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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(11)お粗末

 考助が素材の管理作業、シルヴィアが化粧品の開発と塔の中で作業を行っている間、ミツキを除く他のメンバーは塔を出てセイチュンの町へ買い出しに来ていた。
 ミツキは当然のように、考助とシルヴィアの護衛である。
 肉類は、周辺に出てくるモンスターや動物から採れるが、野菜の類は町から仕入れなければいけない。
 その他にも細々とした消耗品を買うために、町に来たのである。
 塔の神殿から乗って来た馬車はクラウンの預け所に置いて、フローリアたちはセイチュンの町に繰り出した。

 所狭しと様々な店が立ち並ぶ商店街を、一行は進んでいく。
 町には来ようと思えば毎日でも来ることができるが、やはりそれだと手間がかかる。
 必然的に数日分のまとめ買いをすることになるのだが、意外な(?)能力を発揮したのがフローリアだった。

「ふむ。これは確かによさそうだな」
「そうだろう? 値段もいいだろう?」
「そうだな。どうだ、店主まとめ買いをするから・・・・・・」
「いやいや、そりゃあねーよ、お嬢ちゃん。せいぜいこれくらいで・・・・・・」
「お嬢ちゃんと言ってくれるのはうれしいが、これでも私は人妻で・・・・・・」
「いやいや、それとこれとは別で・・・・・・」
「「・・・・・・うんちゃらかんちゃら」」

 と、こんな感じで、他のメンバーの口を挟む余地もなく店員との交渉を進めていた。
「・・・・・・これは吾も真似は出来ないな」
「さすがフローリアお姉様です」
 シュレインとワンリが、フローリアが生き生きと交渉している様を見ながらそんな感想を漏らした。
 そもそもフローリアは、もと女王の立場にあったのだ。
 海千山千の人物たちを相手に、交渉の日々を送っていた。
 それから考えれば、日用品を扱っている店員とのやり取りなど、物の数ではないのである。

 もっとも、
「ふっふっふ。お嬢ちゃん、中々だったが、詰が甘かったな」
「うぬ。仕方ない。今回は授業料と思っておこう」
「やれやれ、次は本当に手強くなっていそうだな」
 と、時にはこんな感じで失敗をすることもあったが。

 
 数日分の野菜やら消耗品を買い込めば、かなりの量になる。
 そのため、フローリアたちは、馬車のあるクラウン支部と商店街を何度か往復することになったのだが、何回目かの馬車への道のりで珍しいものとかち合った。
「ようよう、ねーちゃんたち。随分と豪勢だが、俺たちにも分けてもらえねーか?」
「さっきから見てれば、色々と買い込んでるじゃねーか」
「なあに。少しだけ恵んでもらえればいいんだぜ?」
 そういって一同の進行方向を数人の男たちが遮って来た。
 見るからに食い詰めた状態だということがわかる。
 そもそもコウヒが一緒にいるのに、彼女が誰かを正確に認識していないことからも流れ者なのだろう。

 そんな男たちを見て、フローリアたちは別の意味で心を動かされていた。
「ほう? 持っているのは野菜しかないのだが、ベジタリアンか?」
「その体格だと、お肉も食べないと食べた気がしないですよね?」
 フローリアとワンリのとぼけた会話に、シュレインが混ざって来た。
「いやいや、もしかしたらなにかの信徒なのかもしれないぞ?」
 彼らにとって不幸だったのは、この場に突込み役(考助)がいなかったことだろう。

 男たちを見て怯えるどころか、くだらないことを言ってくる女性たちに、男たちは青筋を立て始めた。
「おい! おめーたち、いい加減に・・・・・・!」
「その辺にしておけ」
 男たちが、今にも襲い掛かって来そうになったところで、フローリアたちの後ろ側から別の男の声が聞こえて来た。
「なんだ、てめーは!?」
「何だも何も、こんな白昼堂々と大通りでこんなことをやっていれば、一人や二人私みたいな者が来てもおかしくはないだろう?」
 後から来た男は、そういって腰にぶら下げていた剣に手を掛けた。
 それを見た男は、盛大に舌打ちをする。
「・・・・・・ちっ! おい、お前ら、行くぞ!」
 男たちは、そんなことをいいながらばらばらとフローリアたちの前から姿を消した。
 それを見送った男は、きらりと光りそうなほどの白い歯を出して笑顔を見せながら、
「やあ、君たち。大丈夫だったかい?」

