
「そうか。取りあえずご苦労様」
 ミツキの結論に、考助は労いの言葉を掛けた。
 少なくともイーザクとの繋がりがあると分かっただけでも収穫だった。

 明日はいよいよコウヒの対戦が迫っている。
 そこでもなにかが分かるだろうと考助はコウヒへと視線を向けた。
 そして、視線を向けられたコウヒは、何も言わずにただ小さく頷くのであった。
ミツキ出陣!
といっても時間が足らずに尻切れトンボな結果で終わりました。
本人にとっては不本意ですが、仕方なしです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