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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(3)権利主張

 コウヒから同意を得て安心したアデールは、次は考助へと視線を向けた。
「次はコウ様のお耳に入れておいていただきたい話ですが・・・・・・」
 アデールは一度話を区切ってから、ドノバンを見た。
 そのドノバンは、アデールからの視線を受けて頷いた。
 そのやり取りに何の意味があったのかは分からないが、考助は黙ってアデールが話し出すのを待った。
「最近、クラウンは『アエリスの水』の扱いを巡って、セイチュンにある各ギルドから圧力のようなものを受けています」
「圧力? なぜ?」
 そもそも『アエリスの水』の扱いに関しては、クラウンを立ち上げるときに話をしていたはずである。
 今までの分に関しては手を出さず、クラウンはクラウンで独自の採取場所を使うことになっているのだ。
 そのことに関しては、支部長も副支部長もきちんと認識しているのか、二人揃って頷いている。
「なんでもあちらの言い分としては、塔で採れる資源は独占することなど許されないそうです」
 今更散々独占していたくせにどの口でそんなことを言うのかと呆れたが、相手にとっても建前などどうでもいいのだろう。
 新しく発見された泉を一つの組織に独占させておくのが惜しくなったのが見え見えだった。

 勿論、クラウンとしてもそんな戯言など言うことを聞く必要はない。
 だが、現実問題として難しい側面もある。
「クラウンメンバーが採取している場所は相手に把握されてしまっています。冒険者の行動を全て把握するわけにはいきませんから、陰で採取されたとしても此方としては対処のしようがありません」
「いくら稼ぎのためとはいえ、四六時中泉に人員を張り付けておくわけにもいかんしな」
 アデールの言葉に、ドノバンがクラウン側の実情も付け加えた。
 アデールもドノバンも言葉にはしなかったが、現場で冒険者同士でアイテムの融通をしていても分からないという問題もある。
「それはそうでしょうが、別にクラウンとしては、独占しているつもりはないのでしょう?」
「それはそうだ。塔で採れる素材は、等しく採って来た者に権利がある。アマミヤの塔みたいに土地そのものを活用しているならともかく、そうじゃないなら大っぴらに権利を主張するつもりもない」
 ドノバンの言葉に、アデールも頷いてから続けた。
「ただ、現実問題として、こちらの権利を主張しないと囲い込みをされるということが出てきます」
 自然の中で生えてくる素材と違って、泉で採れる水は必ずその場所に行けば採れる。
 勿論、自然に取れる薬草などにも、群生地のようなものはあるが、泉のように何かで囲まれているわけでもないのだ。
「なんというか・・・・・・面倒くさいですねえ」
「全くだ」
 思わず本音が出てしまった考助に、ドノバンも思いっきり頷いている。
「それには私も同意しますが、クラウンとして対処しないわけにはいきませんから」
 アデールが首を左右に振りながら、ため息混じりにそう言った。

 そこまで話を聞いた考助は、ふと思い出したようにアデールを見た。
「この話、本部には伝えていますか?」
「はい。といってもその時はまだ今ほど顕著ではなかったので、そういう動きがあるといった程度ですが」
「なるほどねえ。・・・・・・いっそのこと泉の囲い込みでもしてみたらいかがですか?」
「「囲い込み?」」
 考助のちょっとした思い付きに、ドノバンとアデールが首を傾げた。
「ここの建物にあるものと同じですよ。部外者は立ち入れないようにすることができる魔道具があります」
 早い話が、結界と同じような効果をもたらす魔道具を使って、許可した者以外は立ち入れないようにするのだ。
 そうすれば、権利を主張する煩わしい問題はなくなる。
「確かに、それを使えば話は早いだろうが・・・・・・いや、むしろ問題を大きくするだけで、より面倒になりそうだな」
 相手も同じようなアイテムを使ってくると、今度こそ色々な勢力が入り混じって小規模な戦闘が起こる可能性も出てくる。
 クラウンとしてはそんな面倒事はできるだけ避けたいというのが本音なのである。
 考助としてもアイテム云々は一つの手段としてあるということを伝えたかったので、ここで強引にことを進めるつもりはない。

