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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のあれこれ(その13)

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(6)ドレスでの戦闘

 久しぶりにリクが管理層を訪ねて来た。
 学園の学生業と冒険者業を兼務しているリクは、忙しい毎日を送っているためなかなか来る時間が取れないのだ。
「ピーチ母さん、訓練を・・・・・・」
「「「駄目(だよ、です)」」」
 最後まで言わせてもらえなかったリクは、目をぱちくりとさせた。
 これまでも時間があればピーチに訓練を付けてもらっていたので、まさか反対されるとは思っていなかったのだろう。
「えーと・・・・・・。なぜ?」
「なぜというか、リクはトワとかミアとコミュニケーションを取っていないの?」
 リクの反応に、ピーチの妊娠の事を知らないと察した考助が、不思議そうに聞いた。
 トワもミアも既に考助から聞いて、ピーチの事は知っているはずだ。
「えーと、忙しくてあんまり・・・・・・?」
 誤魔化すように目をそらしてそう言ったリクに、考助はため息を吐いた。
「トワが忙しくて時間が取れないのは分かるけれど、せめてミアとくらいは話をしようよ」
「え、それって、私が暇ってことですか?」
 たまたまリトルアマミヤの塔には行っていなかったミアが、会話に割り込んできた。
「そうじゃなくて、ここに来れば大体話はできるよね?」
「そうですけれど、ほとんど顔を見せない弟に話をしろというのも無理な話ですよ?」
 考助の答えに納得できなかったのか、ミアは不満げな顔で考助を見た。

 考助とミアの様子を見て、このままだと話が進まなそうだと感じたリクが強引に割って入って来た。
「それで、なんで駄目なんだ?」
「ピーチお母様がおめでただからですね」
 ミアの端的な答えに、リクは目をぱちくりとさせた。
「・・・・・・え?!」
「いや、その反応は逆に傷つくんだけれど?」
 思った以上に驚いてみせたリクに、考助は顔をしかめた。
 それを見たリクは、慌てて両手を振り始めた。
「ご、ゴメン! そういう意味じゃなくて、何だろう、ちょっと意外だったというか、あれ? フォローになってないか・・・・・・?」
 言葉を発するたびにドツボにはまっていくリクに、ミアが呆れたような顔になった。
「せめて、そんな兆候はまったくなかったから驚いたとかにしたらどうですか?」
「! そう、それ!!」
 ミアの言葉に、いかにもという様子でポンと両手を打つリクに、考助とミアが白い目を向けるのであった。

 

 場所を移して管理層のくつろぎスペース。
「私は別に構わないんですが、他の人が「駄目だ!」」
 リクの話を聞いて、いつものペースのピーチに、強引にフローリアが割り込んで話を遮った。
「・・・・・・とまあ、こんな調子なので、無理ですね~。訓練は諦めてください」
「まったく、仕方ないとは思うが、ピーチは妊娠を侮りすぎているぞ!」
 若干ぷりぷりした顔で、フローリアがピーチを睨んでいる。
「大体、リクもリクだ! こういうときは、男の方が気を遣うものだろう!」
 矛先が自分に向けられたリクは、フローリアに叱られて「うへっ」と首を竦めた。

 そんな母子のやり取りをのほほんと見ていたピーチが、ポンと手を打った。
「私は無理ですから、シュレインに頼んではどうですか~?」
「む、吾か?」
 突然話の矛先を向けられたシュレインが、若干驚いた表情になった。
「まあ、吾は構わんが、リクはそれでいいのかの?」
「俺? 俺は・・・・・・どうなんだろう?」
 リクはよくわからずに首を傾げた。
 そもそもリクは、シュレインの力のほどもよくわかっていない。
 そんな状態で、良いも悪いも判断できるはずもない。
 リクは戸惑った表情で周りを見渡したが、そこでニヤニヤした表情の考助と視線があった。
「・・・・・・まあ、折角シュレインがやる気になってくれたんだから、取りあえず模擬戦でもやってみたら?」
 考助の何とも言えない表情に嫌な予感を覚えたリクだったが、折角ということでシュレインと模擬戦をすることになった。

 

 再度場所を移して、普段リクがピーチと訓練を行っている訓練スペース。
 模擬剣を持って振るシュレインに、考助が助言(?)をした。
「シュレイン、分かっていると思うけれど、魔法の類は駄目だからね」
「む? そうか。そうだったな」
 忘れていた、という表情をしたシュレインに、リクが冷や汗を流し始めた。
 シュレインが魔法が得意だということはリクも分かっている。
 ついでにいえば、なにかのときに考助からシュレインは魔法を使えば上層のモンスターを単独で倒せるということも聞いていた。
 流石にそんな状態のシュレインと相手になるはずもない。
 この時点でリクの認識は間違っているのだが、すぐにそのことに気が付くことになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ドッターン!
 訓練スペースに、リクが転がる音が響いた。
「うーむ。やっぱりこうなったか」
「リクも最近は頑張っているようですが、それでもまだまだですからね~」
 のほほんと会話をしている考助とピーチに、フローリアもウンウンと頷いている。
「なんというか、リクもいい加減相手の実力を計れるようになれないものか?」
「うーん。この場合は、相手が悪すぎですね~。なにせ、ヴァンパイアですから」
 仮にも過去には闇の眷属として知られていたヴァンパイアだ。
 自身の気配や力を隠すのには、非常に長けている。
 ましてやシュレインは、その中でも最高位の力の持ち主なのだ。
 いくらリクが成長してきているからといって、そこまで望むのは酷というものだろう。

「あんなドレスを着ていて、剣が強いって、普通は思わないからなあ」
 今リクと相対しているシュレインは、普段通り普段着使いの簡素な(?)ドレスを着ている。
 それでいながら、リクの動きにしっかり付いてくるどころか、上回っているのだ。
 リクにしてみれば、一体なんの冗談だと思うだろう。
 ピーチやシュレインに限らず、考助の傍にいる女性陣は、神力の扱いを訓練し始めるようになってから、基礎的な動きが格段に上がっているのだ。
「私からすれば、普通なんですけれどね~」
「それはまあ、諜報関係の仕事をしていればそうだろうねえ」
 国の上層部に乗り込んで諜報活動をする場合は、ドレスを着てパーティーに参加するなんてことは普通にある。
 その状態で戦闘をする方が珍しいが、全くないわけではないのだ。当然、ドレスを着ての訓練は行っている。
 意外なところで、変な特技があるピーチなのであった。

 考助たちがのんびりと自分たちの模擬戦の感想を言い合っていたころ、リクは心の中でちょっとばかりやさぐれていた。
 その心境を文字にすると、どうして父上の傍にいる人(女性)は、見た目と実力があっていないんだ、だろう。
 しかも目の前にいるシュレインは、首を傾げながらリクにとっては信じられないことを言って来た。
「ふむ・・・・・・。そろそろ剣の扱いにも慣れて来たかの? 本気を出していいか? ・・・・・・冗談じゃ」
 剣を軽く動かしながら自分を見てくるシュレインを見ながら、リクは心の中で「絶対本気だ!」と叫んでいた。
 しかしならが、自分から訓練を頼んでいる以上、やる気になっているシュレインを止めることは出来ない。
 結局このあとは、やる気を出したシュレインにつき合わされて、ピーチのとき以上の激しい訓練を行うことになるリクなのであった。
女性組は個人個人が既にAランクの実力を持っているので、未だにリクは敵いません。
ちなみに、シルヴィアとフローリアでもです。(考助と同じパターンで、結界を張って隙を見て魔法攻撃)
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