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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔の地脈の力を使ってみよう

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(5) エルフという種

コレットのお話です。
 考助は、目の前にある光景に、頭が白くなっていた。
 それが起こっている場所は、管理層の考助の寝室。考助の、といっても、一人で寝ることはほとんどないのだが。
 いつも誰かと一緒に寝ているので、部屋に自分以外の誰かがいるのはいつも通り。
 だが、その相手が問題だった。
 その日寝室に入った考助を迎えたのは、コレットだった。
 しかもなぜかメイド服を着ていた。
 いや、似合ってる。似合ってはいるのだが、普段の態度からはあり得ない格好である。
 どこでそんな服を仕入れたのかという疑問もあったのだが、そもそもコレットがなぜそんな服を着てしかもこの場所にいるのか。
 しかも、入ってきた考助を迎えたコレットの第一声が、
「・・・・・・おおお、お疲れ様です。ご、御主人様」
 であった。
 耳と顔を真っ赤にして、それでも一応考助の顔を見ながらのその言葉に、思わず眼を奪われながらもすぐに我に返る考助。
「いやいや。なにこれ? どういう状況? 何かの罰ゲーム!?」
「そそ、そんなことないわよ! あ・・・ないです!」
 思わずついいつもの調子で言い放ったコレットだったが、慌てて取り繕った。

 そんなコレットを、考助はただジーッと見続ける。
「・・・え、えーっと? ご、御主人様?」
 ただ、ジーっと。
「・・・え、えと、そんなに見られると、恥ずかしいというかなんというか・・・?」
 ジー・・・・・・。
「・・・・・・」
 ・・・・・・。
「・・・ご・・・ごめんなさい?」
 コレットの口から漏れ出た謝罪に、考助はため息を吐いた。
「・・・ハア。それで? これは、何の冗談?」
「あ、ちょ・・・ま、待って。これ自体は、別に冗談でもなんでもなくて・・・」
「? どういう事?」
 首をかしげる考助を、コレットはチラチラと見ていたが、やがて諦めたように溜息を吐いた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そもそも事の始まりは、シルヴィアがコレットのいつもと違う様子に気づいたためだ。
 他の誰も気づかなかったが、そこはそれなりに長い付き合いであるシルヴィア。
 何となく彼女の様子がおかしいと、だいぶ前から気付いていた。
 別にそういう事が普段から無いわけではないので、その場は放置していたのだが、流石にここまで長引くのはおかしいと思ったので、話を直接聞くことにした。
 とはいえ、他の人目がある管理層では、聞ける話でも聞けなくなってしまう可能性があったので、二人きりになるのを見計らっていたら、世界樹の麓まで来てしまった。
 世界樹の麓は、たとえその周辺に住んでいるエルフたちでも近づくことは、ほとんど無い。
 確かにコレットにとっては、一人きりになるにはいい場所だろう。
 だが、考助達は例外だ。
 普通なら見張りに止められるのだが、シルヴィアが止められることは無く、普通に近づくことを許された。
 これ幸いと、コレットの所へ近づいて行った。

 近づいてくる足音に気付いたのか、俯いていたコレットは顔をあげて、近づいてきたのがシルヴィアであることを確認した。
「あ、あれ? シルヴィア、どうしたの?」
「・・・全く。どうしたの、ではありませんわ。その台詞は、私が貴方に言うべき台詞ですわ」
「・・・え!?」
 驚いた様子を見せるコレットに、シルヴィアが呆れた様子を見せた。
「まさかとは思いましたが、自分でも気づいてなかったんですね?」
「な、何のこと?」
「貴方、朝から、というか前から少し様子がおかしかったですわよ? 何か悩みでもあるんですの?」
 シルヴィアのその台詞に、コレットは虚を突かれたような表情になる。
「悩み? 私が!?」
「・・・・・・ハア。これは、重症ですわね」
 シルヴィアから見れば、明らかにおかしい状態なのだが、本人は全く気付いてなかったようだった。
「まあ、いいですわ。とりあえず、こんなところで何を考えていたのか、教えてもらえますか?」
「え、いや、別に大したことでは・・・」
「いいですから」
 断ろうとしたコレットだったが、シルヴィアに強引に押し切られてしまう。
 そして本人としては特に大したことではないと思っている話を、洗いざらい聞かれてしまった。
 さらに、コレットの話を聞き終わったシルヴィアが、最後に言った一言は、
「・・・鈍いというか、なんというか」
「え!? なにそれ?」
 本気で不思議に思っているコレットを見たシルヴィアは、これは自分だけでは手には負えないと判断した。
 誰に相談すべきかを考えて、ちょうどいい存在がいることを思い出したので、コレットを引き連れてその場所に向かった。

 その向かった先というのは、ドリーの樹の所だった。
 正確には、ドリーの樹の巫女をやっているシェリルの所だ。
 ほとんど引きずるようにコレットを連れて来たシルヴィアは、シェリルに先ほどの話をそのまま話した。
 ところが、である。
「・・・・・・それが、何か問題でもあるのでしょうか?」
 という答えが返ってきた。
 それを聞いたコレットは、やっぱり自分には問題がなかったと頷いている。
 そして、その二人の様子を見たシルヴィアは、頭を抱えた。
 どうやら、この問題は、種族的な問題なのだと分かったのである。加えて、なるほど、出生率が落ちるわけだと、妙な納得もした。
 どうすべきか悩むシルヴィアの前に、助け舟が来た。
 ドリーだ。
「・・・あの。エルフというのは、どちらかというと私達に近い存在なのでして、ヒューマン種のようには、なかなかいかないのです」
「・・・・・・大いに実感しましたわ」
「それで、提案なのですが、その手の専門家に相談してみてはいかがでしょうか?」
「専門家? 誰ですの?」
「申し訳ありません。お名前までは存じてませんが、サキュバスのお仲間がいませんでしたか?」
 ピーチのことだ。
 シルヴィアはなるほどと思った。確かに、そっち方面では、ある意味では専門家だ。

 コレットをその場にとどまるように言い置いて、ピーチの所へ向かいすぐに彼女を引き連れて戻ってきた。
 ドリー達の所へ着いた段階で、先ほどを同じ内容をピーチへ話した。
「なるほど~」
 それを聞いたピーチが、頷きながら納得している。
「それで、どうにかなりそうですか?」
 なぜか勢い込んで聞いてきたのは、ドリーであった。
「あれあれ~? なぜドリー様の方が真剣なんですか?」
 当事者であるコレットよりも、なぜかドリーの方が真剣な眼差しである。
「それは、エルフという種に関わってますから。それに、当人たちはこうですから」
 こう、と疑問符を浮かべている二人を指した。
「はあ~。なるほど。とはいえ、思い当たることはありますが、多分当人にとっては荒療治になりますよ?」
「仕方ありませんわ。エルフの感覚に合わせていては、いつ気付けるかわかりませんもの」
「それが、エルフ族全体の為になる可能性もあります」
 ピーチの不穏な言葉に、なぜかドリーが勢いよく頷いている。
 シルヴィアもコレットの方を見て、頷いていた。
 その様子を見ていたコレットは、どうにも嫌な予感がしたが、なぜ逃げ出さなかったのだろうと、すぐに後悔する羽目になるのであった。
予定外に長くなってしまったので、2話に分けます。
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