 如何にもイケメンの優男といった感じで風貌を持つ男をみたあと、フローリアたちは互いに顔を見合わせた。
「ふむ。六十点と言ったところか?」
「いえ。私たちを基準にしてはだめだな。七十点だろう?」
「・・・・・・こんなのに引っかかる人っているの?」
 ワンリの鋭い意見に、フローリアとシュレインは再度顔を見合わせた。
「顔と地位にわざと惹かれる者もいそうだから、五十点ということにしておこう」
「妥当じゃの」
 好き勝手に言いながら、フローリアとシュレインは互いに頷きあっていた。

 そんなフローリアたちを見て、男は戸惑った表情を浮かべている。
「君たち・・・・・・?」
「あのなあ。そろそろくだらない芝居はやめたらどうだ?」
「なんのことだい?」
 折角フローリアが忠告したのに、男は悪びれない表情で首を傾げている。
「そんな演技で私たちをだませていると考えているのだったら頭が弱すぎる。とぼけるにしてももう少しうまい方法があると思うぞ?」
 容赦ないフローリアの言葉に、シュレインとワンリはうんうんと首を縦に振っている。
 ちなみに、コウヒがフローリアたちのやり取りに全く関与していないのは、いつものことである。

「中央の通りではないとはいえ、それなりに人通りがあるはずの場所でこんな白昼堂々と女性四人が襲われているのに、人がほとんど集まってこない。それだけでも十分不自然だろう?」
「誰かが手引きして集まらないようにしていたと考えた方が自然じゃろうな」
 シュレインの言葉に、フローリアは「うむ」と頷いてから続けた。
「極めつけは、前からこそこそと様子を窺っていた輩が、タイミングよく男たちの前に現れたことだ」
「普通に考えて、仲間と考える方が自然ですよね」
「まあ、仲間というよりも金で雇ったというべきじゃろう」
 シュレインの捕捉に、ワンリが首を傾げた。
「仲間じゃないんですか?」
「・・・・・・ふむ。いや、吾らからすれば、仲間といっていいじゃろうな」

 そんなフローリアたちの会話を聞いていた男は、完全に表情を無くしていた。
 フローリアの言うところの演技を止めたのだ。
「ふん、つまらん。折角お前たちにとっての良い舞台を用意してやったと言うのに。・・・・・・おい! 待て!」
 自分の言葉を最後まで聞こうともせずに、踵を返したフローリアたちに、男は声を荒げた。
「断る。それに、辺りにいる者たちだけで吾らをどうにかできると考えているのだったら、頭がおめでたすぎるの」
「ワンリ、全部で何人いる?」
「うーんと、あっちに三人。こっちは、さっきの男の人たちが五人。後ろに四人で、全部で十二人かな?」
 ものの見事に自分の戦力がばれていると察した男は、それでも余裕の表情を変えなかった。
 だが、次のワンリの言葉に、訝し気な表情になった。
「でも、もうとっくに眠ったみたい」
「なんじゃ。随分ともろいの。もう少し魔法抵抗力を上げた方が良くないか?」
 男の仲間を眠らせた張本人が、のんびりとそんなことを言った。

 二人の会話に、チラリと視線を移した男は、言った通りの状態になっているのを確認して愕然とした表情を浮かべた。
「な、なに!?」
「やれやれ。魔法を使ったことすら気づいていなかったのか。あまりにお粗末すぎるな。・・・・・・ああ、一応忠告しておくが、せめてこの女性が誰かを調べてからことに及んだほうが良いぞ?」
 フローリアがコウヒを示しながらそう締めくくった。
 コウヒが闘技場ランク一位であることは、関係者に聞けばすぐにわかることだ。
 そんなことを調べもせずにことに及んでいる時点で、フローリアから言わせれば、片手落ちどころの騒ぎではない。
 考えてもいなかった結果に呆然とする男をそのままにして、フローリアたちは再び馬車を使って塔へと戻るのであった。
タイトル通りです。
何となくテンプレ話を書いてみたくなったので挟んでみましたw
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