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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のあれこれ(その13)

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(8)慢心(リクの冒険の時間2)

 シュレインに加えてココロまで付いてきたのは、シルヴィアの鶴の一声があったからだ。
 リクが混ざった夕食の席で、シュレインが今度一緒に冒険者として冒険に出る話を聞いたシルヴィアが「だったらココロも一緒に連れて行ってくれないかしら?」と言ったのである。
 それを聞いたシュレインが、リクの返事を待たずにすぐに了承してしまったのだ。
 仮にもパーティのリーダーであるリクの意見も聞かずに何を勝手に決めているんだという考えは、その時のリクは全く思い浮かばなかった。
 精々が、シュレインがいるのであれば護衛を考えなくて楽だな、と思っただけだった。
 そんな呑気なことを考えていたリクだったが、そのときはすっかり忘れていたのである。
 シュレインもココロもとても人目を引くということに。
 それに気が付いたときは後の祭り。
 さらに容姿以外でも注目を浴びてしまったリクたちは、そそくさと依頼を決めて冒険に出ることになった。

 リクたちのパーティは、アマミヤの塔の第四十三層を活動の場所としている。
 そこよりも下の階層では、パーティの実力では物足りず、逆に上に行くと少しだけ厳しい。
 本来であれば、上に行ってもいいくらいの実力はあるのだが、メンバーの半数以上が学園の学生のため時間的な余裕がない。
 第四十三層だとセーフティエリアを利用して、日帰りでも冒険できるくらいの活動ができるのだ。
 そのため彼らにとってアマミヤの塔の第四十三層は、ホームグラウンドと言って良い場所なのである。
 ココロとシュレインに良い所を見せようとアンヘルが張り切った結果、まさか玉砕されることになるとはパーティの誰も考えていなかった。

「あ、あそこにイリュウの実がありますね」
「どれ? ほんとだの」
「・・・・・・ホントデスネ」
 ココロとシュレインに遅れること数秒後、パーティの探索役であるアンヘルが呆然とした様子で答えた。
 先ほどからココロとシュレインは、次々と貴重な素材を見つけている。
 それこそ第四十三層がホームグラウンドだと思っていたパーティメンバーにしても、まさかこんな場所でそんなものが見つかるのか、という思いだった。
 若手トップのパーティで一番の探索能力を持っていると自負していたアンヘルの自信は、あっさりと二人に打ち砕かれた。

 一方、他のパーティメンバーは、直接の被害を受けてはいないが、それでも大きなショックを受けていた。
 そして、苦笑と共にシュレインとココロを見ていたリクに矛先を向けることとなった。
「ちょ、ちょっと! 何なのよ、あれは!?」
 シュレインとココロに聞こえないようにコソコソと聞いてきたカーリに、リクは苦笑と共に答えた。
「何と言われても、見ての通りだが?」
 リクにしてもココロがここまで次々と素材を発見するとは思っていなかったが、似たような状況になることは予想していた。
 何しろココロは、考助の加護を持っているのだ。
 いつの間にか、現人神を信仰すれば素材の発見率が上がるという噂が広まっているくらいだ。
 加護を持っているココロが、今まで見つけられなかった素材を発見すること自体は、リクにとってはあり得ることなのだ。
 もっともココロが加護を持っているなんてことは知らないパーティメンバーたちは、リクの説明に納得できなかった。
「見ての通りって! まさか、そんな説明で納得できるとでも?」
「いや、納得できるできないではなく、納得するしかないだろう? ココロ姉は、現人神を主神としている巫女なんだぞ?」
「あっ・・・・・・!?」
 リクに言われて、ようやく気が付いたと言わんばかりにカーリの目が大きく見開いた。
 そして、他のメンバーたちも少なからず似たような表情になっていた。

