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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(8)女神の神殿(仮)

 全員が目を覚まして用意をしたあとは、宿を引き払ってガゼンランの塔へ向かった。
 途中、変なイベントが起こるのではないかと懸念していたが、結局そういったことは起こらずに塔攻略ギルドへ到着した。
 いきなりガゼンランの塔に入らなかったのは、今回初めてガゼンランの塔に入るメンバーがいるためだ。
 ガゼンランの塔は、他の塔と違ってカードを発行したほうが便利なのだ。
 実は入口でカードのチェックをされるのは、メンバーに一人だけなので他の者は作らなくても良いというざる(・・)なシステムになっている。
 ギルド側も気づいているが、そうした者たちは放置していた。
 というのも、人のチェックは一枚でいいのだが、塔の機能を使って転移をする場合は、どうしてもカードが必要になるからである。
 そうした利便性を考えると、まずカードを作らないという選択肢はないのであった。

 新しいカードは特に問題なく作り終わった。
 ただし、作り終わるのを待っている最中に、他の冒険者から注目を集めるのだけは避けられなかったが。
 もっとも、考助は離れた場所で見ていたが、発行を待っている彼女たちに絡むという馬鹿をする者は一人としていなかった。
 というのも、シルヴィアたちが待っている最中、常にコウヒが傍に付いていたのだ。
 塔攻略ギルドと闘技場ギルドは、全く違うギルドとはいえ、中に出入りしている者たちは冒険者であり、ほとんど変わらない。
 そのためコウヒがランク一位の強者であることは、すぐに知れ渡っていた。
 結果として、そんな強者がいるパーティに手を出す者はおらず、何事もなく無事に終わったというわけである。
 ちなみに、塔攻略ギルドから出たあとに、フローリアが「セイチュンで行動する場合は、コウヒを連れ歩いた方が楽になりそうだな」と言って、コウヒを苦笑させていた。

 そんなやり取りをしてから考助たちはガゼンランの塔へと入った。
 コウヒは昨日のうちに闘技場ギルドに、都合の良い日付を伝えてある。
 その日だけはガゼンランの塔から出て闘技場に向かわなくてはいけないが、今回は見に来なくていいとコウヒに言われているので、考助たちは塔に籠ったままのつもりでいる。
 実際に闘技場に向かうのはコウヒだけか、興味を示していたシュレインを連れて行くだけになりそうだった。
 何か面白そうなことでも起きれば話は別なのだが、今回は特にそういったこともなさそうなのでシルヴィアの手伝いをした方が良いだろうと決めたのである。

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 塔に入った考助たちは一度第五十層に転移をした。
 ここで新しくカードを登録した者たちのカード表記を第五十層攻略状態にしておく。
 それから、考助作の魔道具を使ってカードに覆いをかけてから目的の第七十層へと転移した。
 こうしておけば、本来の目的地が第七十層であることは隠しておける。
 今の冒険者たちのレベルで第七十層まで到達できる者がいるとは思えないが、どこで素材を得ているかを隠すためには必要な措置だ。
 第七十層へ到着してすぐに、考助たちは目的の神殿がある場所へと進んだ。
 そして、考助が以前に来たときに見つけたスイッチを押すと、前と変わらずに神殿がその姿を現した。

「ほほう。これが噂の神殿か」
「確かに、かなり古い様式じゃの?」
 フローリアに続いて、シュレインが神殿を見たあとシルヴィアへと視線を向けた。
 神殿に関しては、この中ではやはりシルヴィアが一番詳しい。
「ええ。そうですわね。ただ・・・・・・」
「ただ?」
 言葉を濁したシルヴィアに、シュレインが聞き返す。
「きちんと調べないと分かりませんが、恐らくファーバル神殿に似ているような気がします」
「ほほう?」
 シルヴィアの説明に、フローリアも興味を持ったような視線を向けた。
 ファーバル神殿は、西大陸にある神殿の中で一番古い様式を持つと言われており、さらに世界の中でも五指に入るほどの古さである。
 勿論、長く使われている神殿なので、修繕は頻繁に行われているが、施されている彫刻や建物の造りはほとんど変わっていないと考えられている。

 神殿の上の方を見上げているシルヴィアに、考助が頷きながら話しかけた。
「まあ、そもそもの流れを考えれば、ここの神殿の方が古いのかもしれないよ?」
「かもしれません」
 今目の前にある神殿は、アスラがこの世界にいた時にもあったはずの建物なのだ。
 ファーバル神殿のほうが古いということもあり得なくはないが、中に書かれている壁画のことを考えればこちらの方が古いと考える方が自然だろう。
「とりあえず、詳しく調べるのは後にしようか。ちゃんと生活できるように整えないといけないからね」
 今回は、元から長期間ここに滞在するつもりで来ている。
 調べる時間はいくらでもあるだろう。
 ただ、そうするためには生活するための場所をきちんと作らないといけない。
 既にコウヒはひとり神殿の中に入っている。
 当然のように、考助がきちんと過ごせるための場所を作りに行ったのである。
「そうですね」
 考助に台詞でようやくそのことを思い出したような表情になったシルヴィアは、そう言いながら小さく頷くのであった。

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 神殿の中に入ったシルヴィアが、壁画に書かれている絵を見て再び立ち止まったりしていたが、他の者たちはそれに構わず拠点を整えるために動き出した。
 考助は、ミツキと一緒に狩りに出かけた。
 勿論、夜食にするための肉を得るためである。
 新鮮な野菜などは、町に戻って調達しなくてはならないが、肉に関しては嫌というほど手に入れることができる。
 神殿の近くに来るまでにもモンスターの襲撃にあっているので、どちらかといえば肉の調達というよりも素材の調達と言った方が良いかもしれない。
 ちなみに、ワンリは百合之神社の手入れで慣れているため、神殿の掃除組に加わっている。
 お嬢様育ちのフローリアやシュレインも何気にその手のスキルが高いため、あまり役に立たない考助は追い出されたとも言う。

 そろそろいいだろうという頃合いに、いくつかの獲物を持って神殿に戻った考助は、様変わりした神殿に目を見張った。
 やはり人の手が入って綺麗になると、受ける印象も全く変わってくるようだった。
 勿論、人数が限られているので、綺麗に出来ている部分は少ないのだが、それでも埃っぽさは完全になくなった。
「おー。やっぱり綺麗になると気持ちいいねえ」
「流石に全ての部屋にまでは手は回りませんでしたが、良く使いそうなところを優先的に片づけております」
 考助が戻るなり、すぐに報告に来たコウヒがそう言って来た。
 他のメンバーは、まだまだ物足りないのかバタバタと動き回っている。
「しかし、こんな状況だと食事を作るのは難しいかな?」
「いえ。この神殿は厨房が独立して存在していますので、調理中に埃が入ってくることはありません」
 どうやらコウヒは真っ先に厨房を掃除したようで、既に食事の用意をしはじめていたようだった。
「あ、そうなんだ。だったら、もう戻っていいよ。どうせ狩った獲物は、捌いたりしないといけないし」
「そうですね。畏まりました」
 考助の言葉に一礼をしたコウヒは、すぐに厨房のある場所へと戻った。
 そして、それを見送った考助は、ミツキと共に宣言した通り狩った獲物を捌くため再び神殿の外に向かうのであった。
お掃除回でしたw
ちなみに、この後考助は魔道具を使って神殿の周囲を結界で覆っています。
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