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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のあれこれ(その13)

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(7)教育的指導(リクの冒険の時間1)

 シュレインから意外な強さを見せつけられたリクは、きちんとピーチへお祝いを言って、その後にコレットの元へと訪ねた。
 勿論、久しぶりの新たな兄弟を見に行くためだ。
「おー。ちゃんと双子だ」
 双子の兄妹を見て、意味の分からない感想を言っていたリクは、なぜか付いてきていたシュレインにペシリと頭を叩かれた。
「あいたっ!?」
「何を当たり前のことを言っておる」
「いやだって、こんな小さい子が兄弟だって言われても、何を言って良いのか分からないんだよ」
 セイヤとシアが生まれるまでは、リクの下にはルカしかいなかった。
 たったひとつ違いの弟だと、こんなに小さい時の記憶などないのは当たり前だろう。

 シュレインとリクのやり取りを見ていたコレットは、くすくすと笑いながら双子へと視線を向けた。
「でも、ちゃんとこの子たちには懐かれているみたいよ。流石にたらし(・・・)ね」
「いや、ちょっとそれはどーかと」
 コレットの言葉にリクは渋い顔になった。
 考助の眷属たちから好かれまくっているリクは、いつからか女性陣からたらしと言われるようになっていた。
 ただし、リクとしてはそのたびに否定していた。
 もし本当にたらしだったら、どうしてこんなにモテないんだ、と。
 もっともこれはリクの認識不足で、トワと同じくリクはちゃんと(?)モテている。
 残念ながらその鈍感力で、見事にスルーしている多くの男性にとっての敵だった。
 それでいながらきちんと同性からも好かれているところが、リクのたらし(・・・)たる所以だろう。

 最初は戸惑いを見せていたリクだったが、そのあとはしっかりとたらしの名に恥じない行動を取った。
 あっさりと双子の子供に慣れてしまい、上手にかわるがわるあやして見せるまでに至った。
「ふむ、こうしてみると、親子みたいだの」
「あらあら」
 子供をあやしているリクを見て、シュレインが冗談を言い、コレットがくすくすと笑った。
 そして、そんなことを言われた本人リクは、血相を変えた。
「か、勘弁してください!」
「あら。それは私が不満ってことかしら?」
「い、いや、そう言うことではなく!」
 不満そうな顔になったコレットに、リクは慌てて否定をする。
「なんじゃ、やはり親子かの」
「いや、だから、そうじゃなく!」

 こんな調子でシュレインとコレットにからかわれまくったリクは、最後には「勘弁してください!」と音を上げた。
 その様子を見て、クククと笑っていたシュレインは、ふと思いついたようにリクを見た。
「そういえば、リクは冒険者としても活動しておるのじゃろ?」
 唐突なその言葉に、リクは首を傾げつつ頷いた。
「? ああ、そうだけれど?」
「ふむ。それは良い。今度吾も一緒に依頼に連れて行ってくれ」
「は、はいっ!? なんで、突然?」
 シュレインの言葉に慌てふためきつつ、リクが目を見開いた。
 以前のガゼランの気まぐれのときは別にして、管理層のメンバーがリクにそんなことを言ってきたことは一度もない。
 実力差がありすぎて参考にならないということもあったが、単にリクが嫌がるのが分かっていたので、言ってこなかったのだ。
 だが、ピーチ、シュレインと模擬戦をしてきて、そろそろ次の段階のことを教えても構わないだろうと、シュレインは判断したのだ。
 そのことを察したコレットが、慌てるリクを説得しにかかった。
「あら。たまにはいいんじゃないかしら? 出来れば私も行きたかったわ」
「無理を言うな。そもそも其方は、まだ産後間もないだろう?」
 既に一緒に付いて行くことが決定しているかのような言い草に、リクはカクリと首を落とした。
 こうなってしまっては、自分の意見が通らないことは、これまでの短い(?)人生でよくわかっているのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 リクが連れて来たふたり(・・・)を見て、パーティメンバーのひとりであるゲレオンは驚きに目を見開いた。
「おい、リク。大丈夫なのか?」
「あ~。まあ、実力的には心配する必要はないと思う」
「いや、そう言うことじゃなくてだな・・・・・・あ~。遅かったか」
 ゲレオンはそう言って、額に手を当てた。
 リクが首を傾げながら視線をゲレオンと同じ方向に向けると、納得したように頷いた。
 同じくパーティメンバーのひとりであるアンヘルが、無謀にもシュレインへと突撃していたのだ。
「美しいお嬢さん。今度是非、私と一緒に食事でもどうですか?」
「ん? ああ、私の事か? まあ、また今度な」
「そんなことを言わずに・・・・・・」
 シュレインにつれなくされたアンヘルは、それでもめげずにアタックを続けている。

