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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔の地脈の力を使ってみよう

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(6) エルフという種(2)

コレット話続きです。
 エルフという種族は、ヒューマンと比べて長寿の種族である。
 その成長の仕方も当然、違ったものになる。
 ヒューマンの成長は、多少の誤差はあるとはいえ、肉体と精神がほぼ同時に成長する。
 しかし、長い寿命を持つエルフは、肉体の成長が先に終わり、精神の成長が後から付いてくるのだ。
 エルフに言わせれば、成長が遅いのではなく、長い時を経て深い思索をしているのだという答えが返ってくるだろうが、少なくともそれは個人個人に関してになる。
 他者が関わること、最も顕著に現れるのが恋愛関係だが、それらに関しては、かえってその成長の仕方が邪魔になる場合がある。
 場合がある、というよりも邪魔になっているのだ。
 だからこそ、出生率の低さという現実の数字で現れているのだ。
 簡単に言ってしまえば、肉体は若いままでも、言葉は悪いが、発情期はさほど長く続かない場合がある。
 精神の成長が追い付いたときには、終わってしまっている、ということがあるそうなのだ。
 たちの悪いことに、その発情期に関しては、エルフあるいはハイエルフ自身では気づけないので、尚更悪循環になっている。
 要するに、精神の方が恋愛を求めだすころには、肉体の欲求の方が収まってしまっているということだ。
 ゆえにエルフは、恋愛が無いわけではないのだが、特にヒューマンに代表されるような激しく燃え上がるような、といった表現がされる恋愛が非常に少ないのだ。

「・・・とまあ、こんな感じでどうでしょうか~?」
 ピーチの推論を聞いたドリーが、納得したように頷いている。
「なるほど。感覚では理解していましたが、言葉にするとまさしくその通りですね」
「・・・納得できましたわ」
 同じく横で聞いていたシルヴィアもコレットの方を見ながら、深く頷いていた。
 一方、話の対象にされたコレットとシェリルは、どこか身の置き所が無いような感じになっている。
「・・・ええと、それって結局どういう事?」
 三者の視線に晒されたコレットが、我慢できずに問いかけた。
「まあ、一言で言えば、エルフは超絶鈍感、ということですわ」
 シルヴィアの容赦のない言葉に、ピーチとドリーが頷いた。
「しかも身体はしっかりと成長しているからたちが悪いですね」
「ドリー様、それは容赦がなさすぎです~」
「下手をすれば、種族の存亡にかかわるのだから、これくらい言わないとだめでしょう」
 現に一歩足を踏み込んでいるので、残念ながら言い過ぎともいえないのであった。

「それにしても、ピーチは詳しいですわね?」
「ああ、それは簡単です~。サキュバスは、それをもっと通り過ぎていた種族だったんですよ」
「・・・どういう事ですの?」
 ピーチの言葉に、シルヴィアが首を傾げた。
「簡単に言うと、精神・・・愛とか恋とかは置き去りにして、先に肉体を求めてしまえ~ということですね~」
「・・・・・・納得しましたわ」
「実際に、先に肉体が結ばれて、後から心が付いてきていても、上手くいく例が多かった、というか、ほとんどだったんですね~」
 それはそれで、極端な例という気もしなくはないが、それはあくまでもヒューマンの感覚なのだろう、と思ったシルヴィアだ。
「昔のあの噂は、それを見た他の種族が、サキュバスは肉食系という勘違いを広めてしまったんですね~」
「なるほど・・・」
 ピーチの語るサキュバスの意外な過去に、シルヴィアは思わず感心してしまった。
 だが、ふと現在はさほどその手の噂が広まっていないことに気付いた。
「あら? ですが、今はそうでもないですわよね?」
「今は、占いがありますから~」
 ピーチの言葉に、再び納得してしまったシルヴィアであった。
 要するに占いで相性診断などをしてから、ことに及ぶということなのだろう。
 かなり乱暴な言い方をすれば、ヒューマンで言う所のお見合いをしているのと変わらない。
 世話焼きなおばさん役が、占いになっているのである。
 そんなことを考えていたシルヴィアだが、話がだいぶそれてしまったことに気付いた。
「それでは、コレットはどうすれば?」
「そうですね~。いっそのこと、私達と同じ方法をとってみてはいかがでしょうか?」
 そう言って、にこやかな笑みを浮かべてこちらを見て来た二人に、コレットは思わず逃げ腰になってしまったのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シルヴィアとピーチの暗躍のせいだというのが理解できた考助だったが、何故こんな格好してこの場にいるのかが分からずに首を捻っていた。
「いや、事情は分かったんだけど、何故そんな格好でこの場所に?」
「わ、私だってよくわからない。サキュバスの里で、一番の占い師だというお婆様とか言う人のところで占ってもらったら、いつの間にかこんなことに・・・」
 顔を赤くしてこちらを見てくるコレットに、思わずドギマギしてしまった考助だったが、何となく二人の意図が透けて見えてきた。
「・・・シルヴィア、ピーチ。どういう事・・・?」
 二人の仕掛けだということは、この状況を見ていないはずがないと思い、ドアの方を見る。
 すると、ばつが悪そうな顔をしたシルヴィアと、悪戯っ子のような笑みを浮かべたピーチが部屋に入ってきた。
「いえ。・・・えっと、コレットのここ最近の悩みを解決できるのは、コウスケさんしかいないので、是非とも頑張ってもらいたいですわ」
「そうですね~。お婆様の占いは、外れませんよ? 特にそっち方面では~」
 二人の言葉に、頭を抱えてしまった考助である。
 二人の意図は完全に分かったが(コレットは分かっていないようであるが)、いくらなんでも抵抗がある。