「そうですか。まあ、いざとなれば別の採取場所をお教えしすることもできますので、気楽に対処してください。クラウンとしての立場は守ってもらいますが・・・・・・って、こんなことは私が言わなくてもお二方ともわかっているでしょうが」
 微笑を浮かべながらそう言った考助だったが、ドノバンもアデールも前半の言葉で固まっていた。
「・・・・・・別の採取場所なんて、あるのか?」
 以前にガゼンランの塔を攻略した時に見つけた泉は、クラウンに全て伝えているわけではない。
 そもそも第七十層にある神殿のこともきちんとは伝えていないのだ。
 流石に神殿にある泉の事まで伝える気はないが、考助たちはその他にもいくつかの泉の場所を把握している。
「勿論ですよ。まあ、それは最後の手段にとっておきましょうか」
 あっさりとそう告げた考助に、ドノバンは首を左右に振った。
部門長ガゼランから話には聞いていたが、とんでもないな。まあ、いい。確かにその情報はまだ俺たちは知らないほうが良いだろう」
 他に逃げ道があるというだけでも今後の交渉に色々と含みを持たせておける。
 それは実際に交渉することになるアデールにとっても非常に良い情報だった。
 他にも泉があることを他に漏らすつもりはないが、確かに考助が言う通り最後の手段として取って置ける意味は大きい。

 付け加えると、考助にはまだ他にも手段があったりする。
 一度は却下された泉の囲い込みだが、神具を作って完全に防御することも可能なのだ。
 そうなれば、例え大軍を送り込んできたとしても、相手に奪われる心配はない。
 問題は、そこまでする必要があるかどうかだけなのである。
 ドノバンやアデールが決断をしてガゼラン辺りが許可を出せば、考助もその神具を作ることは構わない。
 これは要検討だなと考えつつ、考助は二人には別のことを言った。
「まあ、実際にどうなるかはともかくとして、早めに本部に伝えておいた方が良いと思いますよ? クラウンとしてどうするかの方針も決めれるでしょうし」
 いくら支部が本部から離れてある程度の独立性を持っているとはいえ、出来ることは限度がある。
 特に相手が国などの大きな組織になってくると、どうしても本部の意向は確認する必要がある。
 そして、残念ながら今回のセイチュンの動きは、『アエリスの水』というものが絡んでいる以上、どう見ても国が絡んでいると考えるのが正しい状況だった。
 こうなってくると、支部長の権限だけでは対処しがたい。
「ああ、そうするつもりだ」
 考助の言葉に、ドノバンが頷いた。

 話が一区切りしたところで、ふとドノバンが気付いたように考助を見た。
「そういえば、今回は何をしにこっちに来たんだ?」
 ドノバンは、考助の正体を知らない。
 ガゼランからアマミヤの塔で活躍する優秀な冒険者として話を聞いているだけだ。
 実際には本部の建物にもほとんど顔を出していないのだが、ドノバンもわざわざそんなことを調べるつもりはない。
 ガゼランが信頼している冒険者のひとりだと分かっているだけで十分なのだ。
「しばらく塔にこもって色々と素材を集めようと思います」
 考助としても本当のことを言うわけにはいかないので、当り障りのない返事を返しておいた。
 それに、長期間ガゼンランの塔に籠ることになるのは、間違いではない。
「そうか。・・・・・・なにか話をするだけだったのが相談みたいな形になって済まなかったな」
 ドノバンの言葉に、考助もああそういえば、という表情になった。
 ついいつもの癖でガゼランに答えるように返答していたが、一冒険者がするようなことではなかった。
「いえ。お気になさらずに。話し込んでしまった私も悪いので」
「そうか」
 苦笑しながら答えた考助に、ドノバンは頷きを返すのであった。
はい。思いっきりフラグが立ましたw
ここまで話をされて、考助が巻き込まれないはずがない!
・・・・・・いっそのこと、全てが終わるまで第七十層の神殿に籠っていてもらいましょうか。
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