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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のあれこれ(その13)

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(11)オーブ

 神域への定期訪問の日。
 考助は、不思議な光景を見てたまたま隣にいたジャルに聞いた。
「ねえ。あれって、何しているの?」
「どれ? ああ、あれね。考助は見るの初めてだっけ?」
「うん。今まで見たことないね」
 二人の目の前では、女神たちがちょっとした広間にある水晶のような球体に触れていた。
 しかも、ずっと触っているというわけではなく、入れ代わり立ち代わり女神たちがやってきては、少しだけ触れてその部屋から出て行っている。
 傍から見ていると、触れるとご利益にある石に触れて行っている参拝者のようだ。

 考助のその感想を聞いて、ジャルはフンフンと納得したように頷いている。
「なるほどねー。でも、中らずと雖も遠からず、かな?」
「え、そうなの?」
「実際あれは、部屋の中央にあるオーブに触れるだけの作業だからね」
「というと?」
「うーんと、ねえ。・・・・・・あ、エリス姉! 説明は任せた!」
 どう説明しようと首を傾げたジャルだったが、目の前に現れたエリスを見ていきなりそんなことを言い出した。
 当然二人の話を聞いていなかったエリスは、首を傾げることになる。
「・・・・・・何のことでしょう?」
 仕方なしに考助は、もう一度エリスに同じ質問をする羽目になった。

 考助からの説明を聞いたエリスは、納得したように頷いた。
「そうでしたか。あれは、簡単に言えば、この神域を維持するための神力を集めているのです」
「神力を?」
「はい。これだけ広大な土地を一つの世界として維持するには、膨大な力が必要になりますから」
「へー、そうなんだ」
 エリスの説明に頷く考助だったが、ふと疑問に思った。
「あれ? 僕が作っているあの空間には、そんなに神力が使われているって意識はないんだけれど?」
 現状考助が作った神域は二つある。
 一つは、ミアが管理しているリトルアマミヤに行くために途中中継している空間で、もう一つは、考助とコウヒとミツキ、それに加えて女性陣の五名だけが行けるようにしてある空間だ。
 流石に女神たちが生活している神域とは比べ物にならないということは分かるが、そもそも二つの神域の維持に考助自身が神力を使っているという自覚がほとんどない。
「それはそうです。考助様が創ったただの空間だけのものと、これだけの自然物が配置されている広大な空間ではかかる神力が全く違います」
「あ~。それはそうか」
 考えてみれば当然の理由に、考助が納得して頷く。
 そもそも何でそんなことを思いつかなかったのだろうか、という思いだった。

「それであんな風に神力を集めているわけだ」
 相変わらず女神たちがオーブに手を触れていく光景を見ながら、エリスが頷く。
「そうです。それ以外にも理由はありますけれど」
「というと?」
「女神としてああして神力を預ければ、それだけこの世界との繋がりも保てるのですよ」
 若干寂し気な表情になったエリスに、考助も神妙な顔をした。
「そういうことね」
 考助がこうして定期的に神域に来るようになったのも、女神たちが自分たちの存在を残せるようにと希望した結果だ。
 女神たちにとっては、このオーブに触れて神力を捧げるという行為は、それと同じような意味合いを持っているのである。

「その他にも、女神が持っている神性(神の性質)を保っておくという意味もありますが」
 こうやってオーブに女神たちが触れることにより、彼女たちが持っている神性を記憶しておくことができる。
 そうやって記憶した神性は、特に何かに使えたりはしないが、過去に存在していたという記録になる。
 女神として存在した証拠を何も残さずに消えるよりは、こうして何かの形に残した方がいいというわけだ。
 現に、そうした存在が消えて行った女神の神性も、このオーブにはしっかりと記録されている。
 ただし、これらの記録に触れることができるのは、神域の主であるアスラだけだ。
 たとえエリスであってもその記録を見ることが出来ないのである。
「ふーん」
「もしかすると、考助様であれば見ることができるかもしれませんけれど」
「え!? そうなの?」
 エリスたちが触れられないものに、なぜ自分が、と思った考助である。

