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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(6)定番の・・・・・・?

 考助たちが闘技場ギルドで真面目な話をしていたその頃。
 シルヴィアたちは、セイチュンの町の屋台を堪能していた。
 ちなみに、こちらのグループにはミツキが付いてきている。
「ああ! あれ、美味しそうです!」
 ワンリが目ざとく好みの屋台を見つけて、駆け寄って行った。
 その屋台は、本来の屋台通りからはわずかに離れた場所にあるためか、全く客はいなかった。
「はは。お嬢さん、ありがとうな」
 そして、真っ直ぐに店に向かって来たワンリをみて、店主が笑顔になった。
 さらに続いてやってきたシルヴィアやフローリア、ミツキを見てその笑顔が若干固まった。
 一番最初に来たワンリだけでも、相当な美少女なのだ。
 それに加えて、ミツキを筆頭に彼女に勝るとも劣らない美女二人が加わったのだ。
 ここまで来ると、一体何の冗談だと言いたくなってくるのだろう。
 そんな店主ではあったが、作業の手は止めていなかった。
 そんなところは、見上げた商売根性といったところだろう。

 店主の手つきを見ていたミツキが、感心したように頷いていた。
「確かに美味しそうね。流石ワンリね」
「ほう? それは良いことを聞いた。店主、人数分もらおうか」
「へい、まいど」
 店主はそう言い返しながら、チロリと視線をフローリアへと向けた。
「折角買ってくれたお客さんだから言うが、お前さんたち大丈夫かい?」
 心配そうな顔になって別の方向を見た店主に、フローリアが小さく笑いながら答えた。
「目ざといな、店主。だが、私たちの心配はいらないぞ」
「なんだ。ちゃんと気づいていたのか。余計な心配だったようだな」
 フローリアの顔を見て、自分の心配が全く必要なかったことに気付いた店主は、ばつの悪そうな顔になった。
「何。忠告感謝する」
 気にするなと右手を振ったフローリアに、店主は出来上がった物を手渡した。
「はいよ。ここで食べていくんだろう?」
「そうだな。こういった物は、その場で食べるからこそ美味いんだろう?」
「そりゃそうだ」
 フローリアの返しに、店主はガハハと笑うのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ワンリが見つけた屋台を離れて、他の店を冷やかしながらシルヴィアたちは、段々大通りから離れた場所へと行きついた。
「この辺りなら、被害も抑えられるでしょうね」
 シルヴィアがポソリと呟くと、他の面々も頷いた。
「折角ここまで誘導したのだから、きっちりと来てほしいものだが」
「どうかしら? 単に監視だけのつもりかもしれないわよ?」
「宿まで付いてこられたら面倒ですよね」
 シルヴィアに続いて、フローリア、ミツキ、ワンリが次々に好き勝手なことを口にしている。
 そんな彼女たちの願いが通じたのか、さらにもう少し奥に進んだ場所で、声をかけて来た者たちがいた。
 あからさまに腰に剣を携えた五人ばかりの男たちだった。

 ニヤニヤと薄笑い浮かべながら近付いてきた男たちのひとりが、一歩前に出て話しかけてきた。
「よお、姉ちゃんたち。ちょっくら顔を貸してくんねーか?」
「断る」
 フローリアが余りにきっぱり、はっきりと断ったためか、男たちは一瞬何と言われたのか分からないといった顔になり、次いでわずかに怒気をはらんだ顔になった。
「おいおい、それは本気で言っているのか?」
 わざとらしく腰の剣に手を当てながら、男はそう言ってきたが、フローリアには何の感銘も与えなかった。
 一国の女王として君臨していた彼女にとっては、男たちのプレッシャーなど物の数ではない。
 そもそもミツキが傍にいる以上、自分たちに対して何か出来るとも考えていなかった。
 それよりも問題なのは、彼らが単に彼女たちに魅かれてやって来ただけなのかが重要だった。

 表情を変えないフローリアに、男はほんの少しだけ訝し気な表情を浮かべたが、すぐに元のニヤケた表情に戻した。
 感じた違和感よりも、今までの経験の方を優先したらしい。
「俺たちとしても、できれば大人しく付いてきてほしいんだがな?」
「聞こえなかったのか、断るといっただろう? まさか本気でお前たち程度の腕で私たちをどうにかできると考えているのか?」
 わざと焚き付けたフローリアの言葉に、男たちは見事に反応した。
「兄貴、もういいだろ!」
「めんどうくせえ、やっちまえよ!」
 そんな声が次々と他の男たちから聞こえて来た。
 その様子を見て、男はチッと小さく舌打ちした。
「忠告はしたからな?」
 そう言ったときには、既に男の眼は戦闘用のそれへと変化していた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「ば、馬鹿な・・・・・・」
 シルヴィアたちに最初に話しかけて来た男は、呆然とした様子でその結果を見回した。
 そんな男に対して、ミツキが不満そうな表情で語り掛ける。
「何よ。勇んできた割には大したことなかったわね。もう少し根性を見せたらどうなのよ?」
 ミツキを相手に根性を見せてもどうにもならないだろうとフローリアは思ったが、わざわざこの場でそれを口にすることは無かった。
 ちなみに、辺りに寝そべっている男たちは四人からさらに二人ほど増えている。
 男たちは、彼女たちの前に出て来た五人以外にも離れた場所に別の仲間を待機させていたが、それも全く意味をなさなかったのである。
 唯一、まだ気絶させられずに済んでいた男は、一度周囲を見回したあとでふと気が付いた。
 これだけの短時間で仲間たちを沈められる実力があるのだ。
 自分を同じようにすることなど簡単にできるだろう。
 それなのに、なぜ未だに自分は立ったままでいられるのか、と。
 そこまで思い至って顔を引き攣らせる男に、ミツキが最高の笑顔を向けて言った。
「さて、それじゃあ、もう少し詳しくオハナシしてもらいましょうね」

 ミツキが男からさらに詳しく男から話を聞くと、予想通り(?)男たちは金を貰って彼女たちをある場所まで連れてくるように依頼されていた。
 その場所は、最近になって住み着いたとある貴族の屋敷だった。
 セイチュンは、独立した町なので貴族はいないが、他国からの貴族は来ることがある。
 今回もそうした貴族が、たまたま町を歩いていたシルヴィアたちに気付いて、目を付けたらしい。
 そこまで話を聞いたミツキは、さっさと男を落とすことにした。
「はい。それじゃあ、あなたもしばらく眠っていてね」
 そんなことを言ってからミツキが当身を食らわせると、見事に男はその場に崩れ落ちた。
「・・・・・・と、いうわけだけれど、どうするの?」
 変な角度で倒れないように見ていたミツキは、シルヴィアたちの方を振り返ってそう聞いた。
 それに対しての他のメンバーの返答もあっさりしたものだった。
「まあ、放置でいいんじゃないか?」
「下手に関わると深みにはまりそうですわね」
「うーんと、色々と面倒そうです」
 見事なまでに意見が一致したためこの件に関しては、放置ということになった。
 そもそもあと数日もせずに、彼女たちはガゼンランの塔に籠ることになる。
 そのためわざわざ面倒事を広げる必要もないのである。

 このあとは、男たちを放置して再び大通りに戻ったシルヴィアたちは、先ほどまでと同じように屋台の冷やかしを楽しんだ。
 勿論、冷やかしだけではなく、気になったものは口にしている。
 先ほどの店主と同じように行く先々の店で驚かれることになるのだが、彼女たちも考助たちと合流する頃には、そうした対応に慣れてしまっていた。
というわけで、今回は無視です。
考助がいなくてもこうしたことは起こっているんですよ、という話でしたw
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