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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(9)素材集め

 神殿に着いた翌日。
 考助は、ミツキとワンリを伴って、野草や薬草を探してフィールドをうろうろしていた。
 肉は昨日取った分でまだ十分あるので、この日は目的の化粧品の材料になりそうなものがないかを確認しているのである。
 といっても、採取に向かったメンバーでは、どれが化粧品に使えるかは分からないので目についたものは、適当に採取している。
 一応、考助の左目で確認して毒になりそうなものは排除しているが、そもそも化粧品はともかく薬の元になるようなものは毒草を使うこともある。
 そうしたことを考えれば、毒の表記があるからといって、簡単に排除も出来ない。
 ただ、考助たちはそうした毒を持つ素材の適切な処置方法をほぼ知らないので、今回は採取は見送っていた。
 実際に化粧品を作っているシルヴィアも、取りあえずいまはそれで構わないと話していた。

 神殿の周辺は、少し歩き回るだけでそうした類の素材が生えているので、考助たちも苦労することなく集めることが出来た。
「やっぱり、人の手が入っていないと、簡単に集められるねえ」
 そんな感想を漏らした考助に、ワンリが首を左右に振った。
「お兄様。それは違います」
「え? そうなの?」
「はい。現に仲間たちがいる階層で人の来ないようなところでも、こんなに色々と集まっている場所は少ないです」
 ワンリは、狐たちがいる階層をよく見回ったりしている。
 そのため、考助が集めたような素材がそれぞれの階層にあるかどうかも大体把握している。
 ちなみに今回集めた素材は、目についたものだけを取っているので、レア素材というようなものはほとんど含まれていない。
「そうなのか」
「探せばあるかも知れませんが、こんなに分かりやすくはないかと思います」
「へー」
 ワンリからの豆知識(?)に、考助は感心したように頷いた。
 ちなみに、ワンリが薬草の類について詳しいのは、それがそのまま狐たちの治療に使えたりするものも多かったりするためである。

 のんびりと考助とワンリが会話をしていたりするが、実は考助が妖精を使って結界を張っている中で行われている。
 その外では、ミツキが張り切って寄って来たモンスターを討伐していた。
 第七十層にいるモンスターのため、もし他者がいればその光景に目を見張っていただろう。
 何しろ翼を広げたら五メートルを超える大きな鳥を、ひょいっと上空に飛び上がって一撃で倒しているのだ。
 そんなあり得ない光景も考助にしてみれば、わりと見慣れた情景である。
「お~。随分と派手にやったなあ」
「流石、ミツキお姉様」
 一旦素材を採取する手を止めて、ミツキの戦闘を見ていた考助とワンリがのんびりとそんな感想を述べた。
 そんな二人に、危なげなく着地したミツキが、苦笑しながら近寄って来た。
「何を言っているのよ。考助様はともかく、ワンリだってやろうと思えば出来るでしょう?」
「わ、私、ですか? えっと、タブン、狐の姿になれば?」
 首を傾げながら答えるワンリに、考助も同じように首を傾げた。
「分からないの?」
「うっ!? えーとっ」
 困ったように視線をうろうろとさせるワンリに、ミツキが笑いかけた。
「まあ、いいじゃないの。それよりも採取は終わったの?」
「うん。この辺りのはね」
「そう。で、このあとは?」
「そろそろいい時間だし、戻ろうか」
 近場をうろついていただけなので、今から戻れば昼食に丁度いい時間になる。
 折角食べれるちゃんとした食事をわざわざ外す必要もないので、考助はすぐに戻る決断をした。
 そして、ミツキが先ほど狩ったモンスターをアイテムボックスにしまう間に、考助は妖精に頼んで結界を消すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 昼食を目指して神殿に戻った考助たちだったが、礼拝所に当たる場所でシルヴィアがいるのを見つけた。
「あれ? 作業は終わったの?」
「今は、反応待ちですね」
 化粧品にしても薬品にしても、常に作業中ということはほとんどない。
 大抵は煮詰める作業だったり、冷めるのを待ったり、いまのシルヴィアのように反応が終わるのを待っている時間が発生する。
 シルヴィアはそうした時間を利用して、描かれている壁画の確認をしていたのだ。
「辺りの素材はどんな感じでしたか?」
 考助たちが周辺を散策して素材を集めに行くことは、朝食の席で話してある。
 実際に調合を行うシルヴィアとしても、考助たちの戦果が気になるのは当然のことだった。
「ああ。まだ土が付いているから表に置いてきたけど、見る?」
「いえ。それでしたら、私は壁画を見ていますから先に昼食をとってきてください」
「うん。わかった」
 考助としてもお腹は空いて来ていたので、シルヴィアの提案はありがたかった。
 素直に了承した考助たちは、そのまま食堂へと向かった。