 と、そんなことを考えていると、更に乱入してくる者がいた。
「話は全て聞いたわ。でも、二人とも詰めが甘いわよ」
 ミツキである。
「そうですか~?」
「そうよ。シルヴィの時のことを思い出しなさい」
 そうミツキは断言して、それを聞いたシルヴィアが思わず納得してしまった。
「・・・そうでしたわね。相手は、コウスケさんでしたわね。これで上手くいくとは、虫が良すぎでしたわ」
 そんな二人の様子に、考助は思わず逃げ出しそうになったが、ここで思わぬ伏兵が現れた。
「すみません、主様」
 まさかのコウヒだった。
 コウヒは、考助が動けないように、がっしりと背後から考助を抑え込んだ。
 そして、コレットに聞こえないように、耳元でささやいた。
「今回ばかりは、エルフ一族のために主義に反しても事を起こしてください」
「いや、でも・・・」
 反論しようとした考助に、更なる追い打ちが待っていた。

『往生際が悪いですよ?』

 なんとシルヴィアの持っている神器から聞こえてきたのは、エリスの声であった。
 いつの間に向こうから接続できるようになったとか色々疑問がわいてきたが、今の状況はそれを許さない状況だった。
「ほんとに、それしか方法はないの?」
「あるのなら、エルフ族の出生率は落ちていないでしょう」
 コウヒの言葉に、考助は諦めたようにため息を吐いた。
 そして、一人話の流れに取り残されたような表情をしているコレットに、近づいて行った。

 戸惑うコレットに、考助はさらに近づき、最後には唇を合わせた。

 突然のことに、コレットはただ呆然とするだけだったが、さらに続けられた考助の言葉に、今まで以上に頭が真っ白になった。
「ちゃんと嫌だったら嫌って言ってね。その時はちゃんと止めるから」
 その考助の言葉が、頭の中で繰り返されるが、結局のところコレットの口から嫌だという言葉は、最後まで出てこなかった。
 むしろ翌日起きた時には、貴方は誰ですか、と全員が思う程に、デレたコレットがいたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ちなみに・・・。
「今回、妙に積極的に動いてましたが、一応理由を聞いても?」
 普段はなかなか首を突っ込んでこないピーチに、疑問を持ったコウヒである。
「それはもちろん、これで私も遠慮がいらなくなりますから~」
「やはりそうですか」
 立派な胸を張って言われた言葉に、コウヒは特に表情を変えることなく頷いた。
「止めないんですか~?」
「止める必要があるのですか?」
「どうなんでしょう~?」
 わずかに首を傾げたコウヒに、ピーチも同じように首を傾げた。

 その様子を傍で見ていたミツキが、忍び笑いをしていたのは、最後まで気づかなかった二人であった。
最後の行のミツキの忍び笑いは、特に深い意味はありませんw
フラグじゃないですよ。

2014/5/24 誤字修正
2014/6/14 脱字修正
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