 それを見ていたリクは、心配するなとばかりに手を振った。
「気にするな。あの人は、アンヘルの緩い釣り糸に引っかかるような人じゃない」
「へ~。それじゃあ、リクはそんな人とどんな関係なのかしらね? しかも、ココロ先輩まで連れてきて」
 如何にも興味があります、という表情をしてカーリが聞いてきた。
 その彼女の隣では、弓を持ったダーリヤがコクコクと頷いている。
 リクが連れて来た二人というのは、シュレインとココロの二人だった。
 シュレインが行くのであれば、ココロも一緒に連れて行ってくれとシルヴィアに頼まれたのである。
 結局、拒否することは叶わず、二人そろって連れてくることになったというわけだ。
 ちなみに、カーリとダーリヤは、リクと同じく学園の学生で、ココロの事はよく知っている。
「どんなと言われてもな。義母はは上だ」
 あっさりそう言ったリクだったが、熱心にシュレインを口説いていたアンヘルも含めて、その場が凍り付いた。
 その影響範囲は、リクのパーティメンバーだけではなく、周囲で様子を窺っていた他の冒険者にも広がっていて、被害は甚大だった。

 その様子を見て、リクは慌てて付けくわえた。
「いや待て、勘違いするなよ? 実のではなく義理だからな?」
「待ちなさい! そっちじゃないわよ!」
 リクが勘違いしているのをカーリが慌てて訂正した。
「あ、あんな若くて美人が、あなたの母親って!?」
 リクが何者であるかを知っているカーリは、リクの実母が誰であるかを分かっている。
 目の前にいる女性が、元女王でないことは一目瞭然だった。
 もっとも、まだ紹介されていないその女性が、女王然とした雰囲気を持っているのは、隠せていなかったのだが。
「若いって、確かに見た目はそうだが、あれで俺の実母ははよりも歳は上・・・・・・」
「あ、ばかっ!」
 慌ててカーリがリクの言葉を止めようとしたが、既に遅かった。
 アンヘルのことを軽くあしらっていたシュレインが、音もなく近寄ってきてゴツンと盛大に拳骨を落とした。
「あいたっ!?」
 避ける暇も与えない見事な教育的指導だった。

 余りの素早さに目を見開いている周囲を無視して、シュレインがリクに言った。
「全く。いつまでも下らないことを言っておらんで、さっさとパーティメンバーに紹介せんか!」
「ういーっす」
「ほほう? 仲間の前だからと、ずいぶんと気が緩んでおるようじゃの?」
 シュレインが軽く返事を返してきたリクを睨むと、リクはシュタッと姿勢を正した。
「イエス、サー!」
「あほか!」
 再び落ちた拳骨に、リクは頭を押さえてしゃがみ込んだ。
 今度のはかなり痛かったようである。

 リクのパーティメンバーは、唖然としながら二人の様子を見ていた。
 それは、パーティメンバーだけではなく、周囲にいる冒険者たちも同様だ。
 若手のトップをひた走っているリクたちのパーティは、第五層の冒険者たちの間でもかなり知られている。
 そのリーダーであるリクを、あっさりと手なずけて(?)いるシュレインに驚いているのである。
 そして、このあと一緒に行くことになる冒険で更に驚くことになるのは、この時のパーティメンバーは誰一人として気づいていないのであった。
というわけで、前話に引き続きシュレイン回でした。
このあと数話(?)冒険回が続きます。
リクはご愁傷様です。
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