 考助たちが食堂に入ると、既に三人分の食事がテーブルに並んでいた。
「お帰りなさいませ」
 食堂に入って来たのを見て、コウヒが頭を下げて来た。
 神殿の表で土埃を落としたり手を洗ったりしていたのを見ていたコウヒが、しっかりと準備をしていたのだ。
「ちょっと遅かったかな?」
「いえ。他の方の食事は今終わったばかりです。シュレインとフローリアが食器を洗っています」
「そう」
 コウヒの言葉に、考助は短く頷いて視線を昼食へと移した。
「おー。これはまた美味しそうだね。それじゃあ食べようか」
 そういって視線をミツキとワンリへと向けてから、考助は席に着いた。
「いただきます」
「「いただきます」」
 考助の挨拶に合わせて、ミツキとワンリも手を合わせた。

 考助たちが食事を終える頃には、シュレインとフローリアも食器の片づけを終えて話に加わって来た。
「それで? この辺りは、どうじゃ?」
「うーん。ワンリの話では、結構揃っているみたいだね。これからシルヴィアにも見せるけれど、見に行く?」
「そうしよう」
 考助の言葉に、シュレインとフローリアが頷いた。
「それじゃあ、食器は私が洗っておくから行ってきたら?」
「ありがとう」
 ミツキにお礼を言った考助は、最後に残っていたお茶を飲みほして立ち上がった。
「それじゃあ、行こうか」
「うむ」
「わかった」
「私も行きます」
 シュレインとフローリアが頷き、それに合わせるようにワンリも席から立ち上がった。

 考助たちが神殿の入口に向かうと、既にそこにはシルヴィアがいて採取した素材を小分けにしていた。
 今回の調合に使えそうなものと別の機会に使えそうなもの、それからすぐに使えるものと乾燥しないと使えないものといった感じで分けてある。
「どんな感じ?」
「凄いですね。まさかこれだけの種類が半日で集まるとは思ってませんでした」
 考助の確認に、シルヴィアも驚いたといった表情で答えて来た。
「どれ? ・・・・・・確かに、これは凄いの」
 シュレインもシルヴィアほどではないが、薬草の類にも詳しい。
 というのも、ヴァンパイアお得意の魔法などでも使われることが多いためだ。
「二人がそういうということは、かなり期待できるということだな」
 それぞれの反応を見て、考助と同レベルのフローリアも並べられた素材を見ながら頷いていた。

 シルヴィアとシュレインの反応を見たあとは、今度はミツキとコウヒが交代して再び採取に出かけた。
 今度は、午前中に向かった方面とは別の方角にむかう。
 そこでも結界を張って、ときどきモンスターとエンカウントしながら使えそうな素材を集めて行き、日が沈む前に神殿へと戻った。
 再び考助たちが持ち帰った大量の素材に、シルヴィアが嬉しい悲鳴を上げながら仕分けを行っていき、あとは晩御飯となる。

 これが、この先しばらく続くことになるガゼンランの塔での一日のサイクルとなるのであった。
一日の流れでした。
次の日以降は、シュレインが素材仕分けに加わるので、シルヴィアももう少しだけ楽になります。
考助たちも近場の四方を回った後は、干したりする作業に回ったりしています。
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