 だが、エリスは考助の両目を見て言った。
「その目ですよ」
「目?」
「そうです。考助様の権能である目の能力が伸びれば、あるいはそうしたものも見れるようになるかもしれません」
「へー、そうなんだ」
「もしかしたら、私の希望も入っているかもしれませんが」
 悪戯っぽく笑ったエリスに、考助は首を傾げた。
「というと?」
「いえ。もし私の存在が消え去ったときに、考助様に見られたら思い出してもらえるかと思いまして」
 唐突過ぎるその言葉に、考助は目をぱちくりさせた。
「いや。エリスの存在が無くなるときって、僕自身も危ういと思うんだけれど?」
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
「では、そういうことにしておきます」
 何とも意味深に言うエリスだったが、考助もあえてそれ以上は突っ込まなかった。
 エリスがいなくなるということは、アースガルドの世界が無くなるような大きな変化が起きたときだと考助は考えている。
 現人神となった考助の命がどれほどあるのかは分からないが、そんな状態になってまで考助は自分自身が生き残っているとは思えなかった。
 ただし、エリスの顔を見ている限りでは、そうとも限らないようだったが、それは考えないようにする考助であった。

「ところで・・・・・・」
 考助からの質問が終わった判断したエリスは、二人の傍でフンフンと頷いていたジャルを見た。
「あなたはなぜ、私に任せたのでしょうか?」
「うえっ!?」
 ビクッと驚いた表情になったジャルは、右手の人差し指を左右に細かく揺らしながら、
「え、えーと、ほら。せ、折角だから、エリス姉から話した方が良いと思って」
「何が『折角』なのかはわかりませんが、そうですか。私はてっきり、貴方がオーブの役割を忘れたからかと思いました」
「そ、そんなわけないわよ!?」
 視線を左右に揺らすジャルを、エリスはジッと見つめる。
「そうですよね。いくら貴方でもそんなことはありませんよね」
「うぐっ!」
 ただただ自分を見つめてくるエリスに、ジャルはぐっと言葉を詰まらせる。
 そして、やがてその視線に耐え切れなくなったかのように、視線を右上上空にそらした。
「・・・・・・ほら。私は何となくのうろ覚えだったから、エリス姉に任せた方が確実かなーって・・・・・・」
「はあ。全く・・・・・・」
 白状したジャルに、エリスは呆れたようにため息をはいた。

 その二人のやり取りが聞こえていたのか、少し離れた場所からクスクスと笑い声が聞こえて来た。
「まあ、エリスもそのくらいにしておきなさい。本来の意味なんて、ほとんどの女神も忘れてしまっているでしょう?」
 そう言って近づいてきたのはアスラだった。
「そうなの?」
 内容的にはかなり重要だと思うのだが、そんなことを簡単に忘れるのだろうかと考助は首を傾げた。
「そうなのよ。元はほとんど顔を合わせることのなかった女神たちが集まる場を作りましょう、というのが始まりだから」
 最初は本当にただ集まって話をするだけの場で、何人かの女神に神力の補充を頼むだけだったのだが、いつの間にかほとんどのものが参加する儀式になっていたのだ。
「あれ? 僕は補充しなくてもいいの?」
「いいのよ。というより、補充しないほうがいいわ」
 アスラの説明によると、オーブへ神力を補充するのは神域で生活する女神たちのもので、現人神である考助が補充すると下手をすればこちら側に縛り付けられる可能性があるということだった。
 本当にそういうことが起こるかどうかはアスラにも分からないが、そうなる可能性がある以上、下手に触れないほうが良いとまで言って来た。
 その話を聞いた考助も、そういうことならと、オーブに触れるのはやめておいた。
考助がオーブに触れると、考助の神力が神域に縛り付けられるので現人神としてアースガルドの世界に存在するための力(契約?)が薄れてしまいます。
そのため、徐々に現人神ではなくなり最後には普通の神となって神域に昇天するしかなくなってしまう、というわけです。
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