 現人神にまつわる話をようやく思い出したメンバーたちは、次いで感心したような表情になった。
「なるほどね。これが噂に聞いた現人神の力か」
 そうエディが納得すれば、隣を歩いていたゲレオンが頷いている。
「うむ。確かに凄まじいな。話半分に聞いていたが、実際の噂以上だ」
「噂になるのも分かるわね」
「・・・・・・いいなあ」
 口々にそう言ったメンバーに、リクが慌てて補足した。
「いや待て。先に言っておくが、信仰心を持てば誰でもああなるわけじゃないからな? あくまでもあれは、ココロ姉だからだ」
 ここで釘を刺しておかないと、街に戻ってすぐにでも神殿通いを始めそうだと考えたリクが、慌ててそう言った。
「そうなの?」
 キョトンとしたカーリに、リクが大きく頷く。
「ああ。カーリだって、ココロ姉の噂は聞いたことがあるんだろう?」
「・・・・・・ああ、そういえば」
 学園にいたころのココロは、必要な授業を受ける以外のほとんどの時間を巫女としての修業に費やしていた。
 そのことは、美しく成長して本人の噂が広まるとともに、同時に知られて行った。
 ココロが卒業するころには、知らない学生はいないのではないかと言われていたほどである。

 ココロに纏わる噂を思い出したカーリは、ため息を吐いて言った。
「確かにすごかったみたいね。もう少し簡単に出来ないかしら?」
「カーリ、それは下手をしたら神に対する不敬になるぞ?」
 自分でも思った以上に固い声が出て驚いたリクだったが、それ以上にカーリは驚いた顔になっていた。
 そしてすぐに神妙な顔になって謝った。
「ごめんなさい。少し調子に乗ったわ」
「いや、良いんだ。俺も言いすぎた」
 カーリはリクの実の親が誰になるのか、きちんと知っている。
 リクが言った神の不敬というのは、そのまま彼の父親に対する不敬と言う意味になるのだ。
 それが理解できたからこそ、カーリはすぐに謝ったのである。
 ちなみに、リクはリクで、思った以上に父親に対しての尊敬の念があったのだと改めて認識させられていた。
 それを自覚したリクは、心の中で苦笑をするのであった。

 リクたちがのんびりとそんなことを話しているのを、シュレインはこやつらもまだまだだなあと思いながら聞いていた。
 シュレインは、以前のリクほどではないが、彼らが若手トップと言われてどことなく慢心しているのを感じ取っていたのだ。
 探索中に、私語をするのが駄目だということではない。
 むしろ、戦闘前にリラックスしておくのは、一流になるためには必ず必要になることだった。
 だが、自分たちの力に慢心してしまってはいけない。
 現に、今もそういう状況にあった。
 仕方がないとばかりに大きくため息を吐いたシュレインは、リクたちに向けて忠告した。
「いつまで私語をしておる? 戦闘態勢を取らなくてもいいのか?」
 シュレインのその言葉に、一同が訝し気な表情になる中、リクとココロは厳しい表情で辺りを見回した。
 それから遅れて数秒後、索敵を担当しているアンヘルの厳しい声が飛んだ。
「チッ! あそこだ!」
 そう言って指をさした方に、数体のモンスターが確認できた。
 しかも向こうはきちんとリクたちを認識しているようで、真っ直ぐに向かってきていた。

 モンスターの集団は、きちんと倒すことができた。
 ついでにいえば、シュレインの助言が無くとも倒すことが出来ただろう。
 だが、誰かが傷ついていたのは間違いない。
「おしゃべりするななんてことを言うつもりはない。というよりも、堅苦しい空気のままでいるより遥かにましじゃ。だからと言って、モンスターよりも優先すべきではないの」
 いや、いつもはきちんとできている、という言い訳は通用しない。
 相手はモンスターなのだ。
 特に怒っているわけでもないシュレインのその言葉は、パーティメンバーに深く突き刺さるのであった。
大丈夫か、若手トップ。
まあ、今まで本人たちが気づいていなかったところを、今回敢えてさらして書いたのでこうなったという結果です。
いつも来ているから、という油断と、自分たちなら大丈夫という慢心が出てしまったというわけです。
次話は彼らに名誉回復してもらいますw(タブン)
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